| 2008年06月09日(月) |
タイのほうがオマーンより手ごわい |
横浜におけるオマーン戦の予想(当コラム・08/06/02)は外れてしまったけれど、マスカット(アウエー)におけるオマーン戦(08/06/07)の予想として読み替えていただければ、かなりの部分、適正な内容だったと思う。スコアレスドローではなかったが、現在の日本代表がアウエーの場合、オマーン代表と比較して、力の差があまりないことがお分かりいただけたと思う。
さて、14日に開催されるバンコク(アウエー)におけるタイ戦とて、このような状況は変わりない。というよりも、現在の日本代表にとっては、オマーン代表よりタイ代表のほうが手ごわい。
まずもって、アウエーの地・バンコクの気候・風土について簡単におさえておこう。バンコクの6月は雨季。終日高温多湿で、昼間は晴れて気温は30度を超える。そして、夕方になると必ずといっていいほどスコールがある。スコールは概ね30分程度でおさまることが多い。日が暮れれば、気温は下がるが、高温多湿に変わりない。ピッチはスコールの影響でスリッピ−なことが多い。
タイのサッカーの実力は年々、向上している。昨年のアジア杯では共同開催の一国として健闘した。タイ代表はホームの利を生かし、グループ予選において、優勝国イラクと引分け、オマーンに勝ち、オーストラリアに負けて勝点4でオーストラリアと並んだが、当該チーム同士の成績で、惜しくも決勝トーナメント進出を逃している。
タイ代表の特徴は――これはすべての国に当てはまることだけれど――アウエーで力を発揮できないことだ。ホームの力を10とすると、アウエーではその6割も発揮できていない。このギャップの大きさが、タイ代表の特徴といえる。国際試合の経験不足がその理由だろう。
ところが、アウエーで弱いはずのタイ代表が直前のバーレーン戦(08/06/07)において、日本代表が負けた相手にマナマで引き分けている。タイ代表は、逆にホーム(バンコク)で行われたバーレーン戦(08/06/02)は2−3で惜敗した。バーレーン代表を相手にホームで2得点を上げたタイ代表の攻撃力に注意を払う必要がある。
筆者の印象にすぎないが、タイ代表のプレーの特徴として、(1)伝統的に巧みな足技から繰り出す正確なトラッピングを土台とした早いパスワーク、(2)相手DFの裏を取るスピード、(3)守備からカウンター攻撃に移るスピード、(4)体格の割に強いミドルシュート――を挙げておく。
タイ戦はオマーン戦と同様、酷暑の中で行われる可能性が高い。オマーン代表はホームでありながら、日本代表より体力・耐久力で劣ったが、タイ代表に限れば、ホームで日本代表に走り負けることはない。
タイ代表の弱点は守備力。中で「高さ」に難がある。であるから、日本代表には、コーナーキック、ゴール近くのフリーキックが得点機会となる。セットプレーから日本代表が得点を上げる確率が高い。中村俊、遠藤の正確なキックに、闘莉王、中澤の頭、さらに、大久保が出場停止ということで、矢野又は巻の頭も日本代表にとって武器となる。
日本代表における懸念材料は、アウエー(マスカット)からアウエー(バンコク)への移動に伴う、肉体面・精神面の蓄積疲労だ。オマーン戦の引分で日本代表はオマーン代表に引導を渡せなかった。しかも、酷暑の中とはいえ、日本代表がゲームを支配したとはいえない。筆者の見方では「負け試合」だった。相手のPK失敗、大久保の退場に伴うゴタゴタでオマーン選手も一人退場になったことで、幸運にも負けは免れたが、オマーン代表に勝点3が入ってもおかしくない内容だった。
日本代表が試合を決められなかった理由がフィニッシュの甘さだと指摘されているが、シュートに持ち込む場面が少ないのであって、決定機を外しているわけではない。決定機がつくれていない。玉田、大久保の2人のFWと、中村俊、松井、遠藤、長谷部を含めた4人の中盤と、SBの2人が、有機的に連動していない。コンビネーションに難があるのだ。
日本代表ホーム(横浜)のオマーン戦では、遠藤、長谷部の2人が前目となり、2ボランチの一方を攻撃の基点として大量得点(3点)の結果を得た。ところが、アウエーのオマーン戦では、PKによる1点止まりだった。PKは玉田の個人的ドリブル攻撃に対して、オマーン守備陣があわてた結果だ。日本は、攻撃面に関してまだまだ改良の余地がある。
タイのホームでボランチ2人が無媒介的に攻撃参加するという選択は、危険極まりない。カウンターで思わぬ失点をする場面が想像できる。バンコクでは、ホームのタイ代表に走り負けることは確実だ。
バンコクでは、タイ代表の攻撃を封じる守備力が問われている。先のオマーン戦(08/06/07)においては、足の故障の癒えない闘莉王がマークを外して慌て、相手選手を倒してPKを献上した。幸い、相手キッカーのミスで得点にはならなかったが、タイ戦では、より素早い相手の攻撃陣を相手とするわけだから、あのような軽率なミスは許されない。アジリティーにおいて日本代表を上回る相手だ。スピードに劣る中澤、闘莉王がミスをすれば、日本代表はたちまち窮地に追い込まれる。
アジア地区3次予選の相手で四苦八苦となると、最終予選は更なる苦戦が予見される。アジア予選を突破できても、他国開催のW杯でのベスト16はもとより、初勝利を上げることすら難しい。タイ代表との試合は、日本代表がいま以上の“のびしろ”を持っているかどうかを見極めるいい機会だ。“のびしろ”がないとなれば、岡田体制の継続は、この先、日本サッカーの長期停滞を招来する。
タイ戦は大げさに言えば、日本サッカー界の未来を見通すという意味で、極めて重要な一戦となる。
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