銀の鎧細工通信
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| 2005年01月17日(月) |
蛍 (追い出され銀土ガード下) |
たしん。
土方が縁側で煙草を呑んでいると、沖田がじっと土方を 見据えながら無言のまますすす・・・とゆっくり襖を閉めた。
「・・・(イラッ)」 土方の眉が片方だけ跳ね上がり口元が引き攣る。 「おい総悟ォ!!煙てぇなら口で云いやがれ!! てめーは妖怪かあ!」
「・・・・・・」 無言のまま襖の向こうに沖田が正座で座っている影だけが映る。 その顔は無表情から、にたり、という黒い笑みに変わり、 横に居た山崎は「うわあ・・・」と思いそっと距離をあけるのだった。 (ほんとこの人、副長を敢えて苛々させるの得意だなあ・・・) 沖田の思う壺にはまり込み、襖の向こうでは土方が気炎を 上げて煙草をすっぱすぱと吹かしている。
すると沖田がどこからか団扇を取り出し(真冬だというのに)、 細く開けた襖の隙間からはたはたと土方の方へと風を送る真似をする。 土方の目が座り、毛を逆立てた猫のごとく素早く団扇を 奪い取り、襖に投げつけ、「こンの座敷童子!」 と怒鳴ると、背中を丸めてぷいと勝手口へと向かって行った。
声を出さずにぷるぷると打ち震えて笑っている沖田に対し、 山崎は顔を覗き込む勇気は無かったが、 「あれでも気を遣って外で吸ってんスから、あんまり 意地悪しないでやって下さいよ」 「意地悪?」 沖田はくるりと振り向くと一瞬だけきりりとした表情をしたが、 不意ににたり笑いを浮かべる。 山崎は声も出せずに「ヒイッ」と慄き、背筋には鳥肌が浮かんだ。 冷静を努め「た、隊長、ご機嫌ですね」とだけ云うと 沖田ははたっと真顔に戻り、口先だけで「ひっひっひ・・・」と 云いながら部屋を出て行ってしまった。 今更慣れっこである、疲れもしないが何とも微妙な心持で山崎は 「メシの支度でもしよ・・・」と云いながら肩をぐるりと回して 炊事場へと向かった。
がらら・・・ばしん。
「っておいィ!?ここ俺んちですよね?!何で蹴り出されてんの俺? ねえ何で?ちょっとおオオ神楽ちゃん?」 青い顔をし、廊下で顔を地べたに着け、蹴り出された格好のまま のびている銀時は虚ろに吠える。 「・・・黙るアル。ただでさえ無い生活費パチンコですった挙句、 残りも自棄酒でスッカラカンにしてる奴を、甲斐性無しって云うって 姐御云ってたアルね。こンのかいしょおおおなしいイイイ!!」
めきめきめき・・・・
「っわーーーーーーーー!!わーーーーーっ!! 神楽タンマ!!戸を壊すな!ソレ、戸口から外したらただの板だから! 板だか・・・っやめてえええエエエ」 ぐしゃ。めこ。
「今日のおまんま代稼ぐまで帰って来なくていいアル」
と云い放つと神楽は銀時を潰している戸板を元に嵌め込み、 ぴしりと閉めた。
「あいつ・・・今度は何をテレビで見たんだ・・・」 ぶつぶつぼやきながら銀時は二日酔いが6倍にはなった痛む頭を 抑えてふらふらと立ち上がる。
「・・・長谷川サンとでも呑むかな・・・やっぱり迎え酒だよ、うん」 と云う足元はよろついている。
ガード下の呑み屋。 片方は勢いよく、片方はへろへろに、暖簾をくぐり、 「おやじ酒!」 「おやじ〜酒ェ」 「あん?」 「うん?」
「・・・」 「・・・」 先にふい〜と目線を逸らし、丸椅子をずるずると屋台の端まで 寄せて背を向けたのは銀時だ。 「ぅおい、銀髪。何だてめェおいコラ」 いつもより数倍開ききってギラついた目に加え、声までドスがきいて 煙草で擦れた声が重い。機嫌が悪いのは誰の目にも明らかだった。
「ん?ああ多串くん。金魚はどう?相変わらず大きいんでしょ?」 屋台の端っこのほうから死んだ魚のような目でうろんに答えてくる。 (・・・ゴッ) 土方から赤い気流が噴出したかの様に見えた途端、彼は 銀時の首根っこを捕まえ 「まあ、こっち来いや」とずるずる銀時を隣まで引き摺り出した。
観念した銀時は土方から貰い煙草をして二人で吹かす。 「どしたのよ多串くん、血相変えて」 「お前こそ二日酔い丸出しの顔しやがって・・・っていつものことか」 「失礼だな多串くん、僕はそんな人間じゃないぞう」 「うっせ、黙れ。死ね。ばーかばーか」
そっぽを向いたまま棒読みでツッコミを入れてくる土方は本当に 分かりやすい。 「追い出されたんでしょ」 「ん何ィ?!」 日頃は無愛想でポーカーフェイスのくせに怒った顔や不機嫌な顔だけは 表情が豊かである。 (あ〜この人の他の表情がもっと見たいな〜) 銀時の性悪心がぬうと首をもたげる。 (違う表情、もっとさせてみたいな〜) こうして二人はいつものパターンに入り込む。 喧嘩腰のからかい合い、心の隙を突き合う様な遣り取り。 それはスリリングで甘い。苦い。酸っぱい。
(ほんと大人気無いねェ、俺も)
「にやにやすんな、気持ち悪りィ!」 「多串くんは猫みたいだねェ」 といいつつ艶のある黒髪を撫でてやる、土方は真っ赤になって その手を振り払い、「何だそりゃ、ほんっと気持ちわりーな!」と 口をぱくぱくさせて漸く云い放つ。
酔った視界におでん屋の蒸気で更にふわふわもやもやと霞がかかる。 「あ〜酔っ払ってきた。気持ちいいな〜、多串くんとこのまま 一緒に居たいなあ〜」 ふにゃ、と笑って云ってみると 「何莫迦なこと抜かしてやがる・・・」 と口をへの字にひん曲げて土方は答える。頬が赤いのは酔ってる所為だけ ではない、あれだけ隊士に信頼されていながら分かり易い表現には 本当に弱いのだ。それにどんな含意があろうとも。 (たんじゅーん) 銀時はにやりと笑ってまた煙草を深く吸い込む。 土方はそれに気付かない。大して強くない酒をちびちび舐める。
「あ」 「おっ」 「山崎さんも・・・お迎えですか?」 「うん。新八くんも大変だねえ」 「ま、お互い馴れっこでしょう」 「そうだね」 夜に出くわす二人の遣り取りも慣れたものである。 「・・・でも、なあんか楽しそうですよね・・・」 「うーん・・・声かけ難いな」 ガード下の暗闇で赤提灯と蛍のような小さな灯りがゆらゆらしている。 暖簾の中で肩を寄せている二人は、見る度に近くなっていくようだ。
「どうしよっか」 「銀さんが帰ってこないことは結構有りますから、僕は放っておいて いいんですけどね。山崎さんは連れて帰らないとまずいんですか」 「いっやー・・・俺んトコも・・・別に・・・」 山崎は顎をさすって答える。 二人はちろりと互いを見遣って、 「子供じゃありませんしね」 「んー、全くだ」 と云い合って「じゃあまた」と手を振って別れた。
蛍火がゆらりゆらりしている。
(このこと云ったら隊長機嫌悪くなるだろうなあ・・・ それは面倒だから・・・黙っとくか) (神楽ちゃんがまた凹みそうだなあ・・・まあ明日になれば 忘れるだろ)
二人の気苦労を他所に、二つの蛍は機嫌も上々に飛び交うばかり。
((早く帰ってきて下さいよ))
END
ギャグからラブラブに。 むふん。土方がめごいんですよ奥サン!
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