銀の鎧細工通信
目次|前|次
雨音が心地よい。 柔らかな水音が鎧の中の空洞で、あまく反響する。 そっと胴体部分に耳を当てて聴き入る。 人々のざわめきとは違う質のものなのに、 有機的な音色なのだ。命を満たすような。
しかし鎧は、今はもうただの鎧。 もう高くて甘い声で話すことも無い。 かしゃかしゃと音を立てて動くことも無い。 あの救援信号のような不吉で悲しい光も放たない。 そこに命の片鱗も感じさせない、無機質な鉄の鎧。
いつも、離れずに一緒に居た少年は何処に行った? この鎧の中に宿っていた少年の魂は何処に行った? ロイはぼんやりと思ってからげらげらげらげら笑い出した。 そうだ、ああそうだ、私が殺したんだった。 それとも勝手に死んだのだったか。 元の体を取り戻して駆け去っていったのだったか。 いや、やはり多分私が兄を殺して、その兄の呪いを鎧から 拭い奪ったのだった。
埃っぽい資料にうずもれて、鎧はぽつんと座っている。 小さな光り取りの窓から差し込む光筋に鎧は鈍く光っている。 大佐はほとんど一日ここに居る。 食事も睡眠も摂っている様な、いない様な。 彼自身あまり覚えていない。 沢山の資料沢山の研究書、高々とそびえる不毛な塔。 登ったって真理にゃ行き着きゃしないぜ、どこかで声がする。 誰も呼び戻せやしないぜ、何も帰ってこない、 もう終わったんだ、どこかで声がする。 始めのは兄の声だ、後のは殺された盟友の声だ。 こうして鎧に耳を澄ますと、中の闇から聞こえてくるのだ。 驚いて鎧の胸のパーツを外すと、 そこには乾いて錆色になった血の跡がべったり。
そうだそうだ、兄も弟も盟友も、私が殺したのだった。 大佐はぽんと得心して手を打ち、また鎧にぺたりと耳を当てる。
END
妄想とも狂気ともつかぬ書き方ですが、 エドは軍部命令で戦争に行って死に、その死を知らせる前に ロイはアルの血印を消した、ということを前提に考えています。 別に何の意味も無いんですけどね。 何だか雨の音を聞いていたら思い付きました。 きっと鎧の音は気持ちよく雨音を反響するのだろうな、と。 それが何で叙情的なロイアルvとかじゃなくてこうなるのか。へへ・・・。
|