銀の鎧細工通信
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| 2005年03月20日(日) |
Cocoon (銀桂、SUIさまへ捧ぐ) |
「お前さ、髪、切らねェの」
呑んだくれて夜明けに家へと戻る銀時は、 夜勤の呼び込みをしていた桂と会った。 珍しい事だった。 ふたり並んで朝焼けの白々とした街外れを歩く、 随分と懐かしい気分になる。
こんな事がよくあった、あの時は何を話していたんだろう・・・ 他に人が居たときもあったし、二人だけのときもあった。 よく並んで歩いたものだった。 もう、どれだけ考えても仕方の無いものだった。 感傷的にしかならない、あまりにも不毛で、不憫な過去と いう自分たち。 あまりにも、不憫で哀れで惨めな。 そう云ったら銀時は否定するだろう、「莫迦だなあヅラァ」と 間抜け面を作って俺を揶揄するだろう。 それも解ってはいた、俺だって現在を生きているつもりだ。
考えに沈んでいたため反応が遅れる、桂ははた、と顔を上げて 「何故だ?」 と訊き返した。 腰の辺りまで届こうかという、黒髪が艶を放って流れるように 風に煽られた。さらさら、さらさら、留まる事を知らない時間の様に。
「前はもう少し短かったじゃねーか。肩の下あたりになるとマメに 切ってて、ホラ、坂本に切られてひでェ事になったりしてよ」 銀時は笑ってはいなかった。 朝日の所為なのかどうかは解らない、目を細めて語る。 「そうだな・・・最近は放っておきっぱなしだ。 ・・・銀時、これでお前にカツラを作ってやろうか」 銀時が盛大に噴出して、爆笑した。 笑い過ぎで咳き込みだす。 「ぐっ・・・ふふ、ぶははは!!おまっ、それ! ヅラ屋のヅラになるって話?!とらばーゆですか?!」 腹を抱えている、銀時が本当に笑えているのを見るのは 嬉しい、喜ばしい事のはずだったが、一抹の寂しさがよぎる。 元々群れる気質の人間ではなかったが、一度集まりが出来ると それを何よりも大事にし、その和の中で笑いを絶やさないのが 銀時だった。 その銀時が戦況の悪化と共に笑わなくなり、眼ばかりがどんどんと 暗くなっていくのを見ているのは苦痛だった。
「俺は桂だ、発音が違うだろう、云ってみろ」 「いっや、ぶふっ、だ、だってお前明らかにオヤジギャグだぜ」 息切れしている。 「そう思うお前の発想がオヤジなんだ、嫌味だと理解しろ」 口角を上げて桂は笑んだ、自分の葛藤を気取られない様に。
すう、と銀時の笑いが消えた。 (ああ、やはり気付かれてしまうか)
「ヅラ、ぎ」 「お前の根性そのまんまの髪だ、俺の様な髪質になってみたいだろう? 遠慮するな、いつでも土下座でお願いしに来い」 言葉を遮った。にこりと微笑んで、言葉をせき止める。
義務感だけでやってるなら、もう止めろよ。
云わないでくれ、聞きたくなど無い。 俺はあの最後の時に、他に取り得る手段が思いつかなかった。 お前のようにもなれなかったし、坂本のようにもあれなかった、 何も云わずに大きな怪我を抱えて消えた高杉のようにも振舞えなかった。 諦めることも、 捨てることも、 認めることも、 受け入れることも、 他の道を選ぶことも、 俺には出来なかった。 残った残骸を掻き集めて、取りこぼしては泣いて、 這いずってまた集めて、立ち尽くすしか出来なかった。 死んでいった者のためにも、誰かは同じ場所に立っていなければ ならないと思ったんだ。
「生け贄のつもりかよ、偉そうに」
祭りの騒動の際に再会した高杉にはそう吐き捨てられた。
そうかも知れなかった。
浮かばれなかった魂の、拠り所になって、俺は生きた墓標として その魂を担ぎながら、侍として闘うつもりだった。 いつまでも嫌だ嫌だと篭城して駄々をこねているようなものかも知れない。 今、自分に付いて来てくれている者には失礼な事だ。
「お前さ、」 銀時が口を開く、心が身構える。
「ちゃんと変わってるよ、昔はそんな笑い方出来なかったじゃねえか」
桂の表情が抜け落ちる。
「誤魔化しでも何でもよォ、そういう笑い方すんのはさ、 今一緒に居る奴らのためだからだろ」
「変わらないな、お前は」 ああ、多分自分は今困った様に笑っただろう、でもごく自然に。
「俺は昔からオトナだからね、出来た人間だからね、ホラ」 ニイ、と笑う笑顔と、並んで歩くブーツの頼もしさ。
「ほざけ、酒と糖分で腹が出てきてるんじゃないのか、 自称、永遠の少年が泣くぞ」 表情を隠すために、 断ち切れない思いのように、 伸ばしたままの髪は呪いの繭かも知れなかった。 自分はその中に閉じこもっているのかも知れなかった。
でも、 「お前なあ、西郷んトコに売り飛ばすぞ」 「ふん、出来るものならやってみろ、俺は現役だぞ、鈍ったお前 なんぞ敵ではない」 でも、
「髪、切ってやるから、今度ウチ来いよ」
するり、と髪を一束柔らかく掴まれる。
「・・・そうだな」
「しっかしホントに綺麗な髪だな、オイ。まあ俺は死んでも ヅラのヅラは御免ですけど」
はらはらと銀時が、髪をゆっくりと放す、 舞う髪は風になびく。 ゆったりとした銀時の笑みも、自分の卑怯な笑いも、 全ては無駄ではないのだ。 きっといつか、こんな風にほどけるだろう、解けるだろう。
だから、ああ、 この繭はいつか開いて、俺も何処かへ行けるかも知れない。 抱えた魂ごと、何処か納得のいく場所へ。
「桂だ、って云っているだろうが」 銀時の膝の裏に蹴りを食らわし、がくりとよろけるのを 見て笑いながら思った。
町が目覚め、ざわめき出す。 夜が明ける。
END
居候の身である、しがない私にリンクのお申し出をくだすった SUIさまに、リンク感謝記念として書かせていただきました。 全然、銀桂じゃないですね、銀さんと桂ですよね、これじゃ。 ううむ、申し訳ないです。 つーわけでもう1本くらいリベンジさせて頂こう。 高杉も出してみたんですが、高桂書けるかな〜・・・うじうじやってる 者同士の受けカップルならいけるか・・・ってそれも全然ダメじゃん!
SUIさまの『ダスイストアレス、今日と昔の話』の冒頭の文言は秀逸。 一応、其処で云うことの叶わない銀さんの誉め言葉を云わせてみようと 思ったSSです。良かったらお納めくださいませ。
SUIさまのサイトです。↓ http://sui.gonna.jp/allelujah/
繊細にもの狂おしく苦悩し、葛藤する桂を書かれています。 流れるような文章は甘美です。 Dグレでも書かれているのですが、アレンがうちのコと違って 大人びていて、愛の苦しみを味わいつくして絶望も飲み込んで、 いっそ儚い位の老獪さが切ないのです。 そう、銀桂でもそうなんですが、切ないのです。 という訳で桂好きさん、アレン好きさん、是非ともオススメです。
高杉や銀ちゃんが男っぽくて格好良いのですよ、また。 見習いたいわ。
★銀迦ちゃん★ 素的なデザインとまとめをありがとう! お礼は色々考えているけど、一番手早く出来るのはコレ(文章書く)、 ですわ。近高でも桂でもラビミラでも、云いつけて下さいな。 バナーもうれしい。とっても。
これから空知関連サーチに登録予定です、 皆さまコレからもどうぞ良しなに。 私、本当にあっさりリクエストには応えますので、お気に召したら 拍手ででもお聞かせくださいね。
BGM:より子『Coccon』タイトルもここから。
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