銀の鎧細工通信
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| 2005年09月11日(日) |
過保護 (銀土→近) |
「大体さあ、土方くんは過保護なんだよ」
ホテルの薄暗い部屋で銀時が冷蔵庫を開けながら云った。
「お、エビスがある、呑んじゃお」と独り言を続けた。その上「ギネスもあるよ、土方くん呑む?」などと云うものだから、土方はその意味を問うに問えない。
冷たいギネスの缶を受け取りながら、煙草に火をつける。 「過保護、って何だよ」 銀時がぼふん、とベッドに腰掛けたのでようやく口を開けた。 んくんくと勢いよく呑んでから、「っかー」と息をつく。 「ん?ああ、ゴリラに、って意味」 見もせずに尻を蹴った。 「いてえ!あーはいはい、ごめんなさいね。お宅のキョクチョー、に」 舌打ちをした。 「意味が解らねぇ」 嘘だった。
ごく、とビールを口に運びながらの、銀時の視線が痛い。 「云ったら云ったで怒るくせに」 土方の咥えている煙草を奪い取り、吸い込む。 口を開かない理由を奪われてしまったので、汗をかき始めた黒い缶を手にとって開ける。 ぷし、と小気味良い音。 渇いた喉は一辺に半分ほどのビールを流し込んだ。銀時はその手を掴んで弱くした照明の近くに向けると 「これだってさ、ずっと書類書いてたからでしょ」 利き手の小指の縁がペンや鉛筆で少し黒くなっているのをそっと撫でる。 「んで?しかもわざわざ夜中に呼び出しちゃったりなんかして、」 肘で上体を支えながら、見上げて続ける 「睡眠時間削ってまでさ、明日また仕事なんじゃねーの」 土方の手をぽいと放してビールをすする。 「お前には関係ないだろ」 夜中に寝ているところを突然呼び出しておいたくせに、云えた義理では無いとよく解ってはいた。 けれど、銀時はそうしたことにいちいち口を挟まなくもなっていた。
生温い気遣いが気まずい。
煙草を揉み消しながら「まーね」とだけ応えた。
どれだけ近藤のために動けるか、どれだけ自分を使えるか、実際そればかり考えている。 身を削って何でもしていた。 そんな土方のために、詮索や大した文句も付けずに、こうして付き合ってくれる銀時には悪いとは思ってもいる。 云えば「よくあることだから気にもされねーよ」などと応えるが、新八が万事屋に来るまでにいつも通り帰って居たいのはよく解っていた。(神楽の起床は遅いので、大抵新八が来てからだった)
だからといって謝る言葉なんて意味もないし、云うだけ余計に申し訳ないのだ。 全く利用だけしているつもりは無いにしても、こうして付き合ってくれる銀時に、「悪いな」とぽつりと溢したくなる事もあった。 まるで意味を成さない。 云っても「何が?」と応えるのは予想できた。 それが更に胸を詰まらせ、自己嫌悪に陥らせる。
それでも、近藤のためにだけ忙しい。 自分が笑うより近藤が笑っている方が良かった。 個人的なことならさて置き、隊のことでなら、泣かせたくなど無かった。 皆で一緒に居た思い出は、今の隊を、土方を支えてはいたが助けてなどくれない。 今の近藤や隊を守るために、どれだけ自分を使えるか。 沖田は「莫迦だ」とあっさり云うし、山崎は口にこそしないけれどそんな土方をいつも見守り、夜食だなんだと一緒に起きていては書類作成を手伝いコーヒーを淹れてくれる。「不憫な奴じゃな」と坂本は優しく頭を撫でる。
どれだけ、何でもない振りをして隙を見せず弱みも見せず、いつでも『鬼の副長』としてあろうとしてもボロが出すぎている。 「現実問題」を口にしたところで、結局は露見させてしまう自分自身の弱さに情けなくなる。 噛み締めた唇に気付かれないように、ビールを飲み下す。
「そうやって、」 土方が考え事を募らせている間、気が付かなかったがずっと眺めていたらしい銀時が口を開いたので、不意に眼が合う。 「バレバレなのに、真撰組の大半が気が付かないなんてな」 思わず思い切り眉を顰めた。 「誉めてるんだよ。頑張ってるんだなーって」 皮肉交じりなのに、責める色を含まずに、くすくすと笑う。 「情けねぇ」 何が、とは云わずにぼそっと呟きながら、空になった缶をめこ、と凹ます。 またくすくすと笑いながら、 「俺もこないだ云われたよ」 と云うので、目線を下に向けた。 片肘で頭を支えながら、人の煙草にまた手をつけようとしていた。土方が背をもたせているベッドの、パネルのある台から灰皿を下ろして布団に置く。 「まあ確かに、てめーんトコのガキどもはお前の子か、って位の時はあるな」 云いながらライターを渡してやる。 受け取った手を振りながら 「ん?あーひがうひがう」と咥え煙草のままのくぐもった声で答えた。 じゃあ何だ、といぶかしみながら銀色の頭を眺める。 ライターの火が一瞬顔を明るく照らし、 「お宅の腹黒ボーズによ」細く煙を吐き出しながら云った。 「は?総悟か?」 顔を上げないので表情が見えない。 「うん。”旦那は土方さんに甘すぎらァ”って」 「・・・っつ」 声真似までされて、眼の裏から耳まで真っ赤に染まった気がした。 息を飲んで黙りこくってしまう。 応えようが無くて、土方も煙草に火をつけた。 煙の筋が2つ立ち上る。 低く喉の奥で笑う声がする。 「2番目にしちゃいなよ」 笑いを含んで云ったけれど、決して顔は上げなかった。 「ああ?てめーが2番目だとか思ってやがるのかよ」 気恥ずかしさに、申し訳なさ、照れ隠し、思わず大げさな声がでた。
クールな副長、で通っている土方が、声を張り上げたりぎゃあぎゃあ喧嘩したり云い争うのは銀時だけだった。 いつもの無愛想な無表情も崩れているのには、鏡でもなければ気が付かない。
「思ってるよ」 ガキどもや毛玉にゃ負ける銀サンじゃないぜ、と続けた。 「莫迦か」 とだけ云い捨てて「ちょっと寝る」と布団を被った。 「珍しいじゃねーの、いつも直ぐ帰るくせに」 布団から覗いた黒髪を撫でる。 「おめーは帰ればいい」 撫でる手をしっしっと払いながら、布団の中からこもった声がする。 「よっ」 灰皿を戻したらしかった、かちり、と偽物の大理石状の台にガラスの灰皿が当たる音がした。 土方の丸まった掛け布団をずるっと引っ張りもぐりこんで来る。 「俺も寝てく、眠ィ」 くあ、とあくびをしたのが土方の背中から伝わってきた。
過保護、ね・・・。
ふたりがふたりなりに考えながら、眠りに吸い込まれていく。
END
そうです、実は大の、大の倉橋ヨエコ愛聴者でございます・・・!
そうか、あまりBGMに記載した事が無かったかも知れませんね。 でも一日最低一回はどれかのアルバムを絶対に聴いています。 書いているものにも結構触発された部分は多いです。 余りにもまわりに話しが出来る人がおらず、カラオケにも入っておらず、黙々と布教している銀鉄火です。 人気の無い夜道では絶唱してすら居ます。笑。
わーすっごい嬉しい!嬉しいです。ひえー。 こんな辺境を訪れてくださっている方で、倉橋ヨエコに反応してくださる方がいらしたなんて・・・!!
なのでもう、あからさまに土→近な『過保護』で、かつ『二番目の道』を含ませてみちゃいました。ぐふふ。 日頃は二次創作に託すことなく、あくまでも自分が身につまされる・・・と思って聴いていますが。 倉ヨエTシャツ着たり、ドクロ音符のトートバッグすら愛用。 オフィシャルサイトはお気に入り登録。 宜しかったらお好きな曲やアルバムなど教えていただけると、とても喜びます。ありがとうごじあました・・・!!!感涙。
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