銀の鎧細工通信
目次|前|次
| 2005年02月03日(木) |
サルビア (リザロイアル) |
誰かのために、なんて本当は自分のため、だったりもして。 正直じゃないな、大人気ないな、だって、でも、 あいつはもう居ないのだから。
「やあ!アルフォンスくん、今日は生憎の雨だね、 こういう日には体の具合はどうなんだい?」 「大佐、こんにちは」 アルフォンスは挨拶を欠かさない。 毎度何かの儀式の様に行う。 大きな鎧をぺこりと屈めてロイにおじぎをした。 「う〜ん・・・動くのには困りませんけど、後で水滴を ふき取るのが面倒なんですよね、僕一人じゃ届かないところも あるから誰かに手伝ってもらわないといけないし・・・。 といっても、兄さん以外には頼めませんけどね」 語尾には苦笑が混じっていた。 ロイは鼻息も荒く、 「私が幾らでもふき取って磨いてあげよう!何遠慮することは無い! 若き才能溢れる錬金術師のためだからね、この焔の・・・がふっ」 「気持ちわりーんだよ!このヘン大佐!」 云い終える前に、赤いコートをたなびかせて小柄な少年が、 そぐわない野太い声で制止に入る。
「何ていうことをするんだね、鋼の!今君は上官に機械鎧の方で 蹴りを入れたんだぞ?!機械鎧の方で!」 「二回云うな、ウザい」 吐き捨てると、地べたで横座りのロイはさも心外という表情を浮かべた。 「行こうアル、待たせたな」 「えっ、でも兄さん・・・大佐にちゃんと謝らないと。 いきなり暴力を振るうなんて良くないよ」 口調は丁寧だが、有無をいわさぬ頑なさが込められている。 「いいのよ、二人とも。お行きなさい」 「中尉」 アルが背後からのアルトの声に、振り向いて姿を確認する前に反応を 示した。 「この人に近付くと、危ないからもうお行きなさい」 ぶはっ!とエドワードが噴出し、ゲラゲラ笑いながら云う。 「だっよなあ!流石中尉、解ってるよ」 「危ないとは何かね、ホークアイ中尉」 まだ横座りで居るロイはわなわなとしながらやっとの思いで口にする。
「湿気たマッチの様になるから危ない、という事ですが」
さらりと、しかも真顔で見詰められながら放たれた言葉にロイは 泣き崩れる真似をした。 「君って人は・・・今疑問形ではなく断定形で云っただろう・・・!」
側でお決まりの茶番を見ながら、ハボックが一人、 (問題はソコかよ・・・)と痛いものを見る眼差しでロイを見やった。
ロイを放置する形でエドワードは清々しい表情で部屋を後にした。 アルフォンスを引き摺って。
ロイは憔悴した表情で猫背になりながらとぼとぼ部屋を出て行く。 「大佐、まもなく軍議の時間ですが、どちらへ?」 何事も無かったかのようにホークアイは声をかけるが、 「あ〜うん、行くよ、行く」 と虚ろに返答してロイはぱたりとドアを閉めた。
「一服っすよ、あの人、中尉が煙草嫌いだからって、いつも外で 吸ってるんです。まあたまにですけどね」 ハボックが弁護に入るも 「そう。でもアナタは気にしないのね」 と一蹴で返り討ちにあった。
「キツイなあ、もう・・・。でもこれでも控えてんすよ?」 この男特有の、片眉だけ吊り上げ、口をへの字にした曲者然としながら 憎めない表情で応える。ハボックは、へこたれない。弱くない。 「解ってるわ」 ホークアイも、特有の無表情で応える、が其処にはからかう様な 笑みが含まれている。 ハボックは(敵いませんよ、あなたには)と云う風に肩をすくめてから 「しっかし大佐も何であんなにエルリック兄弟に構うんでしょうね。 あの人、子ども好きでしたっけ?・・・まあ、ただの子どもよか、 余程重いっすけど」 と咥え煙草(火は点いていない)のまま呟く。
「充電したいのよ、自己投影かしらね」 「充電?」 「そう、出来て無いけれど」 あまりに唐突で抽象的な文句にハボックは一瞬ポカンとしたが、 直に意味を解して 「充電出来ない充電器かあ・・・空回ってますね、そりゃ」 と飄々とした顔で、ホークアイから視線を逸らして呟いた。 「全くね」 ホークアイはカツン!と小気味良い音を立てて踵を返し、 棚から会議に必要な書類をピックアップし始めた。
ちら、と窓の外に目を遣ると、植え込みの影から紫煙が一筋、 もやもやとたなびいている。 少し目を細めて(全く無能なんだから)と毒づく。
燃やし尽くすしか能が無くて、不器用なんて云えば聴こえも良いけれど、 結局自分と同じ歪んだ者が好きで、何かを創れる人間を求めるんだわ。 (まあ、私も自分で何かを創り上げられる様な人間じゃないわね) 自嘲してまた書類の束に目を戻す。
空回ってでも、誤魔化したいものが、そこかしこに溢れている。 大人も子どもも関係無く。 走ってゆけるまだ見ぬ先がある子どもはまだ良いのかも知れない、 見えてしまったら其処に進むしかなくて。例え何があっても。 何を失っても。
もやもや、もわもわ、誤魔化しきれない煙が上がる側に サルビアの赤い花が咲いている。
END
あおはるじかん、の青井さまに捧がせて頂きます、気持ち悪い大佐です。 職人技のマッチには感動しました! この様な居候に、御本など本当に有難うございます! かなり腹を抱えて笑わせていただきました、最高です!! 返品可、です。苦笑。
ええと、今後は何作か「側に来ると危ないから」ネタを続けます。 私が今日、銀迦ちゃんに云った言葉なのですが、彼女がウケてくれたので ネタにします。 何が危ないかって、私がヘビースモーカーだからです。煙害。スモハラ。 (スモーク・ハラスメント)
今後は銀魂で続けるつもりですYO!
|