銀の鎧細工通信
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2005年02月04日(金) 腰抜け (銀土)

このモヤモヤは何だろう。
不愉快だ、ああ不愉快だ。

「おいィ!銀髪!」
「あによ、ンな大声出さなくても聞こえてるよ」

数歩先を歩いている銀時が面倒くさそうに振り返る。
土方の眉間には深い皺が刻まれ、眉が攣り上がっている。
ああイライラする、こいつの全部に。
何だか無性に、何だかとっても、堪えきれない感情。
「多串くん、顔こえーよ」
半眼でだるそうに、それだけ云うと銀時はまた
ひょいひょいと歩いていく。

軽い足取り、周りの景色を眺めながら、ふらふらゆらゆら。

コイツが俺にちょっかいを出すの何ざ何かの気まぐれだ。
気まぐれなんかに振り回されるのは真っ平だ。
はじめから飽きて終わるのが解ってる遊びなんて。

ツカツカと早足で歩を進め、銀時を追い越すとくるりと勢いよく
振り返る。
「てめーどういうつもりだ!」

「・・・何がァ?」
わしわしと頭を掻きながら応える。
頭に血が上る、もう真っ平だ。

「どうして俺に構う」
ぎりぎりと歯噛みするように漏らす。
「何でかなあ、・・・何となく?」
土方がカッとする。(どこまで人をコケにしやがる気だ・・・!)
「何となくで、つまんねー暇つぶしに巻き込まれんのは御免なんだよ!」
街灯の提灯の灯りを受けて土方の薄いグレーの虹彩が赤く光る。
ちかり。
ちろり。
狐火のように。

「いちいち理由が必要なんて、多串くんはおぼこいねえ」
何処までも思い通りにならない。
人の神経逆撫でする事しか云わない。
土方は舌打ちすると踵を返して駆け出した。

(付き合いきれねえ、そもそもそんな必要ないじゃねえか・・・!)

走りながら虚しくなってくる。
自分は何をしてるんだろう、
自分は何がしたいんだろう、
何が欲しくて、何をしたくて、
一体何が本当なんだろう。
自分の何が本当なんだろう。
縋る様に盲信している近藤さんも、
何で自分はこんなにしばられているんだろう、
まるで意味が無いのに。
こんなこと自体考えたって答えは出ないし
意味が無いのに。
そもそも何かに意味なんてあるのか?
駆けながら器用に手で風を除けて煙草に火を点ける。
真っ直ぐに駆けてゆく土方の辿った道の後ろに
煙が散り散りになりながら後を引く。
黒い影が細く細く長く後を追う。
ただただ真っ直ぐに駆けてゆく、脇目も振らずに。



走るだけ走って屯所まで戻ると、
其処には銀時が待ち受けていた。
やっぱりイライラする。
「てめーは何がしたいんだよ」
土方は溜息混じりに、口に出す。
ああもう馬鹿馬鹿しくて涙が出そうだ。

「あのねえ、多串くんといやらしい事がしたいだけ、そんだけ」
何処か呆けたような顔で銀時はするりと云った。
土方はもう真顔で銀時に駆け寄って、其の勢いで殴りつけた。
「頭おかしいんじゃねえのか!」
銀時は立ち上がって砂埃を払うと、顔を上げて
「嘘。本当は無性に多串くんの事が色々と知りてェんだわ」
口の端が切れて血がにじんでいる。
「ホントに頭おかしいぜ、意味わかんねー・・・」
土方が其れから目を逸らして俯く。
銀時は、その俯いた頬に手を伸ばして、触れるか触れないかの処で
ぴたりと手を止めた。
「うん。だからさ、俺の側に居ると危ないからさァ、
俺だって訳わかんねーし、何をどうしたいのかわかんねェんだもん」

止まったままの手を思い切り手で叩いて、土方は銀時にキスをした。
勢いだけの、本当に微かなキス。
「腰抜け!!」
怒鳴って屯所の勝手口に入った。



単なる好奇心だとか、興味が欲情になって、
触れ合ったところで話すことも特に無い。
そのくだらなさに自分の本質なんて揺るがされない。
楽しいのか、楽しくないのか。
それともそういうのはどうでもいいのか。
土方はほだされかかっている、「都合のいい」自分に
腹が立った。
「・・・腰抜け」
屯所の庭をまた駆けながら小さく呟いた。自分へと。


壁の外では銀時が殴られた口の端の傷を指でなぞり、
「こんなの、危ないだけだよなあ・・・」
とぼやき、それはシンとした夜の闇に溶けて消えた。
叩かれた手のひらがジンジンする。


恋とか愛とか名前の付かない感情。
もてあましてる、不愉快なくらい。
もう、どうにでもなればいい。
なるようになればいい。
出たトコ勝負なんて行き当たりばったり、本当は
自分の性分じゃない、けれど、けれど。
アイツの出方次第だ。
土方はそうして、立ち止まって「っはーーーー・・・・」
溜息と共に顔を空に向かって仰いだ。





END


微妙な関係の銀土。「側に居ると危ないから」ネタ2弾。
シリアスにするつもりは無かったんですが、
何だか青春まっしぐらなヤキモキ話になってしまいました。
お前ら高校生か!!

開き直った喧嘩上等でラブラブな銀土も好きですが、
どうにもぐじぐじぐずぐずしてしまいます。
このね、二人のじりじりした感じ、実はちょっと好きなんですねえ。
銀さんにしてみたって、土方が近藤さんのことが大好きなの解ってるし、
いい年の男同士だし、土方にしたって近藤さんへの想いは報われないって
解ってるし、銀さんも気になるし、で何だか二人とも腰引けて、
こう・・・もやもやと・・・。笑。





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