銀の鎧細工通信
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2005年03月14日(月) 花吹雪 (ラビミラ・リーバーミランダ)


「ミ〜ランダさんっ」

機嫌の良い、人懐こい、しかし低い落ち着いた声に振り向く。
ほあほあと凝った細工と刺繍のバンダナで上げた
オレンジの髪がゆれる。

「ラビさん」

ホームの中庭でミランダは本を読んでいた。

彼女が実は結構な本の虫だとは最近知った、
人の多いところを避けて何処かに一人でいる事も。
そして時々厨房の片付けを手伝ったり、
化学班の研究室を掃除したり、
うっかりリーバーと仲良くなっていたりする事も・・・!




まだ落ち着かないのか、一所にじっとしている事も無いが、
人だかりで歓談するのも苦手なので、そういう細々とした
立ち回りになる。
何かと失敗ばかりしていても、誰も彼女を責めない。

「元々此処は滅茶苦茶なんだから、大丈夫だわ、むしろ
こういう気遣いしてくれる事の方がホントありがたいね」

研究室の本と書類の山を片付けようとして崩し、半べその
ミランダにそう云ったのはリーバーだった。
他の研究員も頷いている。
慌てて本と書類の山を分類し、埋もれたミランダは顔を上げた、
リーバーはよく笑う方でもないし、どちらかというと
無愛想でニヒルな表情をする。
でも笑顔でフォローされるよりも、飄々と言葉をかけられ、
ミランダの半べその顔に「ん?」と無言で首を傾げてやることの
方が彼女には有難かった。
「ありがとう、リーバーさん・・・ごめんなさいね、
すぐ元に戻しますから」

だからミランダは、心を落ち着けて失敗の後始末をつけることが出来た。

「いーぜ、別にゆっくりで。俺まだ仕事で残ってるし」
椅子にもたれかかり、コーヒーカップに口をつけながら
リーバーは云った。もう書類の方に目を向けている。
わあわあ騒がれて、あたふたと片付けを手伝われても申し訳なさで
余計に惨めな気持ちになる事も、ミランダは経験から知っていた、
手もかさず、責めることも無い、繕ったフォローもしない。
その態度になにより安心できた。
それは卑下でも、侮蔑でも、罵倒でも、同情でもなく、信頼だから。
信頼と認められる事、感謝こそがミランダを安心させ、
その安心が彼女を成長させるのは云うまでも無い。


「今日は何読んでるんさ」
ぴょこりと覗きこむと、過去のエクソシストの型の分類リストだった。
「私、装備型って訳でもないし・・・ちょっと珍しいみたいだから、
他にどんな方が居たのか知りたくって・・・」
ラビが不意に身を寄せてもミランダは動じなくなった、
恥ずかしげに微笑むのは相変らずだが、大分心を開いてきてくれている。

何かと複雑な境遇でホームに訪れるエクソシストやファインダーには
性格的に癖がある人間が多い。
そうした沢山の人間と接することでラビは人付き合いの技術を
身につけた、
(内気で根暗な人も多いけど、ミランダさんはまた特別だしな)
だから彼女のはにかんだ笑顔はラビには嬉しい。

「その本は?」
「リーバーさんが貸してくれたの」
ラビのへにゃりとした笑顔がビシッと音を立てて凍る。

年の割には老成した性格の持ち主であるラビでも、
リーバーの器のデカさには敵わないと思うことがしばしばあった。
何せあのコムイの片腕だ、生半可な知識やタフさ、頭の回転や
人格で無いと勤まらない。
その、リーバーとミランダが最近親しい。

この間も食堂で一緒にお茶をしているのを見てしまった、
割って入ったラビの目つきの悪さに、何ら身の覚えの無いリーバーの
反応は至ってクールで平常どおり、それが余計に悔しかった。
「お前も座れば?」
なんて立ったままのラビに椅子を勧める始末。
「じゃあ私、コーヒーでも頂いてきましょうか」
ふわりと席を立ったミランダに
「悪い、俺の分も頼める?」と云ったリーバーに
持ってきたコーヒーにはミルクだけが2つ付いていた。
ラビにはミルクと砂糖が一揃い。
「必要か訊きそびれちゃったから、一応両方」
とミランダは云う。

(おいおい・・・)

リーバーは一日にかなりの量のコーヒーを飲むので胃が少し悪い。
というよりも化学班はコムイの影響もあって、大体皆胃が悪い。
ミルクを2つ入れるのは彼特有の飲み方だった。

(そんな事把握しちゃう仲なわけ?)

ミランダにもリーバーにも何も意識は無い、
だったらはっきりとミランダを狙っているラビに分はあった、が。


「ふうん」
渋い声を出したラビの事をミランダが見返る。
不意に、小さく微笑んで、ラビに向かって細い手を伸ばした、
ぎょっとして
「なっ、何さ?」
とベンチからずり落ちそうになるラビに、ミランダは
「花びら」
と呟いて、ふわりとラビの髪に手を滑らせた。

「ほら」
と痩せた掌を開くと、白い花びらが乗っている。
真っ赤な頬でラビは「ありがと」と俯いた。

「いいえ?」
ミランダは小首を傾げた後に、
「ここは結構植物が多いのね」と云った。

隔離された絶壁の要塞、黒い城。
だからこそ皆は其処を家らしくするために、昔から様々な
植物を植えてきた。出身国から持ち寄った多国籍な庭園。

ざわりと大きく風が吹くと、林の奥から白い花びらが
無数に飛んでくる。
ミランダが髪とスカートの裾を抑えながら「まあ」と
小さな感嘆の声を洩らした。
「きれいね」
嬉しげな表情のミランダの黒い髪にも、肩にも、白い花びらが
つもっている。
「・・・きれいさね」
呟くと、ラビは吸い寄せられるようにミランダの髪の、肩の、
花びらを大きな掌でそっと払ってやった。
細い肩、青白い肌、この痩せぎすで折れそうな人の中で、
しっかりとしたあの大時計の振り子のような芯が真っ直ぐに通っている。
愛しいな、と思った。


「大変、本の間にも花びらが入っちゃったわ。
でもリーバーさんなら、むしろ喜びそうね、ずっと研究室に
釘付けだから」
にっこりとしたミランダに、
ラビは「あーそうだろうね」と事も無げに答えつつ、
心の中で「打倒リーバー!」に燃えるのだった。





「リーバーさん、これ有難うございました」
本を手渡す。
「んー、いや全然。何かまた見たいモンあったら云ってよ」
「ええ、有難う。お礼があるの、後で本を開いてみてね、じゃあ」
とミランダは静かに云うと、長い裾を翻して研究室のドアを音も立てずに
閉めて出て行った。

「?」
リーバーが本を開くと、はらはら、ふわひら、
小さな花びらがまるで花吹雪のように柔らかに舞い落ちた。
長身の彼の胸元から足元までの小さな花吹雪。
ぷっと吹き出し、
「誰がこれ掃除すんだよ」
と独り言を云いながらも、リーバーは珍しく目を細めて笑っていた。








END

ラビミラでリーバーミランダです!!
実はリーミラ、私の一押し。只今銀迦ちゃんを洗脳したく。
恋心に自覚があるのはラビだけです。
いいね、ミランダもてもてでいって欲しいね!
リナリーちゃんは無論アイドルです。
リナアレで。

Dグレはカップリが判然としなかったのですが、最近ノマカプ優勢かも、
と思ってきています。
てか、リーバーが好きなんだ私多分・・・。
ええ、ええ、シカマルとか沢松とか、ああいうスタンスの飄々と
した切れ者キャラに弱いんですよ。


只今銀迦ちゃんが2月までの作品をまとめてくれています。
これで旧作も読みやすくなるかと思うと、そのデザインを彼女が
やってくれてると思うと、私が嬉しい!笑。
素的なデザインにしてくれています、お楽しみにvv

銀魂(土方受け・高杉絡み・陸奥攻め・エリヅラ・その他)と
鋼、その他で分類をお願いしています。



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