銀の鎧細工通信
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この人殺し。 お上の名を借りて、やってる事は結局ただの人殺しだろう。 どんな名目があっても、やってる事は人殺しだろう。 刀をただの兵器にして、凶器にして、 美学も何もあったものじゃない。 正義だなんて嘘を吐くな、人の命を奪っておいて。 この人殺し。 罪を認めろ、報いを受けろ、罰を与えられろ、 呪われろ、
大事な者を殺されろ、奪われろ、壊されろ。 ひとごろし。 呪われよ、人殺し。 贖いきる事の無い報いと罰と呪いに苛まれるがいい。 救いなんて何処にも無い。 殺して、救われる事なんて有りはしない。 忘れるな一時も。
「・・・う・・・っあ、・・・うああっ!」 がばりと跳ね起きる。 冷や汗にまみれ、呼吸は静かな一人部屋に響くほどだ。 震える手で、それでも無意識に、起き抜けに掴んだのは、 刀
だった。
悪夢の余韻にざわりと目の前が暗くなる。 「くっそ・・・っ!」 ガシャ、と重い音を立てて、それを畳みに投げつける。 両手で顔を覆って、呼吸を整え心を静めようとする。
額の冷や汗を拭い、煙草とライター、灰皿を掴んで縁側へと出た。
月も出ておらず、くもった夜空に、ぬるい夜気が汗を冷やす。 深く溜息をついて、腰を下ろすと煙草に火をつける。 ぎりりと歯噛みして、髪をぐしゃぐしゃとかき乱す。 どうしろと云うんだ。 唸る。
きし、と廊下のきしむ音に顔を上げると、沖田が立っている。 寝巻きの着流しに、刀を携えて。 「総、悟」 しゃりん、と怜悧な音を立てて抜刀する、 そのまま切っ先を喉元すれすれに突き付けた。 「ひでェツラしてやがるぜィ」 そう云う沖田も、青白い顔色をしている。
汗に濡れた前髪の間から、ぎらぎらと目だけが不安げに光る。 傲然とした表情を剥ぎ取ると、あまりにも病的な脆い表情になる。 細い顎、肉の薄いこけた頬、むごたらしい痩せ狼。 神経質さがじわじわと蝕んでいる。
「毎晩毎晩、うなされちゃ起きてるだろィ」
じわじわと黒い影に蝕まれる。
「迷惑なんでさ」
俯いてから眉を顰めた。 だったら、見えるように顔を上げたまま、泣くなりすれば良いものを。 歪んだ顔を見せない、もう既に血まみれで歪に生きているのに。
切っ先で顎を持ち上げる、抵抗しないでされるがままに 顔を上げたが、刀の先端で喉の薄い皮膚が少し切れた。 筋の浮いた首に血が流れる。
青白く、やせ細った首に、流れる血の赤だけが生きている事を感じさせた、 毎晩のようにうなされては眠れないまま朝になり、 ろくに食事もとらず、病んだ表情で煙草ばかり呑んでいる。
沖田が刀の先に力を少し込めると、先端が喉に刺さる、 眉を顰め、顔をしかめた。 血の筋が増える。
「何とか云ったらどうですかい」
「・・・何も云うことなんざねェよ」 ぽつりとこぼす。
「あんた、今に狂っちまう」 少しだけ刺さった切っ先を離し、頚動脈にと向きを変える。
「その前に、俺が殺してやりましょうかィ」
「俺を殺して、お前どうすんだよ」
「隠して、逃げますぜ」
甘い様な痛い様な表情をした。 もう狂ってきているのかも知れない。
「お前らが、死ぬのを見るくらいならマシかもな」
「首を切り落として、俺が連れて行ってやりまさあ」
そう云われて、ふ、と微笑んだ。 不憫で無残な痩せ狼。 抱えすぎて潰されかけている。 最期まで側で見ていてやる、と沖田は思った。 逃げ切れない悪夢という、現実。 逃げられない現実という、悪夢。
殺すことに慣れたつもりでも、殺されることに脅え続けるのは、 殺すこと自体が異常な行為で、慣れない事の証左だ。
「どうしますかィ、土方さん」
END
陰気風味な沖土。あくまでも風味ですよ、コレくらいは。 今思えばNARUTOを銀迦ちゃんとやってた時には、果てしなく 暗かったし血まみれだったしグロかったです。 何であんなの描けたんだろうな。
こういうのは、正直書くの楽しいです。 銀さん相手だと、何処かしら救いが見えてしまうから、 カップリ的には沖土か山土だと思います。 この話しも山土にするか迷いました。
BGM:鬼束ちひろ
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