銀の鎧細工通信
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2004年11月05日(金) 不吐者(エド)


ひどく天気のいい朝だった。
最近は天候に恵まれ、気温も暖かい。
寒く険しくなってくる季節を前にして、実にうららかな日和だ。

エドワードはベッドからもそりと起き上がって、
あくびをひとつ。
窓からこぼれる光が眼に眩しい。
アルフォンスはいないようだった、大方師匠の店の手伝いにでも
行ったのだろう。肉屋の朝は早い。
はっきりとしない頭で、まずそれでも考えるのは弟のこと、
そして彼の所在。
眼が覚めたらアルが唯の鎧になっているのではないかと不安になり、
眠ることが恐ろしかった夜を自分はいくつ経ただろう。
不眠症の自分とアルは何をして夜をやり過ごしただろう、
思い出せない。

ただもう安心して二人、ぬくもりを分け合って眠ることが
遠い彼方。それだけが忘れがたい事実。
はたしてその不安はもう払拭され切ったのだろうか。



エドはぼんやりとベッドの上に座り込み、
窓からこぼれる光を見た。
祈りに少し似ている。
こんなにも胸を塞がれるような祈り、けして浄化されるような
類のものではない祈り。
無力感に少しずつ押し潰されていくような祈り。

「朝だなあ・・・」それでも呟いてみる。

季節だけがいつも静かに巡り、自分たちごと世界を包んだ。
恐ろしくもあるその時間の経過を、受け入れることでしか
前に進むことも有り得ない。
どれだけ遣り切れなくとも「朝だなあ・・・」そうして
独り呟く習慣。


打ち消したくても、眼を落とす手は機械。
すがりつきたくても、傍にいる弟は鎧。

のばした手を引っ込めて、
すがりたい手を押しとどめて、
助けて、苦しい、寂しい、悲しい、声に出したい感情を
飲み込んで。
吐き出したいものを無視して。
急いで現実を認める。
急いで現実を認める。
慌てて現実を認める。




エドは着替えて表へ出て行った。






END

朝の一風景。日々を送ることの機微。

ちなみにタイトルは「ふとしゃ」でも「ふどしゃ」でも
好きに読んでください。本当は「不吐瀉」だったんだけど、
変換で、者のがいいじゃんって作った言葉なので。


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