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2008年02月05日(火) タイは危険

いよいよ、W杯アジア地区第3次予選が始まる。初戦はホーム、相手はタイ、だから安心というわけにはいかない。その理由は、岡田監督のサッカー観が混乱をしているからだ。就任当初、思いつきで、接近(集合)、展開(離散)のラグビー理論を掲げ、そこに短いパスまわしを付加したものの、初陣でモダンサッカーを展開する若いチリ代表の強いプレスに攻撃を封じられた。次のボスニアヘルツェゴビナ戦で、選手は自主的にサイド攻撃、チェンジサイド、ロングボール、フリーランニング等に戦術を切り換えた。チリ代表とは一転して元気のない、半病人のボスニアヘルツェゴビナ代表に圧勝したものの、代表メンバーの中には、岡田監督の指導力に疑問符を投げかけている選手もいるらしい。

そもそも、オシム前監督の後がまに岡田を起用するという人選が誤りであることは、当コラムで繰り返し書いた。繰り返せば、残念ながら、いまのところ、日本の指導者はサッカー先進国の欧州・中南米で通用しない。実績がない、世界クラスの選手を束ねた経験がない。そもそも、日本がW杯に出場したのが近年の3回、アジア地区予選を勝ち抜いた実績が2回。W杯の実績は、ホームでベスト16、他国開催の2回で合計勝点2、いまだ、勝利がないのだ。W杯地区予選を勝ち抜いた監督は前述したとおり、岡田(98年・フランス大会)、ジーコ(06年・ドイツ大会)の2人。そのうちの1人が岡田なのだが、98年当時のアジアとその10年後とは状況が異なる。顕著な違いは、豪州の加入、アラブ諸国の実力アップ、中国・東南アジアのレベルアップだ。

なかでもタイは手強い。タイの実業家がマンチェスターシティーの経営に乗り出したりして、サッカー熱が沸騰している。英国プレミアに選手が入団した。もしかすると、日本がJリーグを設立したとき――第1次Jリーグブームのときに似ているのかもしれない。「ドーハの悲劇」(アメリカ大会予選)を体験した日本は、その4年後、日本サッカー史上初のアジア地区予選突破を果たしたわけだ。

いまのタイが当時の日本と同じだとは言わない。けれど、日本がアジア地区予選を突破したように、それまでできなかった国が突破できないという理由はない。日本がテーク・オフしたように、いずれ、東南アジア各国もテーク・オフする。本予選がその時期に当たるとも言わないが、〔3次予選=日本の楽勝〕という図式は当たらなくなった。

タイの戦術を見極めよう。相手がセンターラインまで引いて守るのならば、日本はポストプレーで勝機を見出せる。高さで優位の日本は、へディングの強い巻(矢野)に当てて、混戦から高原、大久保らがシュートを狙える。逆に中盤でゴチャゴチャしたパスまわしにこだわれば、タイのカウンター、ロングシュート、ミドルシュート、裏を取られて・・・の失点の可能性も高い。タイの足技は日本より上だ。

次の狙いは、左右のSBの突破から、速いセンタリングが上がれば、巻、高原に集中した相手マークの間隙をぬって、中盤の大久保、山瀬、羽生、遠藤・・・が走りこんで合わせるプレーが得点チャンスを生む。遠藤の得点シーンが期待できる。

最も期待できるのがセットプレー。コーナーキック、フリーキックならば、日本の高さが武器となる。中澤、阿部の頭が得点を生むだろう。

筆者は、ダークホースとして、羽生の活躍に期待している。スピードにはスピード――前半、日本の寒さにエンジンがかからない、あるいは後半、スタミナ切れのタイDFのすきをついて、羽生がミドルレンジのシュートを決めるシーンが想像できる。

日本がタイに勝つ戦略は、岡田監督が掲げた、▽集中・展開というボールに集まるサッカーをしないこと、同じく、▽短いパスを回さず、ピッチを広くつかうこと、相手がタイならば、▽落ち着いてボールをキープし、▽高さを武器にすること――が必要だ。つまり、岡田監督の掲げたサッカーを全部否定すれば勝てる、と筆者は思っている。


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