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■ 悲しい人は良く笑う
Iさんに会いました。 Iさんは僕より三つ年上の院生です。
心理学実験の被験者を頼まれて、 実験台にされました。
「元気?」 「うん。元気だよ。ありがとう。」
元気?って言う問いは あんまり好きじゃない。 元気じゃないなんて、まじめな顔して 応えられる人がいるだろうか。
それでも僕も、彼女も お互いに訊く「元気?」
訊いた方も訊かれた方も 少し悲しいような、優しいような、 不思議な微笑をしている。
人と人は不思議。 互いに愛し合っていても、 こんな風に、互いに遠慮しあって、 悲しく、頼りない、心細い距離を保たないといけないなんて。
明るく笑って、 今回の、いわゆるパニックを 起こしたことについて話していました。 話しながらもしきりに 「大丈夫、大丈夫」と繰り返していました。
別に気にもせずに流したことでも、 「あ、でもそれは別に大丈夫なんだよ。」っと。 「いや、別にそこは気にしなかったけど」 と笑いながら言ったら、 「ひろおは感受性の強い子だからさ。 些細なことでも、いちいち断っておいたほうがいいと思って。」 っと笑いながら言っていました。
しきりに笑っていました。 かえって以前と違う、そのあまりに明るい雰囲気に 僕はなんとなく不安と悲しさを感じました。
「ひろお。ハグしてやろうか?」 「は??なんでよ?」 「いや、ハグしたくなってさ。」 「いや、だから何でよ??」 「今回、自分がそうなってさ。なんとなく 今までのひろおの気持ちが実体験として少しわかったっていうかさ。 いとおしくというか、可愛らしくなったのさ。ハグしていい?」 「う〜ん。まぁ良いけど。」
「そんじゃあ俺、ゼミ室に戻るね。」 「被験者になってくれてありがとね。」 「いやいや、別に良いよ。」 「ううん。ありがと。」 「そんじゃ近いうちにコーヒーでも飲みながら、 ゆっくり話しようよ。」 「うん。そうだね。そんじゃもう一回ハグするか?」 「え?なんでよ?ホントに大丈夫なん??」 「いいから、いいから」 「う〜ん。」
「お母さん、お姉さんだと思って、私に甘えていいよ。」
「おかんにも姉ちゃんにも甘えたことないからなぁ」
「ふふ・・。そうだったね。お前両方ともいるんだよね。」
僕らの間には恋のコの字もありません。 彼女にとっても僕にとってもちっとも恋じゃありません。 けれども僕は、彼女を愛してると思う。 そして愛されていると少し、感じる。
会ってから別れるまで、 僕らはお互いにずっと笑っていた。
2003年11月22日(土)
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