銀の鎧細工通信
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| 2005年02月13日(日) |
ラプソディー・イン・ハート (エリヅラ) |
ふう、と桂は溜息をつく。 「どうしたものかな・・・これ」 ひとつは小ぶりのハート型をしたチョコレートケーキで、 もう一つは丁寧にラッピングされたチョコレート。
今日は夕方でバイトを切り上げて、早めに帰宅して 先程完成させた。 大晦日は、「彼女」が夜勤らしかったため、何の躊躇いも無く 二人で年越しをしたが、明日はどうなんだろうか。
エリザベスには可愛い看護婦の彼女が、いる。
エリザベスは語らないので、予定などは知りようも無い。 出かける時も突然で、戻ってくるのも突然だった。 「幾松殿には朝渡しに行けるし・・・」 ケーキはどうしようか。 作ってみたは良いものの、渡す、というか二人で食べられるかの 目処がたたないのだった。 彼女と過ごすのならそれはそれでいいのだ、 「一日で腐るものでも無いしな」 桂は観念したようにまた一息つくと、立ち上がってケーキに ラップをかけて冷蔵庫にしまった。
「よし、エリザベスが帰ってくるまでに晩飯も作ってしまおう!」 腕をまくって髪をくくり、敢えてしゃっきりとした声で自分を律した。 着物の袖をたすきがけでまとめる。
桂が魚を焼きがてら、菜の花のからし和えに取り掛かろうとすると、 引き戸が開いて、白いぬぼっとしたエリザベスが現れる。 「おお、おかえり。エリザベス」 桂のいささかほっとした様な声に、エリザベスがこっくりと頷く。 (俺は何をうだうだ気に病んでいたんだ、エリザベスはこうして 俺のところに帰ってくるのだから、明日一日くらい何でも無いではないか) ちょっとのさびしさと、それでも嬉しさと安堵で桂は表情を ほころばせると 「もう少しで晩飯できるからな、部屋で待っていてくれ」 と云う。
するとエリザベスがちょこちょこ寄って来て、おもむろに何かを 桂に差し出した。「何だ?」 そこには、どうやって物を掴んでいるのかさっぱり解らないエリザベスの 手には、『エリザベスさんへ』と書かれたカードのついたチョコが 乗せられていた。
カードには、あのナースの名前。
「今日、逢って来たのか?」 桂が期待すまい期待すまい、という風に押し殺した声で問うた。 エリザベスはまたこっくりと、先程よりも深く頷く。 じわり、と目の奥が熱くなって桂は慌てて目を逸らす、 「そうか、俺も明日は早番なんだ、・・・」 そこから言葉が出てこなかった。 菜の花を茹でている鍋が吹き零れそうになっていたので、 慌てて火を止める。 エリザベスはその間に冷蔵庫をぱかっと開けて、さっきのチョコを 仕舞おうとした。するとそこにはハート型をしたケーキ。 『エリザベスいつもありがとう』とホワイトチョコレートで書かれている。 桂がそれに気が付き、「あっ!」と声を上げた。
「・・・母の日みたいで変だとも思ったんだがな、でもバレンタインと いうのは日頃の感謝を込めて贈り物をする日らしいから・・・」 と云う桂は俯いていて、でも後ろで一つにまとめた髪の間から 見える頬も耳も真っ赤だった。カッカと火照り、湯気まで出そうだった。
エリザベスがまたちょこちょこと桂のところへ寄って来て、 もふ、と桂を抱きしめた。ふわふわの手(着ぐるみ)で桂の頭を撫でて やる。よしよし、と云わんばかりに何度も何度も。 桂は頬にあたるエリザベスの毛並みと、そのもふもふとした触感に 安心し、しかしおずおずと「明日の夜に、一緒に、食べような・・・?」 と疑問の形でエリザベスに告げた。 桂を抱き締めたまま、エリザベスが頷くのが解った。
迂闊にも涙が出てきてしまい、桂はぐしゅ、と涙声で 「さ、晩飯を作ってしまうよ」 と云ってエリザベスから離れてそっと涙をぬぐった。
エリザベスは濡れ縁を上がった一間の部屋にと入っていった。 桂は濡れ縁の台所で、おひつを開けて、飯を茶碗に盛ろうとして、 そのほあほあした白い湯気に、また涙腺がじわりとゆるむのを感じた。
部屋の方では、エリザベスが手編みのマフラーを明日まで何処に 隠そうか思案していた。 彼女が「エリザベスさんに上げるわ、あ、そうだ!エリザベスさんも 桂さんに作ってあげたら?私、教えてあげる」と一ヶ月半ほど前に 申し出てくれてから、二人で編んだものだった。
翌日は、朝から快晴のバレンタイン・ディ。 朝一で暖簾を上げる幾松に桂がチョコを渡しに行って、幾松は 「いやだねえ、何だか恥ずかしいよ!有難うね!」 と頬を染めて輝かんばかりの微笑みをこぼした。 「じゃあ、あたしはホワイト・ディに何を返そうかな」 と云いながら大切そうにチョコを両手で胸の前に掲げ持つ。 「世話になってばかりだから、気にしないでくれ」 と云う桂もとても嬉しそうだった。
夜勤明けの彼女は、ナース服のままで病院の庭に出て、 「はい、エリザベスさんこれ!」 と云ってマフラーをエリザベスにまいてやった。 「私が教える方だったのに、エリザベスさんの方が先に完成しちゃうんだ ものね。まあ、長さが違うから、ってことにしておいてね」 チョコだけは昨日仕事の前に渡したものの、エリザベスがまけるほどの 長い長いマフラーは完成せず、彼女はそれを持って夜勤の仮眠時間で 編み上げたのだった。 「桂さんも、きっと凄く喜ぶわよ」 と云って、うふふ、と悪戯っこの様に微笑む彼女の笑顔も輝いていた。 エリザベスも、何となく嬉しげに見える。
どうか沢山の笑顔がこぼれますように。 どうか沢山のハッピーが訪れますように。 どうか皆の笑顔が輝きますように。
END
約束どおりのエリヅラです!!!!!!!!! どうですか皆さん!?こんなん、どう?! いや、どうって訊かれても、ねえ。ですね。はい。
エリナースでエリヅラでヅラ幾ですが、結構上手く収まるんですよね。 何だ、皆ハッピーラブラブでいいじゃないか!と。
私はすっかりナースの彼女のことを忘れていたんですが、友人から 指摘され、一気に考えていた話を改変しました。しかし何だか満足です。 日頃「煮え切らない・報われない」話ばっかり書いてる所為か、 反動でラブラブが書ける時には目一杯ハッピーに!と思ってしまいます。
エリヅラ好きさんたちの、お気に召したら本当に幸いです。
前日の桂のもやもやが書きたかったので、一日早く書いてしまいました。 なので明日は本命カップリング、土方受けでバレンタインネタかなあ。 でも土方受けは「どろどろもやもやぐずぐず」が好きだから、 何か、バレンタイン!−★みたいなの書けない気も・・・ううむ。
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