銀の鎧細工通信
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眼が眩んで瞬く。 薄青い空はぼんやりと霞み、 空気の暖かさは春の到来を告げる。 夜になれば冷えるというのに。 砂漠のような気候だ。 砂漠のような だ。 砂が遠くでごうごうと鳴っている。 轟々、轟々。
「へぐしっ」
「あーあ、薄着で出てくるからですよ。三寒四温、 この時季を甘く見ると風邪一直線ですよ?」
「っあー・・・うるせェ。大体遅くなったのは お前のせいだろう、俺はさっさと帰るつもりだったんだ」
「武装警察っつたって、警察なんだから道案内くらいは 当然でしょうが」
「うるせェ奴だなちまちまとォお!わかってんだよそんくれェ!」 くしっと土方はまたくしゃみをした。
辺りは暗く静かだった。 月が二人のはるか天上でおぼろに輝いている。 ぼわぼわと滲む影は酷く頼りの無いものだった。
コートを着ずに、ベストとシャツだけの土方は肩を寄せて抱いている。 その土方の真横、家の格子窓から刀が突如突き出た、 土方は寸前で其れを交わし、向き直って刀を抜く。 それと同時に土方の頬の横を掠め、ひゅ、と風を切って 何かが飛んだかと思うと、にぶい声とともにどさり、と音がした。
「山崎」
「土方さんは嫌いでしょうけどね、小さな刃物くらい投げれた方が、 やっぱり便利ですよ」 メスの様な小刀を伸ばした掌から覗かせて山崎は云った。 云うなり、その手を逆に振りかざし、するとまた「ぐっ」と呻き声が したかと思うとどさりと何かが倒れこむ音が背後からした。
土方が振り向くと、道端に小太りの男が倒れている、 その手の先に、落ちた刀。 じわじわと血だまりが広がる。 黒く、どす黒い其れは、こんな夜ではコールタールのようだった。
「いきなり殺してどうする、俺らの仕事は殺しじゃねえぞ。 背後関係を洗わないで殺しちまってどうすんだ」
押し殺した声が、土方の怒りを表していた。 眼がちらちらと赤く光る。 (ああ、行灯の火か) 山崎は全然関係なく、土方の虹彩を赤く光らせる光源を思った。 そうして無言で刀の柄だけを勢いよく弾いた。 柄の持ち手を喰らって、にぶい音ともに、また一人倒れる。 「・・・殺してませんよ」
ぎろりと、噛み付きそうな勢いで土方が睨みつけた。 大きな舌打ちをすると、最後の男の方へ歩み寄る、 「屯所に連絡入れろ、こいつを連行する。医者も呼んどけ」
「了解」
山崎は先ず本部へ携帯で連絡をいれ、死体の始末を頼んだ。 その後に真撰組の屯所へ連絡をする。 「あ、山崎です。不逞浪士に襲撃、2名即時処分。1名連行、 医者を呼んでおいてください、はい、ええ副長と一緒です、はい、じゃ」
完全に失神している男を動けないようにしながらも、気道を確保し、 「襲撃かどうかも解らなかっただろう、今の。脅しかも知れなかった!」 土方が怒鳴った。
「完全に副長のこめかみを狙った位置でした、脅しにしたって 致命傷を狙ってる」 携帯を胸ポケットに仕舞いながら山崎は事も無げに云い切った。 「現に俺はかわせただろうがよ!」
「かわせなかったらどうすんですか」
土方は目を逸らさずに睨みつけてくる、殴られるかも知れないなと 思いながら山崎は自分の口をふさげなかった。
「副長、あんた甘くなってる。 ・・・俺らは木刀で、何の組織にも所属しないで、 気楽にやってる人種じゃないんですよ」
予想以上に声は冷静だった、むしろ静かな位だ、と山崎は思った。 「ど・・・」 土方は云いかけて止めた。 唇が戦慄く。
どういう意味だ。
訊くだけ間抜けな台詞だった。 だからこそ土方も口を噤んだ、殴ったら肯定したことになる。 銀時を意識していることを認めることになる。
(あ、血が出る)
噛み締めすぎた唇が、裂けて血を流しそうだった。 山崎はそう思うなり土方に口付けた。
「気にしたって、俺たちはああは振舞えないんですから、 考えるだけ副長たちが危険に晒される」
土方がだらりと垂らし、硬く握った拳をそっと押さえながら 囁く。
(卑怯だな)
敢えて「たち」、と云ったのは「近藤もだ」という意味だ。
山崎の手が添えられた拳が震えだす。 ぎゅうと押し包んで、土方の頬に、こめかみに、鼻先に、 まつげに、額に、ゆっくりと口付けを落とす。
土方の全身から「遣り切れなさ」という血が滴り落ちて、 こぼれてくる。 山崎はそれを一滴残らず吸い込む。 砂漠のように。
轟々、轟々、うすぼんやりとした月明かりの何処か彼方で、 砂が鳴っている。 何かを喚いている。 聞き取ることなど出来ない。 ただ轟々、轟々と唸りを上げる。
END
山土でついに一線越えましたよ皆さん!!どういう報告ですかね。 陰気くさい続きでいってみました。 流血とか、人死にが苦手な方の為に注意書きが必要か迷いました、が、 あえて無しで。 「胸くそ悪くなったわこの野郎!」という方が居られたら、 今後は書き添えますので、お手数ですがお知らせくださいませ。
優しいようで、実は底知れぬ厳しさを持つ男、 砂漠のような、薄情な山崎。私MOEなSSですいません! 沖田といい・・・土方が可哀相になってきましたよ・・・。 誰かシアワセにしたってよ。 銀さんさらって嫁にしてやってくれよ。
BGM:鬼束ちひろ「シャイン」、好きなんですよねこの曲。
★レス★ ゆいさま シンメトリーといい近代画といい、甘美なお言葉むしろ燃えました! タイトルに使わせて頂きたいくらい、心そそるお言葉に感謝感謝です。 互いにしか拾えないけど、拾っても抱えきれないものばかり、 そんな遣る瀬無い近←土、銀土前提の山崎を書いてみました。 静か、と云って頂けるのは、実は狙っているもので、本当に嬉しいです。 静かに痛ましい土方に燃え、静かに静かに何かを守ろうとしている銀さんに 燃え、静かに狂気を抱く皆に燃え、と何処か笑いと哀愁が漂うのが 銀魂の好きなMOEポイントでございます。 いつもありがとうございます、本当に励みになっております!!
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