銀の鎧細工通信
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| 2004年12月03日(金) |
タイムダスター(数年後、沖田と土方と銀さん) |
「ってなわけなのよ。どうお?多串くんトコの坊やは」 「煩い奴だな。俺はアイツがほんっとに小せェ頃から知ってんだ、 今更どうこう思うか」
屯所の近くの安呑み屋、銀時と土方はたまにここで呑む。 大半は銀時が土方を半ば拉致する形で。 そして、時々土方が無理矢理銀時を引き摺って。
塩茹で枝豆を食べながら土方はそっけない。 隣では銀時がいつもよりも覇気の無い表情でイカの一夜干をつつく、 土方の好みで、添えられたマヨネーズはかなり多めだ。 「うっそだあ、多串くんは都合悪い時に人の目ェ、見ねーもん」 「何ィ」 図星をつかれて気色ばんだ土方をやりすごすために銀時は 「おっさーん、白子ポン酢追加ねー、後マイタケのてんぷらー塩で」 などとつまみを追加した。 土方はふてくされながら煙草に火を点ける。 この一呼吸も、付き合い(土方は腐れ縁だと云う)が長くなってきて、 双方自然に身に付いたものだ。
「んで、どうなのホントのところ」 競うように手酌酒な二人にしては、珍しく銀時が土方に注いでやる。 もうもうと煙草の煙にまみれて土方は不味い表情をしている、 つつけば何か出てくる顔だ。 「ほれほれ、云っちゃいなよ」 銀時は煙にまこうとするかの様な土方の煙草を取り上げ、自分で 吸い始めた。土方は観念したのか、杯を勢いよく仰いだ。
「うちは野郎ばっかりだからな、チャイナ娘のこたァ分からねーが、 ・・・総悟の奴はなァ・・・・・・・」 云いかけて押し黙る。 目だけで銀時は続きを促す、土方は云いよどむ。
「あいつは姉貴似でよ、17くらいで成長は止まったんじゃねーかと 思ったんだがなァ・・・」 「あーあ、遠い目しちゃってェ」 「てめーが「ガキどもの成長期が複雑なんだあ」とか云って 泣きついてきたから付き合ってやってるんだろうが!! もう今日はてめーの奢りだからな!おい親父!酒追加で!」 銀時のニヤニヤ笑いが凍りつく、 「泣いてねーよ!っていうか多串くんのが給料いいじゃん!」 「黙りやがれ銀髪!親父あと焼きソバな!マヨネーズ付けてくれ!」 瞳孔の開いた土方に、銀時は呻き、店の親父は「あいよ、いつものだね 兄ちゃん」などとのどかに応じている。
「くっそー・・・だってよ?!あんなただの大飯ぐらいのクソガキがよ? ありゃあEかFカップのブラだぜ!?そんなの有り?!」 「んなこと云ったってなァ!花見でも祭りでもそのクソガキと一緒に なって騒いでたクソガキがだぜ!?今じゃ俺よりでかくなって、 剣の腕も腹黒さも倍に成長してやがる!気が気じゃねェ!!」 開き直った二人は大声でどんどん呑み、話しはじめた。 「思春期のガキじゃあるめェし、洗濯物ごときでグダグダ云うんじゃ ねえよ、情けねェ奴だな!」 「お前にはわかんねーよ!こちとら、し、思春期のガキが家に二匹も いるんだからな!」 「気持ちわりーな、思春期で云いよどむな」 「いや、気持ち悪くない。何故なら俺の心は永遠の少年だから」 「だからそれが気持ち悪いって云ってんだよ、いい年こいて・・・」
「そうなんだよなあ、もういつの間にかいい年だよなァ、 全然気付かなかったんだよ、夢中で走ってたからよ」 「あー・・・まあなァ。てめーの年何ざあんまり気にしねェからな」 「だろォ?は〜・・・酒が染みるなあ。ったく吃驚だぜ」 「ほっときゃ年は取るもんだと思ってたがな」 土方は云いながら焼きソバ(マヨネーズがけ)に更にマヨネーズを かけている。 「自分のことで云えばそうなんだがよ・・・って多串くんソレ俺も 食うんだから遠慮しろよ、黄色いの」 「砂糖食ってろ、砂糖」 しっしっと犬か猫にでもやるように手で払った後に、机の端の調味料 のところにある砂糖のビンを指して云い放つ。 「いいオトナが恥ずかしいぜ、多串くんよォ・・・」 「おめーもな」 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 二人は虚空を凝視して、同時に「は〜あァ・・・」と情けない溜息をつく。
伸びる手足、すくすくと。 高かった声も落ち着いて、やることなすこと変わらないのに見てくれだけは 「一著前の女になりやがって」 「一著前の野郎になりやがって」 ハモった二人は、くるりと向き合って 「呑むか」 「おう」 やることなすこと、見てくれも変わらないいいオトナは 酒でも呑む。他愛ない話をつまみにして。 それが不満なんじゃない。 悲観的にもならない。 もの寂しいような、眩しいような、嬉しいような、 身近な人間の成長は何とも云えない複雑さ。 兄貴面してた自分への気恥ずかしさ。こそばゆさ。 「あ〜俺らもまだまだ青臭いねー」 「情けねェがその通りだなー」 向き合って、噴き出した。 ちいさな、笑いがどちらともなくこぼれる。
散々呑んだくれて(結局勘定は二人で割った、銀時の持ち合わせでは 足りなかった)、ふらりふらりと二人は夜道を歩く。 冷え切った空気がほてった頭と顔に気持ちが良い。
ふっと背後に影がかかる。 「お、居た居た。土方さん、やっぱ万事屋の旦那と呑んでたんですかィ」 涼やかだが、低めの響きの声。 「おー・・・う総悟ォ」 振り返るとすらりとした青年が立っている。 顔の造作が柔らかいので威圧的な印象は無いが、きっちりした隊服に 帯刀の姿は実に凛々しく、立派なものだった。
新八はまだ俺と、俺よりも少し低い多串くんほどの背は無いが、 こいつはもう俺といい勝負だな。銀時は思った。 「ほいじゃーあ、またねェ〜多串くん」 手をひらひらさせて銀時は万事屋の方へ向った。
「うへェ、二人ともベロベロですねィ。弱くなったんじゃないですかい」 沖田がどちらともなく発した言葉に、 銀時と土方が瞬時に振り返って 「まだそんな年じゃねェ!!」 大声で、云った。
沖田はあっけにとられた後に、くつくつと笑いながら 「そういうこたァ、年くった人間ほど云うんでさァ」と呟いた。
銀時はまた万事屋への帰り道に向き直って歩みを進めた。 背後から「総悟!爺さん扱いすんじゃねェ!お前なんざまだまだ ハナタレなんだよ!」などと土方が怒鳴る声が聞こえる。
また少し笑みが漏れた。「だよねえ、多串くん」銀時はそっと呟いた。
END
前回を踏まえての成長話。 お父さんな銀さんと、お兄ちゃんな土方。 神楽ちゃんはEかFカップと想定してみました。
いつまでたっても青臭い、でもいいオトナ。 楽しく酒でも呑みましょう。
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