銀の鎧細工通信
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2005年01月25日(火) 霧 (銀土)

敢えてその中に進んでゆくんだ。
消える消える霧の中。
振り返って、暖かく優しい日だまりを
確認してから霧の立ち込める銀の森に。
消えてゆく、俺。



「多串くん、舐めて」
目の前につき付けられたペニスに舌をのばす。
熱くて硬い其れは、同じ男のものとはいえ
やはり違う形状や質感をしている。
勃起したペニスをこうもまじまじと見る機会などまず無い。
一度抵抗を止めてしまえば、進んでする事もないけれど、
請われて拒むほどの初心さも持ち合わせていない。
始めのうちは頑なにそれを拒否した土方だったが、
その反応を銀時が面白がっている事に気が付いて、発揮した
負けず嫌いの気性がまたしても銀時を愉快がらせている。
不快なのに、ずぶずぶと嵌ってゆく深み、霧の中。
何も見えない。
見たくもないんだ、本当は。
だから、すがる。


「あっれ、副長。また残してるじゃないですか、
体調悪いんですか?粥でも作りましょうか」
食事の席で山崎が膳を片付ける際に漏らす。
周りには聞こえない様に小声でそう云う、山崎の
行き届いた配慮に、土方の心が軋む。
「・・・すまん」
「ええ!?・・・っと何謝ってるんですか、らしくも無い。
具合が悪いんじゃなければ構いませんよ、別に」
咄嗟に出た驚きの声を瞬時に落とし、いつも通り飄々と受け流す。
追及もしなければ過剰な心配もしない、よく出来た、仲間だ。
土方は無意識に面を上げて近藤を見やった。
何か大声で笑っている。横の仲間も楽しそうにして、
また心が、胸が、全身がぎしぎしと軋む。
土方は無言で廊下へと出た。

縁側で柱に寄りかかり、煙草に火をつける。
部屋の中は明るくて騒々しいのに、自分の目の前は暗い庭に
じじ・・・と煙草が燃える音すら聞こえる苦痛の静寂。
するりと音も無く襖から沖田が身を滑らせ、
土方の横に来た。
「どうした」
「土方さん、あんたァ他の欲が満たされてると、直に飯を
喰わなくなるの、良くない癖ですぜ」
柱の後ろ側面で寄りかかった沖田が良く通る声で呟いた。
言葉を返せず、反応すら出来ない土方に追い討ちをかける、
「万事屋の旦那で性欲誤魔化して、ヤって疲れて眠るのを
睡眠欲として埋め合わせてる。・・・とても真っ当じゃない」
言い捨てるとフイとまた音も無く立ち去った。
追いかけて来い、とでも云わんばかりに闇夜の廊下へと。

その闇を、沖田が溶けた廊下の先の闇を眺め、そうして
土方はまた庭に向き直り煙草を呑む。

ああ、そうだ。
まともじゃない。
いっそ此処で総悟を追いかければマシなのだろうか?

(莫迦野郎・・・もっと泥沼じゃねェかよ・・・)

ぎゅうと眉根が寄せられる。知らず知らずのうちに
煙草のフィルターを噛み潰す。

(そうだよ、食欲なんざ二の次だ。俺は手一杯で、
・・・手一杯で、そこにまで回す欲がねェんだよ)

想う情で手一杯で、それが故に眠ることも出来なくなって、
破裂しそうになっていた土方に
「そんな生き方してて、疲れねーの?」と云って
逃げ道を用意したのは銀時だった。
今となってはそれが逃げ道だったのか罠だったのか、
一層救いの無い迷い道だったのか、それは解らない。

(でも、此処でブチ撒けるよか、マシじゃねえか・・・!)

誰へとも無い怒りと、遣り切れなさが身を襲う。
近藤に、直接ブチ撒けて何になる?
何にもならないのに何になる?
忘れられるくらいなら嫌われた方がマシだと云うが、
近藤は土方の事を忘れはしないだろう。
だから、嫌われるのが嫌で、結局どうすることも出来ないのだ。
嫌われるくらいなら、困らせるくらいなら、
あの笑顔を曇らせるくらいなら。

土方は煙の尾を引いて、勝手口へと出て行った。
物陰からそれを見ていた沖田が、ひどく冷たい顔をしている。
暖かさを守るために、何かが確かに凍り付いている。


「多串くんさァ、ナルシストだよね」
本人には全く自覚の無い、泣きそうな表情で万事屋を
訪れた土方を連れて、銀時はホテルへ向いながら云う。
「何がだ」
「えェ?自覚ないんですか。困ったもんだなァおい。
・・・自分さえ我慢してりゃ良いとか思ってるんでしょ?
そこまで我慢してる自分に酔ってるんでしょ?」
「何っ・・・!」
咄嗟に銀時の着物の胸倉を掴んで引き寄せた、
でもそこから手は、体は動かない。
「ここまで出来る自分って、すげーって。
すげー好きなんだって、独りで思い詰まってるんだろ」
銀時があまりにも事も無げに笑うので、殴ろうにも殴れない。
着物ごと握り締めた手が力の込めすぎで震える、
見開かれた眼は今にも涙で爆発しそうだ。
銀時はそのまま土方を抱きしめる。
「多串くん莫迦だねェ、でも其処がかわいい。
自家中毒であんた瀕死なんだもん」
抱き寄せた頭を撫でる。
「俺、あんたのこと多串くんって以外に呼ばないぜ、
でないとあんたホントに死んじゃいそうだから」




救われているのか、墓穴に生き埋めにされに行っているのか。

敢えてその中に進んでゆくんだ。
消えたい消えたい、霧の中深くまで。
見えないくらい深く。
誰も自分を、自分も誰も、見えないくらいまでに。
振り返って、暖かく優しい日だまりを
確認してから霧の立ち込める銀の森。
凍て付いた森。
消えてゆく、俺。

誤魔化しても、紛らわしても、埋め合わせでも、
欲しいものは一つなのに、
それが手に入らないから他のものが必要なんだ。







END

25日「書かれる多串君受け小説が凄く好きです!」とメッセージを
下さった方、ありがとうございます!
喧嘩腰も大好きなのですが、実はこういう沖→土→近で銀さんが
抜け道なんだか底なし沼なんだか罠なんだか、なぐじぐじしたのが
結構好きな私です。こういうのも有りでしょうか?
お気に召したら幸いです!

Y子ぴょん→そうです、閨の中でも銀さんは「多串くん」呼びです。
でないと土方が構えちゃうってのもあるし、銀さん的にも真選組の
文化の中に入るのは不本意でしょう、ってことで。

結構此処にいらしてくださる方は銀土好きなのかしら?
私も色物ばっかり書いていますが、本命は銀土です。土方総受け。
陸奥は総攻め。
銀土以外に好きな土方受けカップリングとか教えてもらえたら
参考にしたいなあ。




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