銀の鎧細工通信
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2005年03月05日(土) 剣 (銀土)

それは鏡のようなあなたとわたし。


さかさまの銀と黒。


斬らない刀と斬る刀。


重ねあう切っ先、重ねあう体、
どうしても同じ想いと
どうしても違う立場。




はらはらと零れ落ちるように雪が降る、今年は雪が多い。
黒いコートを着込んだ土方は、自動販売機の横で暖かい
コーヒーの缶で指を暖め、煙草を呑んでいる。
吐く息の白さと相まって、煙は白く深く、雪景色の中に溶けていった。
「多串くん」
振り返らなくても解る、太い訳でも無いのに妙に響く声。
無視をしているともう1度呼ばれる。
何処か甘い声、甘えさせたい様な甘えたい様な。
ざり、という音とともに足音が近付いてくる、
がしゃこん。
自動販売機で奴が何かを買っている。
土方はただ前を見ていた、雪が降り積もってゆくだけの風景を。
痺れる様に熱かった缶も、今は土方の全体的に長い手指の中で
すっかりぬるくなった。
持て余してしまう。

ふ、と横に立った銀時は、片方の袖をいつも抜いているのだが、
しっかり着込んで羽織とマフラーを身に着けている。
ずび、と鼻をすすっては銀時も缶を大きな掌の中で転がして
暖を取っていた。
「さみーな」

「・・・ああ」
声まで、無音に降りそそぐ雪に吸い込まれそうだった。
「煙草、頂戴」
「貰い煙草ばっかりしやがって、いい加減自分で買えよ」
云いながら土方はコートの胸ポケットから煙草を出す。
銀時は土方からしばしば煙草を貰うが、自分では買わないし
独りで居るときに吸っているのも見たことはない。
当然ライターも持ってはいないので、土方はライターと
煙草を渡してやった。
「自分で買って吸うほど必要じゃねーんだよ」


土方は少し銀時を見詰めた後に、また目を前に向ける。
(必要ね、こいつの云いたい事は解る・・・)


以前「多串くん、いつからそんなに煙害野郎になったの?」
と訊かれた。
「真選組が出来てからだな、道場にいた頃にはそんなにずっと
吸ってた訳じゃねえ」と本当のことをそのままに答えた。

幕府の犬は自由にものが云えない。
火の粉が降りかかるのは先ず近藤だった。
国に飼われた組織には不自由が付きまとう。
云いたいことを飲み込んで、近藤のために我慢する。
誰にも気付かれないように溜息をつく方法、
押し黙る方法、
場を繋ぐ方法、
最近は単なるニコチン中毒で、そうした事も今更あまり考えない。


そうしたものを刺激してくるのは銀時だった。
忘れたい事、忘れようとしてる事、考えないようにしている事、
つついて暴き出すのはいつも。

(何でそんな事しやがんだろうな・・・)

「そんな生き方してて疲れねーの」
とはよく云われるが、大きなお世話だという事は
銀時もよく解っているはずだった。
そういう風にしか在れない土方を否定など出来ない。

(だからこそかな・・・)

「お節介野郎」
コートに顔をうずめて土方がぼそりと呟いた。

銀時は、小さく笑って、土方の刀に手をかける、
「だって、コレ重いじゃん」
とんとん、と軽く柄をたたく。


「それがもうお節介だってんだ」


「まあねえ」
銀時が美味そうに、煙草を吸い込み、
空に向かって煙を吐き出す。


手の中の、もう微かなぬくもりは、本当に持て余す。

銀時の懐に、そのすっかり冷めた缶コーヒーを捻じ込む。

こんなに冷え切った空気の中では、触れ合ってる肩が
暖かいのかも解らない。



それは鏡のようなあなたとわたし。


さかさまの銀と黒。


斬らない刀と斬る刀。


どうしても同じ想いと
どうしても違う立場。

憎悪と憧憬、感傷と執着。

決して同じにならないけれど、寄り添うことだけなら出来る。
剣という自分たち。







END

祝!銀魂6巻。事前に表紙の画像を見ており、友人に動揺のメールを
送っていた銀鉄火です。
でもって、銀さんと土方が同一人物だった設定に悶絶。
本当に空知は予想をはるかに凌駕してくれる、素晴らしい描き手だと
思います。はふ〜満悦。
同一人物、鏡の片割れSSでした。

BGM:Syrup 16g


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