銀の鎧細工通信
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| 2005年04月02日(土) |
咲かないで枯れる (銀土→近) |
春の朝は、さびしい。
芽吹く力を蓄えた植物が、木々が、わんと鳴るように 自己主張し、柔らかで暖かな朝焼けの光が其れを 讃え支えるように、照らす。 自分まで照らす、映し出してしまう。
夜のざわめきを残しながらも、町はまだ寝静まっていて、 徹夜で呑み明かしたらしき若い笑い声がまばらに響いては、 その生き生きとした様に気圧される。
何もかもが明るく、輝いているのに、静かで、自分は一人で、 何もかもの明るいものに、力強いものに、気圧されてしまう。
春の朝は、明るいからさびしい。 明るいから、こんな自分を映し出してしまうから、さびしい。
土方は淡々と煙草に火をつけた、一口目は浅く吸ってふかす。 抱える寂しさは潰されそうに重くも感じられ、 同時に取るに足らないほどに軽い感傷のようにも思えた。
例えば、銀時と夜を過ごしても、帰る道のこの空虚さは、 何も満たされはしない。 紛らわせはしないのだと、痛感させられてしまう。 仕事に明け暮れ、訳も解らないままに時間が流れるのに身を任せて 仕事をこなしていく。空いた時間を埋めるようにさまよって、 時間を潰し、最近は食事も簡易栄養補助食品。
自分を粗末にしている。 そう感じる。 でも、風になぶられ、額を撫でて掠める自分の髪の感触を 心地よいと思う。 まるで矛盾している。 自分を愛しているのか、いないのか。 そんな事、知る必要は無いのかも知れない。
一人であることを痛感する、噛み締める。 側に、例えばあの人、が居たら、自分のことを心配しすぎで あの人自体が苦しむ事になるだろう。 ともに潰れてしまうだろう。 それは甘美な破滅などでも何でもない、笑えもしない悲惨で 惨めで悲しいだけの泥沼の深い底。 ああ、ならいっそ自分は、やはり、独りで居るのがいいのだろう。 こんなさびしい想いなど、大切なあの人を、苦しめるくらいなら なんでもないことだろう。
煙が目に入りかけて、土方は目を細めた。 朝日が余計に目に染みる。 あまりに虚しくて、さびしくて、やりきれない。 煙草を持つ指先は冷え切っている。 あまりにも、虚しく、ただ、独りきり。
自分の仕事の多忙さを、時間の消費の異常さを、 並べ立てたとて何になる? 心からのものであっても、心配や気遣いが自分を癒さない事など、 解りきっている。 現実は変わらない。 同情が欲しい訳ではない、優しさはありがたい、 評価、そう認められたいという想い。 自分で自分を認めたいと想う思い。 こんなにも幼い自分は、独りで居るのが他人の迷惑にならずに 済むのだろう、無駄なことなど云わないのが、思いなど 口にしないのが、せめてもの悪あがきだろう。 ぼろぼろの見っとも無い誇りを守る最後の術。
なんてさびしい。 なんてさびしい。
銀時の気配が思い起こされる、それは心が動くものではあった。 それでけで救われる、誤魔化せる。 人の温もりに、どうしようもなく引かれてしまう。 引き込まれてしまう求めてしまう。 独りでも過ごせない。
(莫迦だ)
土方はぽつりと思う。 呑んでいる煙草すら、美味いのかも解らない。 ただ自分を痛めつけているのかも知れない。
叶わない願いを、心に抱いている。否、背負わされている。 もう捨ててしまいたい、捨てられてしまいたい。 側に居たい、側に居たくない。見たくない、姿。 何処かへ行けたら、逃げられたらまだマシかも知れない。
(何処に行こうが、忘れられないうちは覚えてる、 それでも、諦めがつくかも知れない)
無理だ、瞬時にそうも思った。
何処にもいけない。 此処にしか、居られない。 でも此処ではさびしい。 自分を安売りして、消費しても何も意味など無いのに。 さびしいから、何かせずには居られない。
此処はさびしい。 此処はさびしい。 俺はさびしい。
でも、それがどうしたっていうんだ、 どうすればいいんだ。 どうしようもない事じゃないか。 思考はぐるぐるぐると廻る、ぼんやりと煙と共に吐き出す。
憧憬と思慕の感情で思い起こす、 「トシ、頑張ったな。よくやってるな」 そう云って笑ってくれる、あの人。
(ガキの頃のまま、止まっちまってるのか、俺は)
もう、情けないとも思う力が、気力が湧いてこない。 ただに淡々と思う。 心の中でもあの人の名前は呼ばない。
満たされなさ、これは我侭だと解っている。 でも。
ああ春の朝はさびしい、自分ひとりきり。 周囲の生命力に負けてしまう、負けてしまう。
あの桜は咲くだろう、もう直に。
自分は咲かないで枯れるだろう。
だから取り敢えず、誰かに側に居て欲しい。 それだけでいい。 それだけでいいから。 枯れて死んでいく自分を、見ていて欲しい、 否、見ていなくてもいい。
(俺は、勝手に自滅する、最期まで一人だ)
自虐的な発想が淡々と込み上げる。 朝焼けの光にとても勝てない。
さびしさに、とても勝てない。
俯いたままで、ブーツの先を見ながら煙を吸い込む、 誰の名前も、呼ばない。 呼べばさびしくなるから。 呼んだら、さびしさが形を持ってしまうから。
誰の名前も呼ばなくて済むように、 誰か側に居て欲しい。 誰か、 誰か、 誰か。
空を見上げる事は出来なかった、そんな勇気は無かった。 ただ、土方は俯いて歩きながらさびしさだけに満たされている。
END
私の近況です。 って・・・ええ!? 勿論、土方として捏造妄想はいっぱい入れてますよ!!
いや、丁度今、夜勤仕事明けて、昼の仕事に行って、 また夜の仕事に入って、帰宅してきながら考えていた事です。 カロリーメイトを食べる回数が増え始めているのも私です。 心配して欲しい、誉めて欲しい、認めて欲しい。 そんな弱気心がむくむく湧いてきます、ただひたすらに働いていると。 子供ですなあ。
BGM:荘野ジュリ『36度5分』、またこのBGMで帰宅したのが 悪かった。私はさびしがりです。
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