銀の鎧細工通信
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2004年12月06日(月) タリヨンの原理/城 (高そよ)


目には目を、歯には歯を。
憎しみには憎しみを、怒りには怒りを、
牙には牙を、呪いには呪いを、恨みには恨みを、
後悔には後悔を、死には死を。



思っていた以上に手薄な警備に驚いたほどだ。
「はっ、お飾り将軍が。惨めなモンだぜ」
警備兵の背後に回って小刀で喉を裂いた。
声を出す間もなく与えた死。

城の外堀の巡回兵が回ってくる前に壁を乗り越えた、
赤外線スコープひとつあれば掻い潜れる要塞。
これがかつて命を賭けて、多くの仲間を死なせてまで
戦ったこの国の本拠地かと思うと反吐が出る。
高杉は忌々しい思いにひどく苛立った。
ヅラも愚かだ、ちまちま攻撃などしている暇があったら
ここを狙えばいいのだ。
あいつらが持っている爆弾の総量を、四方から投げ込めば
この城は陥落する。
きっと驚くほどに容易く、あっけなく。


そうしないのは、将軍を殺したらいよいよこの国の実権を
天人が掌握するからだ。
ならば飾り物の張りぼてでもあった方がマシというもの。
本当に何もかもが不毛だ。


高杉は暗闇に潜み、人気の無い城に入った。
構造は城仕えの女中から聞き出した、そして殺した。
さんざん死んでいるのだ、今更少々の犠牲などに何の意味があろう。
自分を含めてもう死んでも意味なんて無い。
きっと昔死んだ奴らの死にも意味なんて無かったのだ。
将軍の首が取れなくてもいい、自分が死んでも良い、
ただやりたいようにするだけだ。
将軍の妹の首でも河原に飾って、そうしたら将軍はどう出るだろうか、
そうも考えてはいるが、きっと何も変わらないだろう。
今更、攘夷思想によって妹が殺されたところで将軍自体引き返せない、
天人に反旗を翻しても勝ち目は無いのだ。
ふっと虚しくなってきた。
俺は何をしているんだろうか。
ここまで分かっていながら、何故。

まあいい、もういい、獣の呻きに従うまでだ。
無意味には無意味を。
何もかも上塗りして、無駄に無駄を重ねて、そうやって生き永らえてきた。
きっと、本当は壊せるものなど大した物ではないのだ。
どうでもいい。



美しく手入れされた庭には潜む場所が無い。
一息で廊下に滑り込み、曲がり角に身を飛び込ませた。
京に流れてきた元お庭番衆から潜入の話をよく聞いていたが、
まさか実践する日が来るとは。
軽い足音がして、高杉は息を潜めて気配を殺した。
静かに襖を開けて、庭に様子を伺いながら少女が出てきた。
「・・・?」
少女は柄は質素だが、かなり上質な着物を着ている、女中の類ではない。
そもそもこんな時間に表に出てくること自体不自然だ、
ましてや忍び足であたりをきょろきょろと不慣れな動作で窺いながら。
一瞬窺う動作で少女の顔が見えた。
月の無い晩でも夜目は利く。
高杉の口角がつり上がった。

こりゃいい、まさか自分からお出ましとはな。

時の将軍の妹、そよ姫。
小柄で清楚、聡明そうな面立ちに無垢な雰囲気、明らかに低い身体能力、
そんな奴が夜中にこそこそと出てくるとは願ってもみない好都合だ。
しかし一人で、一体何をしようというのか。
将軍家の者は一人になることなど許されない。

面白れェ、せいぜい首を切り落とすまで見ていてやろうじゃねえか。

そよは手にしていた草履を地面に置き、静かに履くとおずおずと
小走りで走り出した。

城で働く者が使う通用門の方だ、あの小娘、もしや。

通用門の前には当然門番がいる、そよはそれを見て植木に隠れた。

・・・そういうことか。

高杉は声を出して笑いたい衝動にかられ、堪えるのに一苦労した。
体の中で暴れまわる獣を押さえつけ、音も立てずにそよの横に
身を滑り込ませた。
咄嗟に悲鳴を上げそうになったそよの口を骨張った手で塞ぐ。
「お前、こっから出たいんだろう?」
たっぷりと甘い毒をこめた声で囁く。
そよは目を見開いた後に、じっと高杉の目を見つめ、そして頷いた。
高杉は手を離し、植木から飛び出すや否や門番の背後に回り、
仕込み刀の柄で昏倒させる。振り向いて手招きをした。
そよは辺りを見回しながら高杉の方へと姿を現した。
門の横に掲げた提灯で照らされた姿は、本当に華奢で、真っ白な肌、
手入れの行き届いた髪、そのひとつひとつが浮世離れしていた。
将軍家の人間をこんなにも間近で見るのは初めてだった。

細胞の一つ一つが憎悪でざわめき立ち、残虐な色に染まる。

目には目を、歯には歯を。
憎しみには憎しみを、怒りには怒りを、
牙には牙を、呪いには呪いを、恨みには恨みを、
後悔には後悔を、死には死を。
そいつが道理ってもんだろう。なあ?


通用門の内鍵を斬って壊し、小さな軋みを上げて扉を開けた。
「さあどうぞ、・・・そよ姫?」
潜めた低い声は自分でも可笑しいくらい道化じみていた。
はっと顔を上げたそよの目は、黒くて、暗く澄んでいた、
夜の湖のように。
その佇まいも、周囲も、しんとした夜に、
高杉の体の中だけが赤黒く渦を巻く。

「お早く、じき見回りが来るんでね」

猫なで声にありったけの憎悪を、呪詛を。
浮かべた薄笑いにありったけの殺意を、憤怒を。



面白いことになった。
無意味の上塗り、行くところまで行ってやろう。
髪の先まで感情が流れ込み、体ごと破裂しそうだ。





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高そよです。
銀迦ちゃんにお言葉を送られた方、よもやこんな処でMOEを発動
されているとは思ってもいらっしゃらないでしょう。
申し訳ありません、発動してしまいました。
城から出るまではほんの序章、我ながら雑な文章です。

続きを書ききれるのか、頑張れ私。


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