嫁の産婦人科の定期健診によると、
おなかの中の我が娘Rちゃんは前回の健診からの間に
急成長していたらしく、いつ産まれて来てもいい状態だという。
嫁の奴め、僕に隠れてアイスの一気食いでも
してるんじゃないだろうかと疑惑の念も起こったが、
とりあえずほっとした。
いずれ取り調べるけど。
胎動も相変わらず活発で、今日、僕が会社から帰って来ると
「Rちゃんが動き出したよ。
お父さんお帰りって言ってる」
そう嫁が言うので
「ただいま」
と嫁のおなかに手を当てると
豪快にドオンと蹴り返してきた。
「反応いいよね、この子」
「元気だし素直だしあなたの声をいつも聞いているのよ」
ふうん。そうなんだろうか。
僕はRちゃんに語りかけてみた。
「よし、今から暴れろっ」
速攻でおなかの中からドッカンドッカン
ものすごい胎動が伝わってきた。
「ちょ、ちょっと、苦しい〜」
あまりの動きの激しさに嫁が悶絶し始めたので
「はい、終わり。また遊ぼうね」
と言うと、すっと静かになってしまった。
本当に素直な子だと感心せざるを得ない。
僕は、あることを思いついてニマァと笑い、
嫁のおなかをつかんだ。
「なによアナタ。なにをする気?」
僕は大声で言った。
「Rちゃん、おなかから出て来い!」
「ぎゃああああああ!ちょっと待って!
心の準備がああああ!まだ出てきちゃダメよー!」
ちっ。まだ早いか。
思えば去年の夏、成長することもなく
動くこともなく静かに去っていってしまった子。
僕の中にはまだ、名前も付けられなかった
あの子の影が落ちている。
「わたしは大丈夫だよ」
Rちゃんは胎動で僕らを安心させようと
しているのかもしれない。
早く君を抱きたい。
アリガトウゴザイマシタ。
今日もアリガトウゴザイマシタ。