銀の鎧細工通信
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2004年12月04日(土) 虚空(鎧と大佐)


雨音が心地よい。
柔らかな水音が鎧の中の空洞で、あまく反響する。
そっと胴体部分に耳を当てて聴き入る。
人々のざわめきとは違う質のものなのに、
有機的な音色なのだ。命を満たすような。



しかし鎧は、今はもうただの鎧。
もう高くて甘い声で話すことも無い。
かしゃかしゃと音を立てて動くことも無い。
あの救援信号のような不吉で悲しい光も放たない。
そこに命の片鱗も感じさせない、無機質な鉄の鎧。

いつも、離れずに一緒に居た少年は何処に行った?
この鎧の中に宿っていた少年の魂は何処に行った?
ロイはぼんやりと思ってからげらげらげらげら笑い出した。
そうだ、ああそうだ、私が殺したんだった。
それとも勝手に死んだのだったか。
元の体を取り戻して駆け去っていったのだったか。
いや、やはり多分私が兄を殺して、その兄の呪いを鎧から
拭い奪ったのだった。

埃っぽい資料にうずもれて、鎧はぽつんと座っている。
小さな光り取りの窓から差し込む光筋に鎧は鈍く光っている。
大佐はほとんど一日ここに居る。
食事も睡眠も摂っている様な、いない様な。
彼自身あまり覚えていない。
沢山の資料沢山の研究書、高々とそびえる不毛な塔。
登ったって真理にゃ行き着きゃしないぜ、どこかで声がする。
誰も呼び戻せやしないぜ、何も帰ってこない、
もう終わったんだ、どこかで声がする。
始めのは兄の声だ、後のは殺された盟友の声だ。
こうして鎧に耳を澄ますと、中の闇から聞こえてくるのだ。
驚いて鎧の胸のパーツを外すと、
そこには乾いて錆色になった血の跡がべったり。



そうだそうだ、兄も弟も盟友も、私が殺したのだった。
大佐はぽんと得心して手を打ち、また鎧にぺたりと耳を当てる。







END

妄想とも狂気ともつかぬ書き方ですが、
エドは軍部命令で戦争に行って死に、その死を知らせる前に
ロイはアルの血印を消した、ということを前提に考えています。
別に何の意味も無いんですけどね。
何だか雨の音を聞いていたら思い付きました。
きっと鎧の音は気持ちよく雨音を反響するのだろうな、と。
それが何で叙情的なロイアルvとかじゃなくてこうなるのか。へへ・・・。



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