銀の鎧細工通信
目次|前|次
| 2005年08月22日(月) |
雪の女王 (BATTLE ROYALE 川田三村) |
今年は、雪が多いのだという。 川田はこの土地が地元でない為「例年」なんて知らない。 ただ、今夜も細かな雪が絶え間なく音も無く降る、続いている。 白い。 ーーは雪が降っているのが嫌いだった。 「雪自体は好きなのよ?でも、なんだか雪が降るのはどうしようもなくて、どうしようもないから、−−−−なるの」 短い髪に落ちた雪を払う為、に川田は頭を軽く振った。 以前こうしたら「そんな風にフリハラウ、なんて、案外かわいらしいな」と云われた。でもからかう口調とは裏腹に三村の顔は笑ってはいなかった。
積もる 降る 落ちる 風に流されしかし隙間を作らずに 変幻自在に侵食しやがて消える 儚く?
足早に商店街を抜け、黒い水面がどろりと流れ行く河を通り過ぎる。橋の上では刺すような風が雪を纏って吹きつけてくる。思わず顔を顰めて河原に目をやると、細い影が見えた。 河原に佇んでいる。 微動だにしないそれは枯れ木のようだったが、雪の照り返しでほの白くうつる顔は、確かに見慣れたものだった。
三村がおかしな行動をとることはいつものことだ。 気遣いを求めているわけでも、感傷に浸っているわけでもなく、三村は真剣にその行動を選択している。 ただ、存在している。 ただ、三村の空洞が存在している。
積もったばかりの雪を踏みしめて河原に下りていく。近付いてみて思わず瞠目した。 足首まで雪が覆っている。一体どれだけここにこうしていたのだろう。 三村の横に立って煙草に火をつけた。 こちらを見もしない。水の流れをぼんやりと見ているだけで。 「水には雪が積もらないな」 ぼそりと呟いた三村の声は声帯まで冷え切っている。 「物理の予習か?それとも雪見と洒落込んでいるのか?」 目を凝らしても黒い水面と紺色の空と、降りしきる雪しか見えない。水面に雪が落ちては消え、落ちては消え続ける。その繰り返し。 三村の見ているものなんてわからない。
「積もるなら全てに積もって、何もかも覆ってしまえばいいと思わないか?」 「何もかも覆っても、そのうち溶けてしまうぜ」 「・・・お前がそう云うとはね、・・・強がりでは、ないか」 「強がりも何も本当のことだからな」 「そうなったらいいと思ったことは?」 「無理なことは考えても仕方ないだろう」 「やっぱり強がってるんじゃないのか」 「・・・・・・・・・・・・」 「溶けなければいい。こんな風に降るんだったら」 「雪の女王の帰りを待ってるのか?どうしても出ない答えを教えてもらいたくて」 「帰ってこないよ。最後のかけらも見つからない」 「諦めてるのか?」 「無理なことは考えても仕方ない、んだろう」 ぽとりと煙草を雪の上に落とす。もう6本も吸っていたらしい。 冬場はあまり屋外で煙草を吸いたくない、末端の冷えが殊更で。
平然と雪から生えている三村を無理矢理に引っこ抜いた。積もった雪を払ってやっても、後から降る雪にキリがない。払ったそばからまた積もってくる。 三村にも、川田にも。 どうしようもない。
「どうしようもなくて、 どうしようもないから、さびしくなるの」
「三村。さびしいか?」 「どうして」 向かい合ったまま、まだ顔は水面を向いている。 「俺はさびしい」 ようやく向き直った。
強い目は、闇を見続けていたのに、いつも通りの茶色だった。 この目の中に鏡の欠片が入り込んでいるのだろう。
「雪で覆っても、無くなる訳じゃない」 「きれい事もいえるんだな」 「かわいらしいとこも、あるからな」
三村が少し笑った。
雪は降り続ける。
けれど少し笑った。
雪は静かに、止まないけれど。
END
2001年の、高校生の頃の文章です。 この位のときは毎日バトロワSS書いていて・・・んでメイン活動のNARUTOの絵を描いたりSS書いたりしてたんですよねえ。 拙い文章に悶絶しつつ、敢えて手直しをせずにここにあげるのは、たまたま今日コンビニで漫画バトロワの最終巻を立ち読みしたからです。 後、その時の作品は全て抹消されていて、あんなにも毎日三村受けや光子や貴子を書いていたのに何も残っていないので、その後悔も含めて。
漫画のバトロワは光子と貴子の遣り取りを省いた時点で読む気が失せ、三村の死も銀迦ちゃんから「死んだよ」「・・・そう・・・」と聞かされていただけなのを、今年読みました。グレイトな死にっぷりでした。
雪の女王のカイくんは、割れた鏡の欠片が目に入って、心が凍ってしまって雪の女王の下で解けない、最後の欠片が見つからないパズルをしているんですよね、確か。 うろ覚えの記憶で、川田慶子、叔父三村を前提に川三を書いたのでした。 三村の「雪の女王」である、叔父さんは帰ってなんて来ない。 大きな城に一人凍りつきながら解けないパズルを黙々とやっている。 そんな三村が書きたかったのですが、当時も云われていたのですが、私の書く川田はつくづく三村に甘いようです。
ぱのらまさん よもやのリボーンにお言葉有難うございました。 設定を把握していないなりに、マイナー路線まっしぐらだという自覚だけはありまして。お得意の自家発電です。 獄寺はものは考えているのだけど、人の心を抉る事を云いそうだよな・・・とまさに思いながら書いていました。笑。 その点、山本の方が口にしないことが多そうで気になる子です。 山本受けもちらと書きたいのですが、コミックスを買う気にならないのが難点で、さらに難点なのが皆受けキャラだということでした・・・。
BGM:倉橋ヨエコ『婦人用』
|