Sports Enthusiast_1

2008年01月20日(日) オシムチルドレンの移籍は失敗に

昨年の6月、当コラムにおいて2度にわたってJ1千葉の崩壊について書いた。そのときは、アマル・オシム監督を解任しなければ、千葉の浮上はないという趣旨だった。クラブ側は、その後、千葉が地力で降格圏を脱出したこともあって、アマルを続投させ、13位でシーズンを終了した。ところが、アマルの父・イビチャ・オシムが日本代表監督を病気で解任された後、アマルのクビを切った。

08年を迎えた途端、Jリーグに異変が続いた。水野、長谷部、本田の若手3人の欧州移籍が決まり、高原がドイツから浦和に移籍した。千葉では、MF水野のセルティック移籍の決定後、ヨゼップ・クゼ(55)の新監督就任の報道があり、新監督就任のタイミングにあわせて、MF山岸(川崎へ)、DF水本(G大阪へ)、MF羽生(F東京へ)、MFで主将の佐藤(京都へ)の移籍が発表された。昨年の阿部に続き、いわゆる「オシムチルドレン」が一斉に千葉からいなくなった。イビチャ・オシムが育て上げたジェフユナイテッド(市原〜千葉)というクラブが崩壊・消滅した。このクラブは、J1というよりも、日本サッカーの在り方を変えたといっても過言ではない。

イビチャ・オシムに見出され育てられた千葉の主力選手が一斉に古巣を飛び出した理由は、報道によると、クラブ側の方針のなさ、投資の見送り、また、アマル・オシム監督解任の際、淀川隆博社長が“脱オシムサッカー”を宣言したことだ、といわれている。

筆者の直感にすぎないけれど、ヨゼップ・クゼがイビチャ・オシムの代役を務められるとは思えない。クゼが経験と実績の豊富な指導者であることを認めても、イビチャ・オシムのような指導力はない。

さて、千葉を離れた「オシムチルドレン」の行く末だが、これも筆者の直感にすぎないけれど、DF水本以外は、移籍先での活躍は期待できない。そもそも、MFの山岸、羽生、佐藤は個人の力で局面を打開できるタイプではない。彼らは、千葉というチーム(組織)で有機的に機能した。だから、戦力として期待できる条件は、3人が同一のクラブへ移籍することだった。バラバラになった「オシムチルドレン」の力量は、移籍先を引っ張る力にはなりえない。

しかも、3人が移籍したクラブの戦略・戦術は、千葉とはあまりにもかけ離れすぎている。たとえば川崎の場合、大型のDF陣が守備を固め、前線のジュニーニョの個人技で得点するパターンだ。後方からの押し上げにより、数的優位をつくるサッカーではない。筆者には、山岸が川崎で活躍するイメージがわいてこない。佐藤が移籍する京都は、入れ替え戦を見た限り、守備の意識が高いチームという印象がある。千葉のように、リスクを負って点を取りに行く場面は想像できない。佐藤の前線を追い越す動き、上がってきて、ミドルを打つような場面が試合中にあり得るだろうか。

羽生が移籍したF東京は、原前監督ならば、千葉と共通点があった。だが、原監督が辞任してしまったので、新監督がどういうサッカーをするのかわからない。わからないけれど、羽生が千葉にいたときのような奔放な動きができるかどうか疑わしい。

というわけで、「草刈場」といわれたジェフユナイテッド千葉の主力選手の移籍は、残念ながら、失敗に終わるというのが筆者の予想だ。もちろん、この予想が外れることが望ましい。

もっと心配なのは、崩壊した千葉をどう立て直すかのほうだ。新生千葉の形をつくるのに2カ月間しかない。08年シーズンのクゼ新体制の目標は、J1残留といったところか。さびしい限りというか、Jリーグの1つの光が消えたような気がする。


 < 過去  INDEX  未来 >


tram