銀の鎧細工通信
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| 2005年03月12日(土) |
捨てられた花 (朝のかぶき町の風景、銀土+おりょう) |
「う〜・・・さみっ」
夜にかぶき町に設けられた臨時交番で夜警を 云い渡されてからしばらくたった。
それはロッカーの様な実に簡素なもので、 小さなストーブでも直に暖まるのは幸いだったが、 夜も朝も無く猥雑で喧しいかぶき町でぼんやりと 過ごしている事が苦痛だ。
日誌に「異常なし」の記録をつけて出たのは5時半、 屯所まで30分はかかる。 一番冷え込む時間帯、白々と薄青い春の空とは裏腹に 空気は冷え切り、夜明けの冷え込みがじんと響く。
かじかんだ指先で煙草をぎこちなく摘み、 土方は火を点けた。 ふーーーーと煙を一筋吐く、まだまだ朝夜は冷える。 昼間が暖かいと尚の事そう思う。
かぶき町では土曜ということもあってか、ばたばたと 倒れこんでいる酔っ払い、それを楽しげに千鳥足で介抱する連れ、 何のかんのと賑々しい。 (人は仕事明けだってのによ・・・) 別に構わないのだが、何とはなしに心の中でごちる。
朝の静けさの中では何処か無声劇じみている。
夜勤明けに、せめて暖かいコーヒーと軽い食事を、と 思っても夜の街かぶき町を抜けて屯所の方まで来てしまうと 開いている店など無い。 (ほっと一息くらい付かせろってんだ・・・) 今度は少し本気でごちる。 煙草を持つ指先が痛いほどに冷たい。
はた、と歩道を見ると小さな花々が散乱している、 横のゴミ捨て場からカラスか猫かネズミかが、食い破った ゴミ袋から溢れて散ばっているのだ。 白と薄桃色。 八重の花びらが踏まれて潰れ、でもその無愛想な町並みに、 不意に異質な人工的でない自然物が目に入る。 茎は無く、ただ花だけが無数にばら撒かれている。 土方は足を止めて見入った。 (寒いけど、確かに春なんだよな) ゴミにされた花に思うのも妙な事だった。
白々とした朝の歓楽街に黒い影、 歩道に捨てられた花々。 煙草を黙々とふかして足元に見入る。
「姉上!」 聞きなれた声に顔を上げると、其処には新八がお妙の店の前に 駆け寄っていた。 「アラ、どうしたの新ちゃん、宝くじでも当たったの?」 「宝くじじゃないですよ、自分で「働いて帰る姉の夜道を気遣う くらい出来ないのか」ってキレたんでしょうが」 店のママに会釈をしてお妙とおりょうも仕事終わりの時間の様だ。 「そんな事云ったかしら?」 「云いましたよ、ハーゲンダッツの蓋投げつけながら、いででっ」 「余計な事云ってないで、じゃあおりょうちゃんを送って、」 「あーいい、いい。もう明るいし、大丈夫よ慣れてるもの」 新八のこめかみにゲンコでグリグリが入っているのを見て、 おりょうは面倒臭そうに云い、「じゃーね、お疲れ」と手を振った。
志村姉弟は逆方向だったので土方には気付かなかったが、 おりょうは土方の居る所と同じ方向だった、擦れ違い様に 「仕事明けですか?」と訊ねられたので 「そうです、そっちもお疲れ様」と土方は淡々と応える。 近藤のお陰?でおりょうとも顔なじみだった。 「いいええ、土方さんもご苦労様」と云うとおりょうはにこっと 笑って会釈をして通り過ぎた。
土方は花の散らばったゴミ捨て場のある歩道をそのまま進む、 今度は呑み屋の暖簾をくぐって長谷川と銀時が姿を見せる。 「おーう!多串くん!」 「うっせえ、酔っ払いはさっさと帰れ、こちとら仕事明けだっつのに」 と苦々しく吐き捨ててそのまま立去る。
しばらく行くと土方の携帯がなった、公衆電話からだった。 「もしもしー?」 「なんだよ」 「もう帰る?」 「ああ、なんでだ」 「もうちょっと俺に付き合ってよ」 「・・・いいぜ」 「さっき居た所にいるから〜」 銀時の声は大分酔っている。 そのテンションに付き合うのは疲れそうだったが、そのまま 真っ直ぐ屯所に帰るのも忍びなかった。 また捨てられた花の上を土方は歩く、 すぐ真横にはゴミ袋が山になっているのに、歩道には、花。
また携帯電話がなった。 「あ?」 「ごめん、さっきのやっぱナシで、」 銀時の潜めた声の後ろで「早く帰るアルよ!」と神楽の声がした。 「マダオもこんな時間まで銀ちゃんと呑んでるなんて、 だから奥さん帰ってこないんだよ、このマダオ!」 「あーはいはい、了解」 「ごめん」 プツ、と素早く電話を切った。
土方はもう1本煙草に火を点ける。
おりょうはコンビニに入る。
(・・・迎えに来るだとか、一緒に帰るだとか、いいねえ)
さほど本心で羨ましいと思っている訳でもないけれど、 こんなにも清々しい朝で、仕事疲れの気だるさと眠気、 何とはなしにボヤキが混じる。
土方は自販機でホットコーヒーを買った。
おりょうは肉まんを買った。
(迎えが来るだとか、一緒に帰るとか・・・)
ふーっと煙草の煙を空に吐き出してコーヒーをすする。
はあ、っと白い息を空に吹いて肉まんをほおばる。
満更でもないけれど、無いものねだりもちょっと有りつつ、 とにかく寒いので擦れ違っただけの二人は図らずも早足で帰宅を 急いだ。 缶コーヒーと肉まんの暖かさ。 今夜もお疲れ様、の小さな一息。
歩道の花が、捨てられたゴミ袋からこぼれ出した花が、 コンクリートの上で朝日を受けてふわふわとほの淡く光る。
END
すいまっせん、夜勤明けの歌舞伎町も、ゴミ袋からこぼれた花も、 すっごく寒いのも、肉まん歩き食いしたのも私です!!笑。 ほぼ実話です。 電話もです。笑。 いーよねーお迎えに来る人が居るとかさー、一緒に帰る人が居るってさー、 とかちょっと羨ましくありつつも、晴れ晴れしいのが仕事明け。 潔く一人で肉まん食うのです、つーもろに自分ネタSSでした。 結構、皆夜の仕事とか呑んだくれとかだから、花を見た瞬間に 「これは使える」と。笑。 MOEも何も無くて申し訳ないです。
BGM:Sigur Ros()
★レス★ ゆいさま 悶えて頂けましたか・・・!う、うれしい!! 厳しくきっぱりした山崎には、土方は揺れるといいと思います、 日頃安心しきってやりたい放題だからこそ。 絶対に銀さんと関わることで土方は変わった部分があると思うんです、 多分他の人もそうなんだろうけど、なまじっか真逆な生き方で、 同じものを求めている銀土コンビは尚の事かな、と。 そうなんですよねえ、「不快」!!いいですよね、もうMOEる単語です。 沖田も山崎もそれが不快で仕方ないと、うふふ。 でも自分たちじゃどうしようも出来ないものだからこそ尚更不快だと 更に嬉しいです。笑。 事件・流血ものがイケる方、という事で嬉しいです、また陰気なものも 書いていきたいのでどうぞ遊びにいらしてくださいねvv ありがとうございました!
12日の「リンクを・・・」のアナタさま! 身に余る光栄なお言葉、僥倖でございます!!! おそらく技術的には可能なんじゃないかと・・・、はい。 もし宜しければ、お手透きの際にでも目次ページの下部にある MAILからH.NやサイトのURLをご連絡頂けたら 幸いです。 全然構わないどころか嬉しいですし、光栄なのですが、 「いいの!?アタシでいいの!?」とあわあわしておりまして、苦笑。
目次ページにリンクを貼って頂いても、URLは変わる事はないので 大丈夫だと思います。 ごめんなさい、管理などは全部オーナーの金銀迦ちゃんに お任せなもので、機械よく解らないんです私。苦笑。 本当に素晴らしいお申し出、ありがとうございます!
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