ワシントンが帰ってくる――といっても、浦和と再契約するわけではない。筆者は今週、CSTVでリベルタドーレス準決勝4試合の再放送をチェック。南米サッカーの熱気の一端に感じ入った次第。
ご承知のとおり、浦和にいたワシントンがフルミネンセ(本拠地:リオデジャネイロ)の一員として、リベルタドーレス杯決勝進出を決めた。決勝の相手はエクアドルのLDUキト。キトはメキシコのクラブアメリカに勝ってファイナル出場を勝ち取り、フルミネンセはボカを破っての決勝進出だ。フルミネンセVSキトの勝者が、「クラブW杯」出場の権利を得て、南米代表として日本にやってくる。
ボカは昨年の「クラブW杯」に来日したものの、中心選手・リケルメが出場できず、ACミランに完敗した。ボカには新鮮味が感じられず、筆者にとっては、あまり魅力がない。筆者は、元Jリーガーが主力を固めるフルミネンセに日本に来てもらいたいと思っているのだか。
準決勝のボカとの第1レグでは、フルミネンセは劣勢だった。リケルメを中心としたボカが中盤からの鋭い寄せでボールを支配し、5点くらいとられてもおかしくないくらいの試合だった。ところが、終わってみれば2−2の引分。ボカがホームで勝ちきれなかったのは不覚というか、不思議というか・・・
第1レグ、フルミネンセを窮地から救ったのが、仙台にいたチアゴネーヴィスの一発だった。チアゴが放った強烈なボレーシュートはボカのGKカランタの真正面。カランタはシュートの勢いに押されてパンチングをミスし、体に当ててボールを後方にはじき、ゴールを許した。ミスともいえるが、とにかくフルミネンセが同点に追いついた。期待されたワシントンだが、一度だけ決定機があり、シュートを放ったがGKの正面をつき、得点にはならなかった。ゲーム終了近く、ワシントンに代わってドドー(元大分)が出場した。
第2レグも、事実上勝たなければ決勝に進めないボカが優勢。前半は0−0だったが、後半早々、ボカがパレルモの頭で先制した。その直後、フルミネンセはワシントンがFKを決めて同点、さらにボカのオウンゴールで逆転し優位に立った。なんとしても2−2(PK戦決着)に持ち込みたいボカが猛攻を仕掛けるが、フルミネンセのGKエンリケが神がかり的セーブを連発し、ボカに点を与えない。そして、タイムアップ寸前、途中交代で出場していたドドーがボカDFのミスをついて追加点を上げ、3−1(合計5−3)で決勝進出を決めた。
ボカとフルミネンセの準決勝に限れば、ボカが不運、フルミネンセの幸運といえるかもしれないが、フルミネンセのGKエンリケが最高殊勲選手に選ばれておかしくない。それにしても、第1レグでチアゴネ−ヴィス、第2レグでワシントンとドドーと、フルミネンセの総得点(トータル5点だがうち1点はOG)4点中3点を元Jリーガーがゲット。元Jリーガー、大活躍の準決勝だった。
Jリーグで活躍したブラジル人選手が南米代表として「クラブW杯」世界一決定戦に凱旋することは喜ばしい。彼らのチームメートの日本人Jリーガーはもちろんのこと、敵として戦った日本人Jリーガーにとっても、彼らの「クラブW杯」出場は誇りだろう。
Jリーグの強化・発展に貢献したブラジル人選手は数え切れないが、ブラジルと日本を行き来し、現役でしかも南米選手権を制覇し、日本で開催される「クラブW杯」に凱旋帰国するというのは、とても痛快な話だ。彼らは欧州王者のマンチェスターUに対して、どんな戦いぶりを見せるのだろうか。
さて、そのフルミネンセの元Jリーグ勢の前に立ちふさがるのが、エクアドルのLDUキト。準決勝ではメキシコのクラブアメリカを相手に実にしぶとい戦いぶりで勝ちあがってきた。ホーム、アウエーの2試合で3人の退場者を出しての決勝進出だった。スーパースターは不在だが、粘り強くそして結束力の強いチームだという印象をもった。
フルミネンセも、つかみどころのない不思議なチーム。リベルタドーレス決勝戦は、南米のしたたかな強豪クラブ同士の厳しい戦いになると思う。2試合とも、おそらくイエロー、レッドが飛び交う、荒れた試合になると思われる。筆者の予想は、フルミネンセに勝ってほしいけれど、LDUキトが1勝1分で優勝するのではないか。もちろん、この予想が外れてくれることを祈っている。
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