一度だけの人生に
ひろ



 静かな日々

実家から帰ってきたら
こちらはすっかり春の風、
春の空気だった。

この空気は、嫌いじゃない。
何か新しいことが、
何か新しい日々が始まりそうな
気が、自然と、否応なしに沸いてくる。

でも、もうわかってる。
何かを変えないでも、何かが変わっていくなんて
思っていたら大間違いだって。

たまには歩いて、
大学まで行ってみたりする。
普段は通らない、遠回りの河川敷を
歩いてみる。通りのベンチに腰をかけて、
タバコを吸い、ぼんやり景色を見ながら、
みんなのこと、自分のことを考える。
考えれば考えるほど、
何か、可哀想になってくる。


「無数の卑屈な笑顔があらわれ、
はっと思う間に消え失せた。
みんな、卑屈なのかなあ、と思う。
誰にも自信が無いのかなあ、と思う。」

太宰治『鴎』


でき得るだけ、みんなに優しくしたいと思う。
そう思った瞬間、そんな偉そうな自分の考えに
苦笑してしまう。

そんなことを考えていると
「僕も、みんなも、何しに生まれてきたのかなぁ」
と言う素朴な疑問がわいてくる。

堪らなく寂しい気持ちになる。

2003年03月22日(土)
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