Sports Enthusiast_1

2008年05月13日(火) アレックス・ミラーとは何者か

第11節まで勝星がなかった千葉が京都から初勝利。クゼ監督の解任が決まった途端の出来事だった。

日本のスポーツマスコミは、「千葉は8日、プレミアリーグ・リバプールのアレックス・ミラー・ヘッドコーチ(58)を新監督に内定した」と報道した。

だが、待てよ、英国プレミアリーグのリバプールには、「ヘッドコーチ」という肩書きはないだろう。英国では、日本で言うところの「監督」はマネジャー(Manager)、日本のプロ野球で使用されている「ヘッドコーチ」に近いのが、Head of Technical Analysis、Assistant Manager、First Team Coach…と呼ばれる。英語でHead Coachというと、日本の「監督」を意味することが多い。

勉強不足の筆者は、残念なことに、アレックス・ミラーについては何も知らない。だから、この人事について評価できない。ミラーがリバプールに属していたとき、Head of Technical AnalysisだったのかFirst Team Coachだったのかわからない。参考までに、現在のリバプールのサイトには、Head of Technical Analysisの肩書きがあり、ANGEL VALESという人がやっている。もちろん、Head Coachの職はない。

Wikipedia, the free encyclopedia-によると、“Alex Miller joined English Premiership side Liverpool in 1999. He is currently the First team coach at Liverpool”とあるから、彼の前職はFirst team coachだったようだ。First team coachは、日本語の「ヘッドコーチ」に当たるという認識だろうが、スポーツ業界の慣例とは言え、適正な訳語ではない。

もう一つ日本のスポーツマスコミに苦言を呈したことがある。それは、「千葉」というと、「オシム」とくることだ。オシム元監督が弱小千葉を短期間で強化し、上位に押し上げ実績はすばらしいものだった。監督として優れた実績を残した。それらのことについては、当コラムで何度も書いたし、その手腕を評価してしすぎることはない。

だが、一人の監督が特定のクラブを永年にわたって支配し続けることはあり得ない。監督はいずれ交代する。人が変われば、「オシム」の残した卓越した強化方法や戦術等がそのまま受け継がれることもあるだろうし、批判的に乗り越えられることもある。

世界のプロフェッショナルフットボールの歴史は100年を超えている。一クラブの監督数が平均で合計何人に至るものかを知らないが、特定の人物に拘泥できる時間と数ではない。

日本のJリーグの歴史は、世界に比べてその10分の1程度。日本のスポーツマスコミは、オシムの残した強烈な印象が拭えないのかもしれないが、千葉はオシムの私物ではない。「オシム色の一掃」だとか「脱オシム」だとか、いまだに騒いでいる気が知れない。これもサッカー報道の未成熟さの現れの1つかもしれない。

日本のサッカー報道が少しだけ気の利いたものになることと、千葉がミラーの手腕によって蘇ることを期待したい。


 < 過去  INDEX  未来 >


tram