銀の鎧細工通信
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2004年11月30日(火) 蝶々のはばたき(数年後、銀さん父の気持ち)


・・・そりゃあ、あんだけ食ってりゃ、育つわな。




和室で寝て、起きて、外の天気を見ようと思って窓を開けたら。
ぷらぷらとでかい半球状のもの。
あれ?ああ朝から何だか妙な気分だ。

「おはよーございまーす、ってあれ?銀さん珍しく早起きですね」
「おー・・・新八くんかい・・・」
応接間から、開け放した襖の向こうに銀時がベランダに立っているのが
見えた。結野アナのニュースの前から銀時が起きているのは珍しい。
しかし、反応はあまりにも清清しくない。

「どうしたんですか・・・そんなショウユ顔になっちゃって・・・」
新八は和室の方へ歩み寄った。
銀時が棒立ちになっている前に干してある、洗濯物。
「何も無いじゃないですか、また二日酔いっすか」
きょとんした新八も、改めてみると背が伸びて、今じゃ銀時と
あまり目線も変わらない。
がしがしと頭をかいて「あ〜・・・」と煮え切らない声が出る。

「お茶でも入れましょか?」
「いやいい・・・何かパフェ的なもんが食いたい・・・」
「無えだろ、んなモン。あるのはチクワと海苔だけだろーが」
新八はいつも通りのつっこみ(というか真実)を指摘しただけだった。
はたと見ると、
「ちょ・・・っつ!!なんか目ェうるんでますよ銀サン?!!!」
「いやね、何でもないのよ新八くん」
「待てよオイ!!何でもないっつうかよ!!
分かりましたよ!甘いもの買ってきますから!ね!?」
云うなり新八はソファにかけてあった銀時の着物から財布を取り、
がっちり握り締めて表へと駆けていった。

「ああ・・・お妙に似てきたなあいつも・・・」
がっくりとうなだれて、銀時は時の流れを感じた。
寂しいとかじゃない、でも何だか。


もやもやする・・・。


「騒がしいアル〜・・・あれ?新八は?今、声したネ」
もそもそと押入れから神楽が出てきた。
寝起きは相変わらずあまり良くない。ぼさぼさのピンクの髪。
「銀ちゃんオハヨ」
「あ〜・・・ああ、おはよ」
「?銀ちゃんショウユ顔になってるアルよ」
云いながら銀時の横を通って顔を洗いに行く神楽、背は勿論背は伸びた、
髪も伸びた。ふっくらした子ども特有のほっぺたもすっきりした。
よろよろと神楽の後を追って台所(兼洗面所)へ向う。
髭をそるときに見てた頭のてっぺん、万事屋に転がり込んできたときは
胸の辺りだった。今は、肩の辺り。
何で気づかなかったんだろなあ・・・・。
こいつら全然云ってる事もやってる事も変わらねェんだもんなァ・・・。
鏡を覗き込んでも、自分に変化は無い。
そりゃそうだわな、あちらさんときたら成長期だもの。
「溜息ばっかり気持ち悪いアル」
「てめっ、歯ブラシくわえたまま喋んなっていつも云ってんだろが、
泡が飛ぶ、泡が!」
「銀ちゃんパピーみたいネ」
「・・・・・・・・・・・・・・あ?」


もやもや?何このもやもや?あれ?パピー???


「はー疲れた、銀さーん買って来ましたよ〜、だんごと饅頭ー」
「新八、朝からパシリ行かされてたアルか」
「ああ神楽ちゃんおはよう、いや何か銀さん変でさあ」
「銀ちゃんが変なのはいつものことアル」
「まあねえ〜」
髭剃りを充電器に戻しながら、じっくり見た。
伸びた等身、声も変わったか?
しみじみと銀時の駄目っぷりについて語り合う二人を尻目に
銀時はまたベランダに出てみた。


大きさはなァ、何か会ったときから下手すりゃお妙より
あった気もするんだよなあ・・・3巻の表紙とかなァ・・・。
でもなあ、この色はなァ・・・。どうなのよ、神楽チャン。
そういやあこの間お妙とおりょうちゃんと買い物行ってたなあ。
・・・お水の勝負下着買いに付き合うんじゃ仕方無ェか・・・。


いつの間にか呑み友達になってる近藤と坂本に夜中呼び出された、
図体のでかいムサイ野郎が二人でストーキングというのはあまりにも
滑稽で、いっそ切ないものすらある。
「銀時ィイ!!聞いてくれよ!お妙さんが・・っつ!!」
「いんや近藤、おんしはまだいいぜよ、わしゃあ、わしゃあ・・・っつ」
「ああ何だよ何だようるせえな!」
「坂本、おりょうさんが真っ赤ってェのはいいじゃねえか、似合うよ、
でもお妙さんが紫は・・・・・・・!」
「紫ばゆうたかて淡いもんじゃろが!うちの陸奥なんか濃い紫とか
黒ばっかりじゃァ!ほぼ黒じゃあああ!!」
「は?もしもし?何?何なのあんたら、何の話?」
「下着の話じゃあ!!」
「下着の話だああ!!」
がばあと顔を上げながら怒鳴る二人のムサイ大男は複雑な涙を流していた。
「・・・帰っていい?」
げっそりとしてくるりと向きを変えた銀時の手を、それぞれが掴んだ。
両手を押さえられたまま顔だけ後ろに向ける。
「いや・・・いいんだ、何色でも。全然構わないんだ、なあ坂本」
「おう、どんだけ派手じゃろうと透けていちゅうと構わんぜよ」
「っつ・・・!透けているのはまずい!!それはまずい!」
「嘘ば付くなァ!近藤、おんしゃ漢のロマンをわかっちょらん!」
「だからさ、帰らしてくんない?」
二人は銀時を引き止めたまま、複雑な涙にまみれて、ひたすら下着の
色について議論し、しまいにはそれぞれ怖い副官が迎えに来た。

今では土方と陸奥も、同じ気苦労を背負った者同士の妙な連帯がある。
「ああ、土方。久しぶりじゃな。おんしも全く難儀じゃの」
「おう陸奥さんよ、いやあんたこそ苦労が絶えねェだろうな」
二人そろって、深い深い溜息をついて、酔いつぶれたそれぞれの
大将を怒鳴る、殴る、蹴る、つねる、等々してずるずる引き摺って帰る。
「じゃあな、ああ陸奥さんよ、あんたこっち戻ってきたら屯所に
顔でも出してくれや。うちは男所帯だからあんたみたいな美人が
来てくれるとちったァ華やぐってもんだ」
「ふふ・・・全くおんしゃ口ばうまか男じゃきに、信用ならんろー」
「ははは!そう云うな、美味い酒でも仕入れとくから」
「わしは焼酎の方が好きじゃ」
「分かった、またな」
「ああ、沖田にも宜しくな」
「あんたら妙に仲良いからなあ、腹黒同士気が合うんだな」
「ふん、好きに云え。どこで沖田の奴が聞いてるか分からんぜよ」
「じゃあ俺は行くぜ。おい、銀髪、ご苦労だったな」
「坂田、世話ばかけた」
瞳孔の開いた2人と呑み潰れた2人は闇夜に消えていった。



柔らかい風にそよぐブラジャー。

これ・・・何カップだ?
そっと手を伸ばしてホック部分のラベルを見ようとしたら、
「銀さん、お茶入れましたよー!ニュースも始まりますよー!」
大声で呼ばれて、何故か後ろめたい気持ちになる。
慌てて手を引っ込めた。


うう、もやもやする・・・。二日酔いよりも甘酸っぱい、
寂しいとかじゃない、でも何だか複雑な。



でも応接間を振り返ってみれば、姿こそでかくなったものの、
何にも変わっちゃいない風景。

銀時は饅頭をほおばりながら結野アナのニュースを見る。
新八はお茶をすする。
神楽は定春を撫でている。



神楽の、立派なブラジャーは他の洗濯物に混じって、柔らかい風に
そよぐ。
蝶々が洗濯物の森に迷い込んで、またはばたいていった。






END


銀迦ちゃん、こういうイメージよ。お父さんな銀さん。
本当は大きくなった沖田に困惑なお兄ちゃん土方も書きたかったんだけど、
近藤・坂本コンビと土方・陸奥コンビ書いたらそれがあまりに
楽しくって・・・うふふ。またの機会にしようかな。
銀魂、未来予想図。
変わるものと変わらないもの、どうか皆幸せで。

金魂カバー本当に有難う!!よりによって台所に「もののけ姫」ポスター
があるのはびっくりだよ。長い付き合いになりますが、まさか
そんなミステリーが潜んでいたとは・・・。



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