銀の鎧細工通信
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2004年12月19日(日) 願い (ハウルの動く城)

身寄りは魔法使いの叔父さんだけだった、
その叔父さんもあちこちへと忙しく飛び回り、
ぼくはいつもひとりだった。
たまに帰ってくるとぼくに魔法を教えてくれた。
誉めてもらえると嬉しいから、いつもひとりで練習を積んだ。
「ハウル、凄いじゃないか。お前には才能があるね」
そういって暖かい手で頭を撫でて、にっこりと笑ってくれる叔父さん。


ある日叔父さんは帰ってくる予定の日に帰ってこなかった。
ずっと眠らずに待ってた。
部屋の隅っこ、ひとりで膝を抱えて何日も、何日も、
何日も、季節が一巡りしても叔父さんは帰っては来なかった。


頭の中で声がする、「お前に才能がないから叔父さんは見捨てたんだ」
「お前は美しくもないし、愛されないから叔父さんは帰らないんだ」
やめて。やめてよ。叔父さん助けて。
ぼくに、力が、あったなら。
叔父さんは帰ってきてくれる?


ふらふらと立ち上がって小屋を出た。
星が輝いていて、風がそっと吹いていて、さみしくてさみしくて、
もう涙も出なくって、うろうろと歩き回っていたら声がした。
いつもの声じゃない。
「よう、ハウル?変わった名前だな」
辺りを見回しても誰もいない、ただ草原が広がっているだけ。
「誰?何処にいるの?」
「お前のすぐ傍だよ。なあハウル、お前欲しいものはあるかい?」
「力が欲しいよ、魔法の才能が欲しいよ、
叔父さんに帰ってきて欲しいんだ。ひとりぼっちでさみしいのはイヤだよ」
「そうか、それならおいらと手を組もう、力をあげるよ」
「本当?君はだれ?」
「おいらはカルシファー、火の悪魔さ」
「あくま・・・」
「怖いかい?でも契約さえ結べばおいらとお前は一心同体、
いつも一緒だし力も手に入る」
「カルシファーはぼくと一緒にいてくれるの」
「そうさ」
「じゃあそうしよう、もうさみしいのはいやなんだ」
「よしそうしよう、お前に力をあげよう、その代わりおいらにも
何かくれよ。そうすれば沢山の力をあげることだってできるさ」
「何をあげればいいの?ぼく、何にも持っていないよ」
「あるよ、お前のあったかい小鳥みたいな心臓」
「いいよ、あげる。だから、いっしょにいて、ぼくといっしょにいて」
流れ星が降って来た。手の中で虹色に輝く光はとてもきれいで、
ああきれいなものはいいんだな、美しいものはいいなあ、と思った。
「おいらを飲み込みな」
「飲んでしまうの?こんなにきらきらきれいなのに」
「大丈夫、お前の中でもきらきらしているよ」
「本当?ならぼくもカルシファーみたいにきれいになれるかな」
そう云って飲み込んだ。
熱くって苦しかった、でもうれしかった。


「ハウル!待ってて!未来で待ってて!」
声がして振り向くと、星みたいな銀色の髪の女の子が叫んでいた。
知らない人だったけど髪も目も、きらきらしていて、本当に美しかった。
訳が分からなかったけど、きれいなことはいいことで、力があることは
ひとりじゃなくて、うれしいと思った。







何年もたった。
戦争があちこちで起こり、止むことを知らず人は殺し続け死に続けた。
マルクルを見つけたのは燃えさかる瓦礫の街。
4歳くらいの男の子がひとりぼっちで瓦礫の中で泣いている、
黒い羽をたたんで傍に寄った。
ぼくを見ると男の子はますますわんわん泣きながら飛び込んできた
「みんないなくなっちゃったよう!なくなっちゃったよう!
お父さんもお母さんも、おうちも全部、ねえお兄ちゃん!
何処に行ったの?!みんな何処に行っちゃったの?!
ぼくひとりだよう!」
そう云ってわんわん泣いた。
「泣かないで、君の名前は何ていうの?」
「マルクル」
「マルクル、ぼくといっしょに行こう?」
頭を撫でて、にっこり笑った。
またこれでひとりぼっちじゃなくなる。
ぼくが叔父さんにもなれるかもしれない。
胸がどきどきした。



それからは逃げ続けた。
みんな寄っていっても、ぼくの頭を撫でて誉めてはくれない、
笑ってくれない。ぼくの力を利用することしか考えていない。
戦争は大嫌いだ。ひとりぼっちになってさみしいから。
マルクルはかわいそうだ。
荒地の魔女は優しくしてくれた、でもぼくが他の人といっしょにいると
いつも凄く腹を立てた。ぼくが彼女をいつも誉めて、優しくしてあげないと
怒った。だから逃げた。
彼女もさみしいんだ、かわいそうだ。


魔性の力、悪魔の力、でもぼくは力を手に入れた。
でも叔父さんは帰ってこない。
ぼくは強くてきれいじゃないと意味がないんだ。
見捨てられるのが怖くて、だからいつも先に逃げた。
ひとりは怖いよ、怖くてたまらない。
置いてけぼりにされてさみしいくらいなら逃げよう。
ぼくの力だけ欲しがって利用することしか考えない人からも逃げよう。
戦争で人殺しをすることからも逃げよう。
怖いことからはみんな逃げよう。



誰か、ぼくの頭を撫でてにっこり笑って、安心させてくれないかと
いつもいつも願ってる。






END

オチなくてすみません。
ハウル観て来ました、愛の物語でしたね。
なので色々妄想してみた。

ハウルがさびしがりやで自分に自信がなくって臆病で弱虫で、
でも鳥になった時の残虐な目つき、
そして子どもの頃のまま時間が止まってしまっているのに
ええかっこしいで、愛しかったです。
マルクルはひたすらめんこかった・・・子どもキャラを愛しく思うこと
なんて滅多にないのになあ。
ソフィーはおばあちゃんになったことで、初めて自分に自身が持てて、
そうして強くなって、持ってた力を発揮しまくりで、たくましくて
しっかりしてて、優しくなって、素敵でした。
荒地の魔女が相当愛しくて仕方がなかったです、大好きです。
カブも健気で可愛かった・・・ら皇子様だった!わあ。
お師匠様も最高にいい女です。お稚児趣味なとことか・・・。
カルシファーかわいかった、めんこい・・・そして頼りになる。

話の内容はちょっと詰め過ぎで、展開早かったしもっと時間かけて
練りこんで欲しかったけど、ひとりひとりが懸命に生きることの
はかりしれない愛情を感じました。
エゴでも何でも、それでもしっかり生きることって、うれしいね。
そういう中で他人と一緒に生きることってうれしいね。

でもって戦争がものすっごく怖かったです。怖くて泣きました。
ハウルが夜な夜な戦いに行ってたのは悪魔の力のせいなのかな・・・、
そこが分からなかったですよ。

映像も千尋みたいにCGが浮いてなくて、違和感なく観られました。
音楽もねー、久石節全開で、同じメロディのアレンジ違いっていう
シンプルさが良かったなあ。

声も、全然気になりませんでした。美輪さまはええのう。


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