銀の鎧細工通信
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2004年11月22日(月) 闊歩(ロイアル、鋼9巻によせて)


それもこれも取るに足らない狂気の沙汰。
繰り返し繰り返される狂気の。









「それじゃあなんの説明にもなってない!!」
叫んだ声は鎧の空洞の中で反響して消えた。
微弱な振動が、絶叫の余韻をびりびり、ぶるぶると伝える、
生身の身体ではない物理的な揺れだ。



兄さんは一人で抱え込もうといつもする。いつも、いつでもだ。
巻き込んだのは僕も同じだ。
苦々しい表情、堪えても激情が全身からくすぶっている、
そうロス少尉の死体からも似たくすぶり。



「そんな身体はいらないよ」


わからずやで頑固で意地っ張りな、そして臆病な兄さんに
初めて、初めてついに口にした言葉。
ようやく云えた。云ってしまった。
でも兄さんは憮然とした表情をした。
本当にわからずやで傲慢だ。
黒い服に身を包んだグレイシアさんへだって、
僕に説明だけさせて、責任だけは自分が負おうとする。
帰り際にそっと涙する彼女に傷付く位なら責任だけ、結果だけ
負おうとするなんて傲慢なんだ。
僕らにはののしられる資格すらない。

「許し」という最大の枷の意味を兄さんは分かっていない。
その重みを。
罪への対価、等価交換、それが枷なんだ。
重く冷たく声も出ず、寒々と荒涼とした闇しか見えない、
空虚さと悔恨の渦中にただ立ち竦むだけの、罪人の枷。






だから、僕は鎧なんだ。






その意味をいまだに直視しようとしない、弱い兄さん。
その意味を痛感しながら、それでも堪えて、枷ごと
立ち尽くして前を睨んでいる、大佐。
彼だって、強くはない。






兄は分かりやすい。
激情のままに振舞う、あからさまな言動。
弟は、弟は、冷静だった。
そういう兄の分まで背負うように。

「それじゃあ何の説明にもなってない!!」

彼はよく分かっている。人の死を。その横暴を。
その暴力を。滅ぶ肉体を。
戻らないことを。
帰らないことを。







アルフォンスくん、君に云い忘れたよ。


私は軍部の鑑定室で、死因となった頭部への銃創が、
解剖の必要もないくらいあいつの後頭部を潰れたトマトのように
しているのを、見たんだよ。

拭き取られていても、血臭で酔いそうになる錆びた色した電話ボックス、
君にも見せたかった。
見てもらいたかったんだ、私は、君に。







それもこれも取るに足らない狂気の沙汰。
繰り返し繰り返される狂気の。
まだまだ歯車は止まらない。
闇の闊歩は止まらない。
狂気は、終わらない。






END


もう言い尽くせません・・・!鬼才荒川弘。
そして言い尽くせぬ私のヒューズとアルへの愛。



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