| 2008年07月21日(月) |
被虐的敗戦―千葉VS.G大阪 |
J1最下位に沈んだままの千葉がまた負けた。後半戦開始の18節・G大阪戦はホームで0−1の敗戦。しかも、決勝点はロスタイム、交代で入ってきたばかりの山崎に上げられた。
クゼ監督の後任・ミラー新監督の戦術は明確だった。4バックの前に2人のボランチ、中盤はダイヤモンドに組んで、巻のワントップ。見ようによっては、ボランチが最終ラインに吸収されて6バック、トップ下ではなく1アンカー、MFが左右に張り出した(ウインガー)、ワントップのようだ。
フィールドプレイヤーは、トップを除く9人が自陣に引いてゴール前に守備ブロックを敷き、相手の攻撃を跳ね除ける。攻撃(=マイボールになったら)は、トップの巻に当てて、巻がキープしている間にサイドの選手が長い距離を走り、相手ゴールを狙うというものだ。相手がセンターラインを越えるまでは相手に持たせ、越えたところからプレスをかける。運よくボールを奪えたならば、その瞬間から攻撃的MF〜SBが駆け上がり、サイドからのクロスで相手ゴールを窺う。守備から攻撃にすばやく切り替える、「リトリート」の徹底だ。
この戦術はポゼッションを放棄するかわりに、カウンターを食わないメリットがある。守備網が完備しているので、そう簡単に点を許さない。モダンサッカーでは当たり前ともいわれる。その一方、選手は大変だ。マイボールの瞬間、自陣から相手ゴール前まで、全速力で長い距離を走らなければならない。この試合では、右の谷沢(FW登録)、坂本(SB)、が機能し、左の根元、池田(SB)が攻撃に絡まなかった。
TV中継解説者・原博実氏は「千葉の戦術の目指す方向は間違っていないし、光は見えている」とコメントしていた。専門家から見れば、そういうものなのかもしれないし、千葉がこの戦術をものにするにはもう少し時間が必要なのかもしれない。しかし、千葉の順意表の位置は最下位、まちがいなく降格圏内にある。シーズン残り半分で降格圏内から脱出できるのかどうか。J2に落ちてもいいから、ミラー方式で進むのかという選択に迫られている。
千葉の守備ブロックは人数をかけて固いように見えるが、後方からフリーで上がってくる選手に届いていない。明神のミドルシュートは、GK岡本がファインセーブで防いだ。そればかりではない。決勝点は両軍が入り乱れた混戦状態で、G大阪がワンツーで決めた。これも、守備ブロックの盲点を突いたものだ。失点には至らなかったが、混戦でDF池田が相手シュートをゴール前で守ったシーンもあった。千葉は長いこと、マンツーマンDFできたチーム。ゾーンDFが徹底していない。
さて、相手攻撃を一方的に受けながらどうにかしのぎ、勝点1を目前にしたロスタイム、混戦から決勝点を奪われるという結果は、相当大きなショックを選手たちに与えただろう。労多くして実りなし。この戦術から得られる成果はせいぜい勝点1。惜敗であればあるほど、肉体的精神的疲労は大きい。筆者から見れば、ミラーの戦術は、トーナメント戦であるとか、代表試合のアウエーで採用されるべき戦術のように見える。
さて、千葉の凋落は、オシム父が日本代表監督に引き抜かれたときから始まり、そのあとを継いだアマル・オシムが凋落を加速し、今シーズン開始前の主力選手の放出で決定的になった。
アマル体制で主力がポロポロとチームを離れだし、今シーズン直前にオシムチルドレンといわれる主力選手が一斉に抜け、その補強をしなければ、前シーズンの順位から上がる可能性は低かった。若手が育ったという情報もなかった。さらに、クゼ体制が時間を浪費した。クゼに何を託したのかわからないまま、シーズンの半分近くが過ぎてしまったのだ。そして、後任に迎えたミラーがまた、やり方を変えた。サッカーを理解しないクラブ(フロント)に責任がある。
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