銀の鎧細工通信
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2005年11月13日(日) ごめんなさい (土→近)

謝ればそれで済むことなんか、そう大してありゃしない。
埋め合わせのようにセックスするのは男女の間のごまかしと大して変わりゃしない。
そんなことをしても何も確かめられはしない。

金を出して買うのは面倒で、金の要らない女にかける情も持ち合わせない。
そんな俺には何も面倒な手はずが要らずに、何も考えずに済むようにセックス出来るなら、男でも女でも構いはしない。
ちりちりと焼き付くような感情に煩わされる万事屋は厄介だ。
自分の都合だけしか純粋に考えない総悟には自分から誘う手間が要る。
何のかんのといって山崎は俺とセックスすることに躊躇いがあって、それは胸が少し痛むようでもあり、苛付くことでもあった。最もこれ以上隊内での肉体関係者を増やすこと自体が煩わしい。


ぼんやりと携帯を手にしながら画面を虚ろに眺める。
肉体の疲労から消極的にでも眠れればいいと、土方は登録者の番号を繰り返しスクロールさせ続けている。
心なしか個人室ですら薄暗く思えてくる、終わらない想いを引き摺ってどれだけ日々を過ごせばいいのか。それが虚しくくだらなく感じられるのはしょっちゅうだった。
近藤への感情は消失すればそれに越したことはない。報われることも無ければ伝えることをする気もない。想うだけなら大将としての感情だけで十分で、剰余となる思慕は土方自身への負担以外の何ものでもなかった。
(くだらねぇ・・・無い振りも満足に出来ないくらいの始末だ)
自慰でもして眠ればいいと思いながらも、他人の体温を求めてしまう。それは酷く忌々しいものでもあり、同時にどうしようもなく必要なようにも思えるものだった。
電話帳をスクロールさせ続け何周しただろうか、土方の指が止まって溜息をつく。
通話ボタンを押しては直ぐに止める。
プップップ・・・プツ。
呼び出し音が出る前に止めてしまう指が求めているのは誰でもなく近藤だけだった。
壁に寄り掛かったまま近藤の自室へと耳をすませる、当然何も聴こえない。
自己嫌悪で吐き気が込み上げ、体を丸める。
煙草の吸いすぎで気持ちが悪くなってきても、手が止められず味も何もしない煙草を呑み続ける。
どうすればいいか解らないのは今に始まったことではない。もしこのまま、死ぬまでこのままなのか。ああきっとそうだろう。焦がれ死ぬことなんて想像だにできない、苛まれ続けるだけだろう。
少し熱を帯びた体に冷め切った感情、乖離しているものを繋ぎ合わせようと土方はジッパーに手をかけては、その作業すらも苦痛に思えて手を止める。
開いたままの二つ折り携帯電話を畳に投げれば、それは回転しながらただ何事も無く手元を離れる。
声も無く苦痛に喚き叫ぶしか出来ない。
さびしい、そんなことは気のせいだ。
欲しいなんて思うな、どんな期待も無駄だ。
(云ってどうなる)
あまりに気持ちが悪くてずるずると溶けるように畳に転がる。
どす暗いノイズのような音が頭中に鳴り響いて、もう煙草を呑む気にもなれない。
埋め合わせに意味なんか無い、しかしその場しのぎの虚しい疲労感でもいいから何か欲しかった。
誰の名も呼べない。
誰の名も呼べない。
近藤の名前は勿論、携帯電話で呼び出すことすら出来得ない。
土方には、近藤以外呼ぶ者が居ない。
それが哀しいとも思えない、なのに呼ぶことは出来ない。
無性に人肌が恋しいのに、誰も呼ぶ気力がわかない。疲れ切ってしまって横になったまま目を瞑る。
瞑ると浮かぶ顔はただ1人だけで。
誰も呼べない。
誰も呼べない。
乖離した感情も、乖離した心身も、吐き気とともに口からだらだらと吐き戻せそうな気すらしてくる。
閉じた目蓋の裏でちかちかと眼がくらんだ状態に近い光が鋭く眼球を突き刺してくる。不愉快でもどうしようもない。
開ける力もわかないまま、眉間に硬く皺を寄せ、土方はひとつの単語をただくりかえす。
頭の中で、心の中で、体の中で、全身でくりかえす。
ただ一つ。








END




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