銀の鎧細工通信
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| 2005年07月13日(水) |
空が燃え落ちて黒い塵にまみれる世界に終りだとは最後まで叫ばない (沖土) |
風はそよりともふかない、空気は澱の様に湿気を含んでただに重い。 夕暮れの縁側は身動きを取るのもだるく、西日に焼き付けられた影だけが黒い。 蒸し暑い日暮れ、傾きを強めた日はもう黄金色の輝きを失くして、 ほの暗さを帯びた濃い橙色。 風はふかない、何の音もしない。 煙草の煙は少しも靡かず真っ直ぐに立ち上り消える。 白い筋は未練がましくぐずぐずと大気中で旋回して薄らいでゆく。 じっと、じっと、身動きをせずに息だけをひそめている。 煙草が燃え尽きていく速度で、漠然とした暗い気持ちが深度を増してどんどんと一人沈殿してゆく。 逃げ出せないから、こうして世界を睨みつける振りだけをしながら一人で自分の世界に沈んでいく。 自意識過剰だ、と思っている。自分だけが傷を負っているとでも? 誰も無傷でなど無いはずなのに。 こめかみを伝って流れてくる汗が髪の先で溜まって、堪えきれない重さになる。ぱた、と手の甲に落ちて、それすらも其処に留まり流れていかない。
どれだけ不自由でも、均衡が取れていなくても、無理矢理いびつに留まり続けて。 必死で此処に留まり続けて。 他に行きたい場所もない、行ける場所も無い。 だから自分が許せなかった。 だから自分が許せない。 どうしてこの感情はまともでいられなかった、ただ兄の様に慕う、それだけで十分だったのに、どうしてこんなに歪んでしまった。 どうすることも出来ない、身動きが取れない。 不自由に保って、取り繕って。許せない。
「何さぼってんですかい」
「警邏は俺の担当じゃない、何もさぼってなんかねぇよ」
スタンドカラーのシャツのボタンを幾つも外して、それでもしつこく静かに汗は流れ続ける、なのに沖田はきっちりと隊服を着て涼しい顔をしている。 その姿は夕焼けの中でひどく幻覚的だった。 赤い亡霊のようだ。 「共犯者になってやりまさァ」 云いながら横に音もたてず腰を下ろす。 「何のだ、さぼりたいのはお前だろう」 沖田は視線を返さずに庭先を見ているのかいないのか、顔だけは前に向けてフンと鼻で笑って寄越した。 蔑みなのか、嘲りなのか、露骨に嫌な笑い方。 一瞬それに見とれてしまった、どこまでも傲然としているのは若いからだとかじゃない。 (総悟は天才だ) 剣術に関してだけではない、物事を見切ること、見切りをつけてコレは要らないアレは要ると判断すること、判断をしたら迷わない上に修正もいつでもすぐさま可能。 (総悟は頭がおかしい) 迷わない、何でも捨てる、何でも踏み躙ることが出来る、こいつには愛なんて感情はなくて、暴力的な執着しか無いのかも知れない。自分の欲求しか頭に無い。昼間にはナルコレプシーのように眠り続け、夜は亡霊のように徘徊し睡眠薬を過剰摂取してトんでても眠ることが出来ないで当たり前の様に俺を殺そうとする。妙な夢を見ては押し掛け睡眠妨害し、そのくせ人のことはよく見ていて嫌味を垂れる。
土方が傷つくことに頓着など、容赦などしないしする気も無いのだ。 銀時のように敢えて夢のようにぬらりくらりとかわすでもなく、山崎のように無様でも誠実に対峙するのでもなく、坂本のように際限無く許容するのでもなく。
(でも、多分、こいつが一番俺に執着してる)
「お前、莫迦だな」 「あんたに云われたか無いですぜ」 直に返ってくる。 「まあな、それはそうだな、ああ」
夕闇が迫る。 じりじりと真っ赤な夕日に焦がされ続けても動かない。 黙ったままでそこに居座り続け、灰皿がどんどんと吸殻で埋まっていく。 風は相変わらず少しもふかない。 多分沖田は自分が飽きるか俺が去るまで此処にいる気だ、 そう思いながらだるい仕草で視線をやる。
汗が一滴頬から首筋に伝って隊服のスカーフに吸い込まれて消えた。
「あ」
夕焼けの赤、橙、迫り来る黒焼け付く空、 蒸し暑さに焼け付く喉は水を欲してひりひりと痛み、土方自身思いも寄らぬほど掠れた声を出す。
「ジ・・・」
「今年初めての蝉ですぜい」
沖田は庭先の木を指差した。
END
体調不良でおこもりしています。 ので、気持ち悪いながらだらだら小説をこの機会に書きます。
★エリヅラをお褒め下さったアナタさま、ありがとうございます。 最近全然書いていないんですよね、こういうお声を伺うと書きたくなってしまいますが・・・ワンパターンじゃありませんか?私のエリヅラ。 エリザベスが所帯を持って以来(苦笑)の桂の苦悶と葛藤でも書こうか知らん。 すごく嬉しかったです、ありがとうございます。 ご期待に添えるようなエリヅラを産む気でいます、宜しかったらまた遊びにいらしてくださいね。
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