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2008年10月17日(金) 監督解任は代表強化の手法の1つ

日本協会の犬飼基昭会長が16日、日本代表のW杯アジア最終予選残り6試合すべてを岡田武史監督に託す考えを明らかにした。1−1の引き分けに終わったウズベキスタン戦から一夜明けたこの日、都内のJFAハウスで就任1年目の手腕を評価。予選中の解任を否定し「岡田監督で行く」と断言した。

信じられない。日本協会会長は狂気か病気であろう。監督交代は不振脱出の策の中の1つであって、使えない手法ではない。現に、UAE、ウズベキスタンが2戦でこの手を使った。ご承知のように、ウズベキスタンは2敗のあと、アウエーの日本戦で勝点1をあげ、首の皮1枚だが、予選突破の可能性を残した。成功したのである。

日本代表の場合、11月19日のカタール戦(アウェー)で負ければ、監督交代は当然であって、いまこの時期、カタール戦に向けて、指揮官・選手に重圧をかけなければいけない。その圧力をはねかえせないようならば、日本はW杯にいく資格がない。日本サッカーは、永遠に、タフになれない。

日本協会を含めて、日本サッカー界は甘い。協会役員さらに監督を含めて官僚化が進み、組織の活力が失われていく。オシムはこのような日本サッカー界の官僚体質を改善しようと努めた。それが、彼を病に走らせた。岡田は、官僚体質にどっぷりとつかり、勝とうが負けようが関係なく、協会幹部の道を歩むのだろう。協会の長ならば、勝ち点3獲得を後押しする方法として、解任をちらつかせるくらいの度量がほしい。「甘やかし」だけでは、勝てないはずだ。

そもそも、「岡田の監督としての手腕を評価して」解任しない、という言説が奇妙だ。岡田で満足している代表サポーターがいるのだろうか。先日、知人のジャーナリストと電話で「岡田ジャパン」の戦略とは何かを話したのだが、ともに「戦略がない」という意見で一致した。戦略とは言葉だ。日本サッカーの現在と未来をどれだけ豊かな表現で語りえるかだ。残念ながら、岡田にはそうした資質が見出せない。現実的に、一戦一戦を勝ち抜くことは必要だけれど、サッカーはそれだけではない。

現実がビジョンに一歩一歩近づくこと――代表という作品の完成のプロセスを、サッカーファンひとりひとりに明示すること――が「戦略」の中身だ。いまの岡田ジャパンは、崩壊過程を明示している。

こういう資質の指導者には、冷厳な現実(=解任)をちらつかさなければならない。残念なことだが、勝つためには有効だ。筆者は、このような夢のない代表サッカーを好まないが、この期に及んではいたしかたない。ところが、協会の長ともあろう者が、有効な手法を封じてしまった。狂気か病気と表現する以外、表現のしようがない。


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tram