| 2007年12月22日(土) |
がっかり、岡田監督の「はったり」 |
日本フットボールリーグ(JFL)・FC琉球の総監督に就任した元日本代表監督のフィリップ・トルシエが20日、某スポーツ新聞社のインタビューに答え、前日19日、日本代表候補合宿のミーティングで、「韓国は4位という結果を残したが、それ以上を目指す。自信はある」と選手へ“世界3強入り”を宣言した岡田監督について、次のようにコメントした。
(岡田監督が)韓国より上を目指すと宣言されたそうですが、日韓関係を考えると当然かと思います。長い間、競い合ってきたことは私もよく知っています。ただ、サッカーはすぐに強くなるものではない。韓国の上にいくというのを、はっきり断言できるのかな…というのが自分の気持ちです。 (中略) ただ、(岡田監督は)経験豊かで敬意を持って拝見しています。(3強宣言は)選手を鼓舞するという意味で必要だったのではないか。 (中略) 私は若い選手を育成して、いい選手にしながらW杯にのぞんだ。(06年ドイツW杯で1次リーグ敗退に終わったジーコ監督)は、いい状態の選手をメンテナンスしながら、W杯に向けて指揮していた。それが彼の役割だった(ジーコは、トルシエの残した“遺産”で戦っていた)。
筆者はトルシエのコメントに全面的に賛成だ。かねがね、日本のFIFAランキングが高すぎること、その実力は世界で概ね50位前後、アジアで10位以内であること――を強調してきた。岡田が日本はW杯で3位以内と「宣言」した根拠は、先のクラブ世界一決定戦でエトワールサヘル(アフリカ王者)をPK戦で破ってクラブ「世界3位」を得たことに符合している。
いやはや、浦和が世界3位のクラブだなんて思っている日本人はだれもいない。1位ACミラン、2位ボカ、3位浦和なら、スペインのバルセロナやレアルマドリードはどうなんだ、英国のリバプールやアーセナル、チェルシーは?ドイツのバイエルン、アルゼンチンのリーベル・・・、ブラジルのサンパウロ・・・?
日本は、アジアにおいて、韓国、オーストラリア、イラン、イラク、サウジアラビアに対して、勝率6割以上の成績が上げられる力をつけることだ。その前段階として、北朝鮮、中国、バーレーン、オマーン、カタール、クウエート、UAE、ウズベキスタンに対して、アウエーでも常勝できるくらいの安定した力をつけることだ。
サッカーだから、格下に負けることもあるが、複数回の対戦で勝数が負数を圧倒的に上回る戦績を残せるようにすることだ。
筆者は、岡田がいきなり、W杯3位「宣言」をしたことを聞いて、心底がっかりした。筆者はこの手の「はったり」にうんざりする。その理由は、日本と実力が拮抗しているアジア諸国はもとより、日本よりはるかに実力がある欧州・中南米諸国に対し、リスペクトを欠いているからだ。いまの日本代表の実力からすれば、その目標は、せいぜい、失ったアジア杯の奪還くらいがちょうどいい。岡田の宣言は、アジア杯で日本より上位に入った、イラク、サウジ、韓国に対して失礼ではないか。
さて、トルシエのコメントには、もう1つ重要な事柄が含まれている。それは、ジーコがドイツ大会に臨んだ日本代表が、(トルシエに発掘され、育てられたかどうかは別として)、地力、経験において、その前のW杯メンバーに比べて、はるかに優れた選手たちで構成されていたことだ。ヒデ、柳沢、高原、三都主・・・らは、その力のピークでドイツ大会を迎えた。にもかかわらず、W杯グループリーグで1勝もあげられず、16強に入れなかったのだ。サッカー評論家のUは、ポストジーコの日本代表の状況を「焦土」に喩えた。
岡田の仕事は、焦土を緑に変えながら、南アフリカに向けて戦うという、極めて困難なもののはずだ。その困難さを自覚する者ならば、「世界3位」という花火をあげることの滑稽さがわからなければ嘘というものだ。
日本サッカー協会は、日本代表を本当に強くしたいのだろうか、強くしたいのならば、「岡田」を選択した理由がわからない。岡田ジャパンは、戦う前から、まず指揮官の資質に疑問を持たれている。(文中敬称略)
|