銀の鎧細工通信
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| 2005年03月02日(水) |
呪い (ミハベ:おお振り) |
阿部君は絶対ワザと笑ったりしない。 自分でも云ってたけど、言葉も雑、な方だと思う。
「やっぱ笑顔がいいね」 そう云って見せた笑顔は、多分俺に気を遣ってもくれたんだろうけど、 阿部君自身に笑いを作った、んだ。ワザと、敢えて。 榛名サン、は阿部君のエースなんだ。 阿部君の、自分のエース。
成りたい。 俺が、阿部君のエースに成りたい。 阿部君には、俺が、投げるんだ。 俺が、阿部君に。
初春の薄青の空を背にして、立膝で(まだ三橋の笑顔に)笑っている 阿部は、柔らかい表情をしていたが、だからこそ三橋にはそれが 痛かった。 叶わなかった願い、なんてものじゃない。 阿部が榛名に抱いているのは、もっとドロドロと黒くて、 ギラギラと鋭くて痛い感情だ。 いっそその感情に酔っている様に、阿部は甘い風を受けて、 柔らかく笑んでいた。
三橋の背筋に鳥肌が立つ。
(ズルイ。)
阿部の根っこに突き刺さって、支配している榛名を憎いと思った。
いつも何かを考えている顔をしている阿部を、あんなにも剥き出しで、 触れたらこちらまで血を流さなければ済まない様な、 そうして阿部自身が消えてしまいそうな、 儚くて傷だらけの表情にさせる榛名。
その上阿部はそれに気が付いていない。 魅入られた吸血鬼に、うっとりと首を差し出しながら、 死んでいく様な恍惚とした表情に。 云った処で、阿部はそれこそ激昂して否定するだろう、 殴られるかも知れない、と三橋は思った。
(それだけ、榛名サンの事が重いんだ・・・)
いつもだったら、此処で「俺はダメピーだから」と、引き下がる 三橋が、それでもズルイ、とクヤシイ、を頭の中でぐるぐるさせている。
頭をもたげた黒い感情は、阿部を想うヤサシイものでは、無かった。 自分が投げる事で、阿部を支配したい、榛名の占める位置を奪いたい。 それがどれだけ、更に阿部の傷を抉って、彼を泣かせるものであっても。 血まみれの彼を抱き締めて、彼は俺のキャッチだと喚く様な思いに、 三橋本人ですら気付かない振りをした。
「捕手ももう一人つくりましょ!」 心臓を何かが突き抜けた。 三橋は、もう阿部以外の人間に投げたくなかった。 1球も洩らさず阿部に投げ、阿部に捕らせたかった。
(阿部君じゃなきゃ、イミない)
(阿部君が受けてくれなきゃ、俺は役に立たないダメダメピッチャーだ)
(そしたら、そしたら、 いつまでも榛名サン、を超えられない)
気の無い投球の訳を訊かれた時に、三橋は駄々をこねた。 「阿部君じゃなかったら」 意味が無いんだ。
阿部の返答は、呪いを強化した。 呪縛を深くした。 阿部の中にも、三橋と組んで、榛名を見返したいという思いがあった、 そうして、榛名が物としか見ていなかった自分に目を向けさせたい。 思い知らせてやりたい、自分が味わった思いを。
ピッチャーと云う生き物に、思い知らせてやりたい。
榛名が阿部の心身に刻み込んだ呪いは、阿部に呪いを生ませた。 三橋に呪いを生ませた。阿部に更にかける呪い。 阿部自身が気付いてもいない、榛名の阿部へ向けた執着が、 その呪いを黒く禍々しく歪め続ける。
「あ、阿部君・・・」
一日を終え、着替えて帰る段階になって三橋が声をかける。 「なに」
「・・・やっぱ、い」 「よくない!くちでいわなきゃわかんねーって云っただろ」 三橋の言動パターンを読み尽くして、阿部は先回りする。 びくっと身を震わせた三橋をなだめる様に、 「いいから、云えよ。なに」 と口にしてやれば、三橋は肩の力を抜く。
自分は今まで榛名という投手に支配され続けてきた、 自分の思い通りになる三橋が、かわいく思えるのも無理の無いことだ。
「お、俺ねっ、・・・うれしかった」 「なにが」 「阿部君、が、俺の投げる試合は全部キャッチャーやる、って 云ってくれて・・・うれしかった・・・です」
ふ、と目を細めて笑って、阿部は三橋の手をぎゅうと握った。 「エースはお前だからな、お前がケガもなんもしねーで、 万全で投げられるのがイチバンなんだから、忘れんなよ」
作り笑いではなかったが、阿部の向うに榛名がチラつく、
(まだ全然ダメだ・・・)
阿部の中から、榛名を全部消し去りたい。全部自分でいっぱいにしたい。
三橋は、阿部を握った手ごと引っ張って、 体勢を崩した阿部を抱きとめる。 勢いだけで阿部にキスをした。
「俺っ!投げるから!」 阿部を抱き締めたまま三橋は大きな声で云う。 阿部は目を見開いて体を硬くしていた、その理由を 三橋は知らない。 榛名とのセックスが思い出されたなんて、知らない。 「阿部君には、俺が、投げる」
黒い触手に首の後ろを撫でられる、阿部は身が竦んで 振り返れなかった。
「・・・おう」 小声で三橋の言葉を肯定する。
黒い影を退けるために。
(俺はコイツの球を受けるんだ、だから、もう、)
俺を解放してくれ。
END
すいません!ハルアベ書いたら、ミハベも書いておかなきゃ気が 済まなかったです。 三橋→阿部→榛名です。でも榛名も阿部には執着してます。 阿部は阿部で、榛名への執着は無視してますが、根は深い。 それとは別に三橋のことも想ってはいます。 うーふふふ、ぐっちゃぐっちゃの愛憎ですね、いいですね。 何だか、心理描写の卓越した漫画だからこそ、銀魂よりも えぐい、黒い話が書けるのに驚き。
メインは銀魂ですが、阿部偏愛なので、たまに書いちゃうかもです。 すげー楽しい。皆若いから、人の気持ちなんてまるで無視だし、 全然解ってないし、ワガママと自分の欲望に正直で、実に残酷。 体も正直だし。 ふふ・・・つっぱしってほしいわ。阿部受けエロとか書けるな、私。
BGM:天野月子「人形」阿部ソング、笑。
★レス★ ゆいさま 知らないジャンルでも読んでくださるなんて光栄です〜うわあん。涙。 『おおきく振りかぶって』っていうのは、アフタヌーンで連載している 野球漫画です。 気が向いたら是非に。オススメですよう。 いつも本当にありがとうございます! 次は銀魂で土方受けを書きますからねー!!
もりさん うわあ!お読みくだすっていたのですね!有難うございます!! メッセが送れたのが、よりにもよって阿部受けSS、という事で、 私はかなり舞い上がり、おお振りを続けてしまいました。 もりさんが阿部受け、っていうのがまた更に嬉しいです!キャー! 少ないですよねー・・・なのでもう自家発電です。あんなに受けで エロなのに、阿部受けはどうして少ないのでしょうかねえ。苦笑。
陸奥が好きと云って頂けるのも本当に光栄でして。 多分、陸奥至上主義サイト様に負けぬ勢いで、陸奥を敬愛している のではないかと思います。 あまりに私が陸奥好きで、妄想しまくりなので、皆さま退いてらっしゃる かしらー・・・と思っていたので、良かったです〜!安心。
何しろもりさんは坂土の師!(祖?) こちらこそ通わさせて頂いていますよう! 長いはくすメッセージ、有難うございました!
あ、皆さま、銀は長文をネウロの様に好物としております。笑。 長文、短文、問わず、喰わせてやって下さいましv
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