銀の鎧細工通信
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| 2005年04月10日(日) |
燃え尽きた花 (エリクロエリ) |
その想いを、口にはしないという事。 同じ風景に感じたことを、告げる必要も意義も意味も無いという事。 もう、その事に、何の意味も無いという、放れてしまった指の暖かさ。 繋いで共有していた事の確かさと、もうそれを告げる意味の無いという 儚さは、同じ延長線上にある。 今も、共有できるだろう、共感できるだろう。 同じ風景が、風のそよぎや空気のにおい、草の葉のさざめき、 よぎるかも知れない、でも、 もう、それを伝え合う必要の無い、別離。 忘れたわけではないのに、お互いはそれぞれに生きている。
否、自分が壊した。私は壊してしまった。 破壊してしまった彼女は、何事も無ければいつものように 同じ花を見て微笑んでいたのだろう。 例年のように、自分と共に。 そんな事は今となっては夢想に過ぎない、 何処を見ても彼女を思い出す、彼女との思い出のある、
城を壊さねば何処へも行かれないと思った。
物を壊そうが思い出は消えないのは解っていたのに。 この先、幾らでもいつでも彼女を思い出すだろう、 やがて、思い出さなくなるだろう。
でもそれは、決して消えない何かなのである。
アレイスターがアレンに対して感じたのはその「何か」だった。 この少年は異形の手と眼を持って、決して消えはしない何かを よぎらせ、想起しては呼吸を続けている。 アクマを壊し続けている。
不憫なほどに世慣れない様を見せる少年は、時に尋常ではない 老成を見せた。誰も口を挟めないような諦念を見せ付けた。
アレンがアレイスターに云った言葉の重みは、耳にした者にしか、 否、耳にはしても身に覚えのある者にしか解らないかもしれなかった。 愛するものを自らが消滅させた事をも理由にして生き続けねばならない、 それは一体どんな苦行であろうか。 消滅させた者の存在が重ければ重いほどに、決して購い切る事の無い 贖罪を、決して身から離れはしない因果と呪縛の十字架を背負って、 尚生きていくことは自らに科した刑罰としか思えない。
愛する者を自らが殺したことを理由にしてまで生きていかねばならない、 そんなものは自身の生そのものを黙々と死者に捧げ、こうべを下げ続ける 永く遠い弔いの葬列にして、犯罪者の裁きの道程だ。 投げ付けられる石礫すらなく、罵声をあびせる者の姿も無く、 ただ、ただ、独りで独りきりで歩き続けていくのだ。 野垂れ死ぬまで。 誰も知らないままに。
そうまでして生きてゆき、自らを罰し続けるほどに、 アレン、きみはその若さにして自らの生を投げ打つほどに、 壊したアクマを愛していたのであろう。 壊したアクマであった者を、愛していたのだろう。
私の自殺など、後追いなど、きみにすれば、何と不甲斐ない罰であった だろうか。背負い続けて尚生きていくいくことを一生に請け負った、 なんという哀れな少年。 魅入られ、取り憑かれてしまった、哀れな少年。
私はきみにすくわれたとは思えない。
しかし、エリアーデ、エリアーデ、お前を想い続ける私が生きていく事を、 お前は許してくれるだろう。
お前をただ想って生きていくことのみを望むだろう。
だから、私はそのようにしよう。 そのように生きよう。 これは弔いでも何でもない、自己満足にして、お前への隷属である。 私はお前に支配されよう。 そうしてアクマを壊し続けて生きていこう。
記憶は消せない。ふと見かける花に、お前の面影や言葉が思い出される。 それがいい事でも悪い事でもない、もう、お前はいないのだ。 何処にも、何処を探しても、二度と会えはしないのだ。 私が想うばかりなのである。 あの君はもう二度と存在しない。 あの私も二度と存在しない。 もう二度と繰り返されはしない、 もう、もう二度と。
ああ、エリアーデ、お前はいつか云った。 咲いては散る花を惜しむ私に云った。
「アレイスター様、この花と同じ花はもう二度と咲く事はありませんわ、 でも、同じ花が咲き続ける事の方が、痛ましいと思われませんか? 決して枯れずに、同じままであらねばならないことの方が。」
「ねえアレイスター様、散っても何度でも咲きますわ、花は。 同じものは全く無い、それは淋しいことかも知れませんけれど、 私は救いだと想うのです。だから、お泣きにならないで」
エリアーデ、お前はもう咲かない。私ももう咲かない。 そうだな、お前がいないにもかかわらず同じ花だけが咲き続ける事の方が 余程、無残で痛ましい。 咲かなくて良い、もう咲かなくて良いのである、お前はいない。
私には関係のない花が咲いては散り、咲いては散り、私とお前の花は 何処にも存在しないままで私はそれを愛でよう。
想おう。
エリアーデ、焼き尽くした城と花。 お前が解き放ってくれた。 城から出なくとも良いと思っていた、しかし、こうなってしまった以上は お前の望みのままに私は生きよう。 アクマであろうともお前を愛している、私はそのために生きよう。 私が殺した、壊したお前のために生きていく傲慢を、 嘲笑ってもいい。許さなくていい。
私が、独りで、勝手に、そうしていくのである。
アレン、きみはそうして生きているのではないのであるか? 君も、もう二度と咲かない、燃やし尽くした花を想って生きているのでは ないのであるか?
その灰の色は、君の髪のように哀しい灰の色。 焼き尽くされた、もう何も燃えない灰の色。 花ですら、褪せた。 色を忘れた。
END
エリクロエリで、アレイスターからエリアーデとアレンへの想いを捏造。
最近、拍手メッセージが無くって・・・淋しいです。 良かったら罵詈雑言でもいいので浴びせかけてやってください。 ヨヨ・・・。
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