銀の鎧細工通信
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2005年02月14日(月) 私にひかりを (銀土)


見なくていいものを、見たくないものを、
目に入れないために光を失くして。
それでも『逢わなかった方がマシだった』とは思わない。
そう思えたら、どれだけ楽だったろうに。



バレンタインともなると、気のいい男所帯は浮かれさざめく。
こぞって非番のシフト希望を出す奴が続出し、くじ引きで
休みを決めた。真っ先に希望を出したのは、他ならぬ近藤だった。
日付が変わるか変わらないかの時間に、即効でお妙の店にチョコを
せびりに突っ走り、坂本まで呼び出して大騒ぎを起こしたというのに
全く懲りていない。
「チョコレートを装った爆弾攻撃でもあるかも知れねーってのに、
どいつもこいつも!ったくお気楽なモンだぜ」
とぼやきながら土方は見回りへと赴く。


そうは云いながらも、最近目にする攘夷志士は、本当に困った
ゴロツキも居れば、気のいい根っからの侍もいると知った。
ますます、何かひとつの要因でも異なれば自分が立っていたのは
あちら側だったのだと痛感する。
奴らが行っているのは、幕府に云わせればテロリズムだが、
実のところは暴力でしか表現できない意思表示だ。
それは願いも込められたもので、テロというよりは正当な反撃で、
天人の傀儡に成り果てている、腐った幕府への批判の意思表示なのだ。


「アーラ、トシ子じゃないの」

野太い声に振り向く、
「マドマーゼル・・・。その『トシ子』っての止めてくれよ、ほんと」
「何云ってるのよ、まァた陰気な顔しやがって。アンタさえ良けりゃ
いつでもウチの店に来ればいいのに」
彼女、もその一人だ。道端で銀髪と喧嘩をしていたら、
通りがかった彼女、に仲裁され、そしてその素性を夜に聞かされた。

「何処で誰が何してるか、ほーんと解らねーよなァ。
今突っ走ってる道が何であれ、どいつも信じた道を走ってら」

珍しく神妙な顔で銀髪が云った言葉はよく覚えている。
ニヤニヤ笑いではなく、苦笑でベッドの中、片肘で頭を支えて
人の煙草に手を伸ばす。
銀髪の体には大小の傷跡が残っている。薄暗い部屋の中でも、
裸の腹や胸に残る生々しい傷は目に焼きつく。
おそらく、自分よりも其の傷は深くて、多いだろう。


「ホラ、トシ子。こんな日に辛気臭い顔してると、もてないオトコ
だって思われるわよ、これ持って行きなさい」
そう云いながら西郷は、手いっぱいに抱えた紙袋からチョコレートを
差し出した。客商売はこの手のイベントにマメである。
土方は今日の未明に陸奥にからかわれた事を思い出し、
滅入った気分でそれを受け取った。
「あ、そうだ。これもう一個パー子に持っていって頂戴」
と押し付けられる。
「近所なんだから、マドマーゼルが持って行きゃいいじゃねーか」
と云うと
「私は忙しいんだから、テメーが行きやがりなさい。しかも大体なんで
私がわざわざパー子に渡しに行ってやらなきゃならないのよ」
と有無をいわさぬ凶悪な表情で凄まれたので、
土方はジャーマンスープレックスをかまされる前に「はいはい」と答えた。


土方はチョコをポケットに入れて、煙草を呑みながら万事屋へと
向かった。
入り組んだかぶき町の路地にも慣れ、近道にも詳しくなった。
先日には一緒に巡察に出た沖田に「随分と深入りしたモンですねィ」と
嫌味を云われてしまった、

(深入りだって・・・?こんなモン、暇の潰し合いだろうが)

だんだんと重みを増していく、銀時との情交に云い訳をするように
土方は頭の中で毒づく。



引き戸を叩くと、「ふぁ〜い、今出ますよー、っと」と
だらけた声がする。明らかに寝起きで、しかも対応が眼鏡の
小僧では無いという事は、おそらくアイツ一人だけだ。
「あら、何よ多串くん。折角今日はガキどもが出払ってて、銀サン
気ままな一人暮らし気分を満喫なのに」
戸を開けるなり、これだ。
『叩っ斬るぞ、てめェ!』という言葉を飲み込んで、
「オラ」とつっけんどんにチョコを突き出す。
すると銀時の顔がすうっと青ざめ、
「・・・な、何コレ、多串くん・・・毒?毒入りなの?!」
とうろたえるので、慌てて「さっき西郷に頼まれたんだよ!」と
必要以上の大声で云い足した。

「あ、そう」

と云うと銀時はいつもの半眼に戻り、「まあ茶でも飲んでけば」と
土方の返事も聞かず部屋へと戻った。
断られるのを想定していない物云いは癪に障ったが、何となく
逆らえずに万事屋の戸をくぐる。

玄関で壁に手をかけ、ブーツを脱いでいると、台所で銀時が
本当に茶の用意を始めている。
昼下がりの日差しが、格子から射して銀髪をきらきらと輝かしている。
ふぁ〜、あふ。
大きなあくびをしながら、慣れた手つきで適当に急須に茶葉を入れる。




見えなければ良かった、知らなければ良かった、
こんな迷いなど斬り捨てられれば良かった。
ただ近藤さんと隊の事だけ考えていた頃の方がまだマシだった。
気は迷い、振り回され、要らない事まで考えさせられる。


土方がじっと見ているのに気付いた銀時は、
湯飲みに茶を注ぎながら、「何、したいの?」と
あっけらかんと云う。
「昼間っから、そんな思い詰めた顔しちゃってさ〜多串くんは
困ったコだねえ」
急須からこぼれた茶を布巾で拭うために、また台所に顔を向けた銀時に、
片足だけ脱いだブーツを投げつける。

「あいだァ!!ちょっと御巡りさん!アンタらの靴は鉄板仕込んで
ある安全靴なんだから、マジで死にますよ!何考えてんですかテメー!」

土方は「ふん、うるせェ」とだけ応えて、もう片方も脱ぐと
そのまま台所で頭をおさえている銀時に歩み寄り、
「これ、貰うぜ」と湯飲み茶碗をひとつ手にしながら、そのまま銀時に
軽くキスをして、ソファのある部屋へと入っていった。

銀時はあっけに取られて台所で固まっている。
ああ、この部屋は光で眩しい、土方は窓を見やって目を細めた。









END

一応バレンタイン絡みの銀土です。無理矢理?苦笑。
なんか、最近、私オールキャラ気味ですよね。偏っているけど。
先日の陸奥土も踏まえつつ、沖土も混ぜつつ、土→近は一貫してて、
マドマーゼルと土方を知り合いに・・・。
いえ、銀魂は皆好きなので、ついね・・・つい・・・
・・・だって、楽しいんですもの!!

という訳で、やはり私は銀土が好きです。
上記のように混戦しきった土方総受け、見境なしなクセによく云いますが。


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