銀の鎧細工通信
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| 2005年02月12日(土) |
仔犬 (陸奥土で土→近→妙でバレンタイン) |
「何でもええがじゃ!はよ地球ば帰るぜよ!!」 「ちょっ、坂本さァん!解ったから、手ェ離して下さいよ!」 困り顔の操縦士がわめく、それよりも横で坂本がもっとわめいている。
長い手足をばたつかせ、終いには「おりょうちゃぁーーーーん!」と 叫びだす始末。操縦室の誰もが、彼女を待っていた。 (早く来て・・・!船が沈むから!) 「待っててくれろー!おりょ、ごばっ・・・!!」 「喧しいんじゃ、この毛玉」 云い捨てて、蹴りの勢いで頬にかかった金灰の髪を払いのける。 「陸奥さん!」 「陸奥さん!」 操縦室の誰もが、助かった!という輝きの眼差しで陸奥を見詰めた。 「こいつばァ、倉庫にでも放り込んでおくきに、 全速で地球に帰還じゃ」 「はい!」 見事に揃った返事が響いた。 白目をむいた坂本は陸奥の手によって、貨物の倉庫に閉じ込められた。 もっとも、地球に着くまでに意識は取り戻しそうも無かったが。
陸奥はむっすりと倉庫の鍵をかけると、事の発端である、 衛星を介しての宇宙端末を接続した。 彼女の自室にある17インチモニターが小さく唸りを上げて、 所謂「宇宙テレビ電話」を映し出す。 「はーいィ!こちら真選組です!」 慌しげにし、うっすら汗までかいている山崎が回線を受け取った。 「陸奥じゃ。近藤はおるきにゃ」 「ああ陸奥さん・・・それが・・・」 疲れきった苦笑いを浮べた山崎を見ると、陸奥はすぐさま 「解った。土方はいるろー、呼べ」と云い換えた。
「おう、陸奥さん」 と画面に映った土方は、着流しが乱れて肩がずり落ち、黒い艶やかな髪は ぼさぼさになっている。冷静を装っているが、煙草に火を点けられない ことが、混乱を如実に表していた。 「そっちは戦場の様やの」 「いや、あんたが電話してきたって事は、そっちも同じだろ」 「大迷惑じゃ。毛玉は血相変えて“地球に帰る”の一点張り」 「すまん・・・近藤さんはもう飛び出して行っちまった」 「・・・ふん。直に地球に着くきにゃ、いつもの場所じゃな」 「ああ、店で開店前に作るって話だ」 「解ったろ、じゃあな」 「お互い大変だな」 「おまんは其れを買うて出とるじゃのうか、わしは只の尻拭いじゃきに」 身も蓋も無い陸奥の言葉に、土方は少し困った顔で口角を上げた。 まるで飼い主の後をついてまわる仔犬みたいな顔じゃな、 と思いながら陸奥は回線を切った。着陸用のポートが見えた。
『お妙さんが店でチョコレートを作るらしい』
それが騒ぎの発端だった。 客に配るためのものらしく、そうすれば必然的におりょうも作ることに なる。その情報を聞き付けた近藤が慌てふためいて、「恋の狩人」仲間 である坂本(二人とも狩人にしては何も獲られないが)に宇宙電話を かけたのだ。 二人で「何としてもお妙さんから/おりょうちゃんから、チョコを 貰う!」と鼻息も荒く、店に駆け付ける事に結論が達するのに時間は かからなかった。
着陸の振動とともに、坂本はがばりと跳ね起き、倉庫の頑丈なドアを 蹴破って一目散に駆けていった。 小さくなった後姿を見ると、陸奥は小さく舌打ちし、 「おまんら、後の事ばァ、任しゆうがぞ!」と怒鳴り、活気ある返事を 聞き届けると外套と菅笠を手にして颯爽と船を出た。
陸奥が店につく頃には、既にお妙がブチ切れ、 「だァから仕事にならねーって云ってんだろーが こンのゴリラアアアーーー!!」 と絶叫しながら同時に近藤がアッパーカットで店からすっ飛んできた 処だった。 坂本はチョコの前にあぐらで座り込み、 「おりょうちゃんのチョコば、他のオトコにやるんは嫌じゃあああ!」 と半べそで訴えていた。 おりょうは「あんたにはやったでしょお! 大体これ皆アタシが作ったんじゃ無いわけだし!」と坂本の横で 頭を抱えている。 店員と、他の馴染み客はもういつもの事だと、鷹揚に笑っており、 だからこそ余計に店の前の道端に突っ立っている土方は遣る瀬無かった。 近藤はお妙によって沈黙させられたので、後は自分が連れて帰るだけ だったが、坂本は・・・。 「土方」 「陸奥さん!早く何とかしてやってくれ・・・」 またしても(助かった!)の目で見詰められ、陸奥は辟易した。 「営業妨害で、おんしがしょっ引けばええがじゃ」 「そうは云っても店のママが『彼らはもういい』って諦めてんだから、 捕まえる理由がこっちにゃ無いんだよ」 ふ、と一息つくと、ズカズカと店に入り、「陸奥じゃなかか!」と 顔を上げた坂本の懐に飛び込むと鳩尾に拳をいれ、昏倒させる。 その手馴れたさばきに「陸奥ちゃん、相変らずお見事ねえ、 どうなの?考えてくれた?あんたならいつでもウチの店大歓迎なのに」 とママが声をかける。 「わしは接客には向かんろ。大体これ以上この店ば、バイオレンスに しちゅうのも気が引けるぜよ」 と柔らかな表情と声でする返答には、店の男女がともども見惚れた。
いつもの様に坂本を陸奥が引き摺りながら帰ろうとすると、店のホステス の一人が「あ、陸奥さん、折角だからコレ貰っていってよ」、と 綺麗にラッピングされたチョコレートを手渡した。 「わしじゃのうて、土方に遣ればええものを」と受け取りながら云うと、 「駄目なのよ、あの人は店に入ってこないから」とホステスはケラケラ 笑って云った。そう、大抵お妙によって店から追い出されている為に、 土方が店内で近藤を制止することはなかった。 「いい男よねえ、無口で渋くって。ま、この二人も可愛いんだけど」 別のホステスがクスクス笑いながら失神している近藤と坂本を見て云う。 陸奥は「騒がせたな、すまんきにゃ」と云いながら店を出る。
店の前では土方が近藤を介抱し、肩に腕を担いで立っていた。 器用に片手で煙草を吹かしながら、「お疲れさん」と云う。 (こげな仔犬みたいなオトコの何処が渋いんじゃ・・・) そう思うと陸奥はさっき貰ったチョコを土方に突き出し、 「遣る」 と云った。 「こいつらが目ェ覚ましたらまた騒ぎよるがじゃ、おまん片付けろ」 「陸奥さんが貰ったモンだろ、船で事務仕事でもしてる時に 食えばいいじゃねェか」 土方が苦笑いで辞するので、陸奥はぽんと投げて寄越し、 「いいから喰え」 と云って坂本の身体を引っ張り上げて担ぐ。 頑なな陸奥の態度に観念したのか、土方が煙草を消し、 かさかさと包みを開けて、歩きながら口に放り込む。
(近藤さんがもぎ取って、懐に入れてるのと同じモンを喰うとはな・・・)
舌の上で溶ける甘さと、なんとなく苦い気持ちが口の中で混ざる。
「土方」 不意に呼ばれて振り向く 着物の襟をつかまれて、上体が下に向くと、 陸奥が唇を合わせ、舌先を土方の口腔に差し込む。 「んむっ?!」 驚いて何事か云おうとする瞬間には陸奥の唇は離れており、 「これで貰ったことになるきに」 と平然と云い放った。
「人をからかうなァ!」 と土方が真っ赤になって叫んでも、 「おんしゃあ、苦いきに。丁度じゃ」 と何処吹く風だ。 「んだよ・・・甘いモン嫌いならそう云えばいいのによ」 平静を保って土方が云うと、陸奥は一瞬だけ笑んで
「違う、土方が苦い思いばしちゅうから、それをわしが分けて 貰ってやって丁度ゆう意味じゃきに」
と優しく云った。 「それはお気遣い、ありがてェな!」 拗ねて煙草に火を点ける土方は、陸奥にしてみれば健気な黒い仔犬だ。 喉の奥で彼女はくつくつと笑った。
「わしは甘いモン、嫌いじゃないがか」
「だったら初めっからあんたが喰えばよかったんだ」
「いや、面倒ごとに巻き込まれたんじゃ、少しくらい 困らせてやってもバチは当たらんきにゃ」
「・・・俺が巻き込んだ訳じゃねーよ」
「だから、おまんは好きで巻き込まれてやってるんじゃろうが、 同罪じゃ」
近藤のことを止められないのは、近藤に土方が甘いのは、 本人にも自覚があった。 土方はぐうの音も出ない。
その困り顔(はたから見たら不機嫌な仏頂面だが)を見て、 陸奥はまた楽しそうにしている。
END
はい、バレンタインです。土方受けですが、攻めは陸奥です。笑。 好きなんですよねえ、坂本近藤コンビと陸奥土方コンビが。
★レス★ 9日。白梅と金魚の感想を下さったアナタ様!! ある意味沖田は、土方にとっての特別だとは思います。 近藤さんに片想いで、でも銀さんが気になって、なもやもやした土方が 対等に安心して振舞えるのは沖田だけなんじゃないかなあ、と。 で、対抗馬は山崎ですから!笑。 タリヨンも読んで下さったんですね!有難うございます〜!! 鬼畜攻めな格好良い高杉がメジャーな中で、脆く儚く薄幸な高杉、 しかも受けで近藤高杉、というのは私と金銀迦ちゃんの中ではメジャーな 妄想です。笑ってやってください・・・。へへ・・・へ・・・。 8月にも近高を書いてまして、目覚めていただけたら嬉しくて空も 飛べます、私。意外といけませんか?高杉受け。微笑。 ではでは、有難うございました!!これからも頑張ります!
Kルンバぴょん。 風邪は治りましたが玉子酒は作って下さい。本気。 でもって金魚高杉を喰うのは止めてください。消化に悪そうですから。 高そよ、やはり良いね、良いわ。ラヴィ!
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