銀の鎧細工通信
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2005年11月20日(日) 躾不行き届きにつき (雲雀山本、ビア雲雀山)


「ねえ、ちょっと」
声変わりが済んでいるんだかまだ完了していないんだか、高音と低音が混じる不安定な声は冷たいくせに変に甘い。
「またネクタイしてないんだね、聴く耳持たない莫迦は咬み殺すって云ってるよね」
背後からかけられた声に振返ると、ぴたりと喉下に黒く鈍い光を放つトンファーが当てられる。
ぱちくりと瞬き一つ、
「あーわりー、・・・っとすいません。どうにもキュークツで」
へにゃっと相貌を崩して笑う。
「そんなこと興味ないよ。風紀を乱さないでくれるかな、目障りなんだ」
(アンバランスな声だなぁ)
どうせこれから部活に向かうところだったのだ、着替えてしまうのだからネクタイは関係ない。最も、それをいい訳がましく伝える発想はなかったので全然関係ないことが気になった。
「ところでさ、ヒバリ・・・さん、は何でガクランなんだ?」
切れ長の目を細めて、不機嫌そうにする。
山本にはこういう癖があった。
仏頂面でいつも怒ってる風な獄寺(綱吉に対しては別)に対しても、無表情でいつも何考えているんだか解らないビアンキ(リボーンへは別)に対しても、遂そうしたものにちょっかいを出してみたくなるのだった。それは好奇心という可愛らしい類のものではなく、乱したい壊したい崩してみたい、そんなむくむく湧き起こる欲求に近かった。
とぼけた調子のまま「それは風紀の乱れじゃないの?他校の制服とも解釈されるぜ」と続けるや否や、ひゅと空気を切り裂く音がして逆の手のトンファーが側頭部に向かうのが視界の端で認識できた。
ファスナーを開けたままだった肩掛けのバットケースから抜き取る素早さで、それは刀身へと形を変える。刃こぼれを懸念して刃の背でトンファーを受け止める。
(さあ、どんな反応をする?)
目を丸くして「ワオ」と呟いた。
「学校に日本刀かい、君は全く問題だね」
にやりと笑んで
「よりによってトンファーってのも問題だと思うけどな。趣味?」
更に突付く。
(この僕で面白がるとはね・・・咬み殺すだけじゃ足りないな)
鈍い金属音をたて、刀を弾く。
手首を捻った瞬間には、刀の切っ先が今度は雲雀の首に当てられた。
「アウト!リーチが違ったぜ」
まるで野球でアウトをとったように思い切り笑うひょろ長い姿に、脳天がすう、と冷える。
首と刃の間にトンファーを入れると一気に滑らせ、柄に滑り込ませてがち、と固定した時にはもう山本の懐に入り込んでいる。
がぶり、と喉仏のやや左下、目一杯咬み付く。
「っつ・・・!」
実際に危害を加える気が無いので、その刀は向けられない。
(咬み付き返す気も無いくせに、どうして無駄に歯向かう?)
理解不可能な言動に苛立ちが込み上げるままに、ぎりり、と喰い込む歯に力を込めた。かすかな呻き声が耳に届く。
ぬるりとした鉄くさい、温かい液体が口の中に入り込んできて口を離す。
それは酷く甘く思えた。

「あっはははは!!ホントに咬み付くんだな、アンタ!あーいってぇ」
長い手で、また残像が見えるような速さで刀を振るとソレはバットに戻る。
(どんな仕掛けだ・・・?)
と思いながら、雲雀の唾液と山本の血でぬらりと妙に光る首を眺める。
「どこまでも歯向かう気なのかい、君は?」
視線は釘付けのまま。
「ンなつもりないっスよ、ネクタイは気をつける、学校で刀なんかやたらと振り回したりしない」
さっきまでは明らかにからかい、挑発してきたくせに、もう気が済んだのか拍子抜けするほど頓着しないで応える。
「じゃー俺、部活なんで」
遊んでくれてありがとう、楽しかった、そんな顔で機嫌良さそうに手を上げて踵を返そうとするので、慌てて腕を掴んで押し留めた。
「何?」
と口角を上げたまま小首を傾げる。
「こんな処から血を流したまま健全な部活動に向かう気なのかい」
苛立ちと、訳の解らない興奮に押し進まされるように首に舌を這わす。静かに味わうように、そっと舐める。自分の歯型が舌をくすぐる。
山本がふるり、と小さく身を震わせたので二の腕を両手でがっちり掴んで、更に首と血をゆっくり舌でなぞる。
急にグイ、と押し返され、何となく不満げに見上げると
「も、勘弁して。勃っちまいそーになっちゃったから」
また雲雀が目を丸くするような言葉を、しれっと吐く。
今度こそ手を振って「じゃあな」と部室棟の方へとすたすた歩いていった。

全くペースを乱されて、まんまとからかわれて、挙句まるで遊んでもらったとばかりに本人は嬉しそうで、しかもこんな興奮は何だ。

苛立ちは腹立ちに変わっているのに、可笑しさが混じるのは、何なんだ。


思い切り顔を顰めながら踵を返すと廊下の角で身を隠していた人物と目が合った。
すらりとした肢体、やや長身でモデルばりの体型に、美しく妖艶な顔。
無表情に流し目で見てくる。何も云わないのは、どこからかは解らないが今の遣り取りを観ていたことを暗黙で示す。
「見たことある顔ですね・・・部外者があまり学校に出入りしないでください」
うんざりした声で、決まりの悪さを隠して云い放つ。
「部外者じゃないわよ、父兄といって欲しいわね」
声までが甘い毒の様に完璧な響きを持っている。
「ああ、獄寺隼人の異母姉でしたっけね・・・」
目だけで肯定する。
「ねえアンタ、あのCane neroに云うこと聞かせようとしたって無駄よ」
腕組みしたままで、目だけを雲雀に向ける。
「黒犬・・・?莫迦犬の間違いじゃありませんか」
ふん、とビアンキが鼻を鳴らして笑った。
「じゃあ尚更、躾は諦めることね」
どうしてカチンと来たのかなんて解らない。
「莫迦犬なら尚更、躾が必要でしょう」
珍しく生々しい感情が現れた声だったが、そんなことは本人には判らない。
喉を鳴らして猫のように笑う。
「せいぜい頑張ってみたら?小鳥の坊や。じゃれ付きすぎて食べられちゃわないようにね」
ぎろりと睨み付けた時には、もう背中を向けて階段へ向かっていた。長い髪だけが残像のように流れて消える。

相手不在で云い返せない悪態が渦を巻く。

(山本武、躾不行き届きにつき、要注意)

頭の中で赤い×印をあの顔の上につける。
ふと唇に手をやると、まだ乾ききらない血が指先に付いた。右手の人差し指と中指のそれに目を落とす。
廊下に佇む雲雀の影は黒く、指先は鈍く重く甘く痺れるように赤く、窓の外の空は目にしみるほど鮮やかに何処までも青い。




END

おー、念願のバリ山。不意にイメージが浮かびました。あう、しばらくはラビ強化期間のつもりだったのに。
銀魂も、重いながら一気に皆が再会して展開が楽しみですわ。坂本はどうしてるんだ!何してるんだ!いや、ていうか陸奥は・・・!!とにかくこちらもよーうやくの念願のマダオ表紙のコミックスが楽しみで仕方がありません。
真選組も絡んでこないかなーだってもう警察出動の事態にはなっているはず・・・なんてもやもやしております。


どうにも、私が燃える、飄々としたキャラクターというのは、どうしても三村(『BATTLEROYALE』高見広春)的になってしまいます。
山本といいラビといい・・・ああ、三村の存在は未だ銀鉄火の中で大きいのだと痛感する日々。三村妄想センサーでも付いているのかしら。
飄々として、一見屈託無いけどクセモノで、頭は切れるけど何処かもキれてる。傲慢で少し莫迦で、痛々しくもあり、自分を過信できる年頃で、でも脆くて・・・そんな山本やラビの妄想がよぎります。

さあ、高杉の登場!銀魂も頑張ります!
でもDグレ連載がとても心配・・・。



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