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2007年08月27日(月) (財)日本相撲協会は寄附行為違反だ

朝青龍問題について論ずる前に、日本相撲協会が財団法人という公益法人であり、文部科学省の所管にあることをまず確認しておこう。

日本相撲協会の寄附行為を読むと、第2章「目的及び事業」の第3条において、〔この法人は、わが国固有の国技である相撲道を研究し、相撲の技術を練磨し、その指導普及を図るとともに、これに必要な施設を経営し、もって相撲道の維持発展と国民の心身の向上に寄与することを目的とする。〕とある。

相撲道がどういうものであるかは、この寄附行為に記されていないが、わが国固有の国技とあるのだから、相撲道=国技を演じる力士には、清廉潔白、高い道徳意識が求められて当然だろう。しかも、〔国民の心身の向上に寄与する〕とあるからには、力士の行動・言動からも、国民の心身が向上されてしかるべきである。

事業については、第4条の第2号に、〔力士、行司、呼出、床山の養成〕とあり、財団法人相撲協会は、力士を養成することも事業の1つとしていることが明らかだ。だから、力士の反社会的行為は、相撲協会の寄附行為に反するわけであり、かりに力士に不祥事等があれば、相撲協会の責任は免れない。

それだけではない。第7章には「年寄、力士および行司その他」が特別に設けられており、力士については、第36条第1項に〔この法人には、力士をおく。〕と明記されている。つまり、寄附行為上、力士は相撲協会に属しているのであって部屋ではない。しかも同条第7項には、〔力士は、相撲道に精進するものとする。〕とある。ということは、財団法人日本相撲協会におかれた力士が相撲道に精進しない場合は、寄附行為違反(違法)となる。筆者が言いたいのは、力士がサイドビジネスとして、バブル経済下におけるモンゴルにおいて、あるいは、日本においてを問わず、本業である相撲道の精進を怠って、企業経営、投資活動等の事業を行っていたとするならば、それは寄附行為に反する。

さて、朝青龍の問題の原点に戻ろう。筆者の解釈では、大相撲の巡業は、普段本場所が見られない地方の人びとに相撲を見せるという意味で、相撲協会の寄附行為に適ったものだ。力士は相撲協会におかれた者(寄附行為第36条第1項)であるから、巡業に参加しなければいけない。力士がそれをサボタージュしたならば、寄附行為違反であるから、協会は厳しくその力士に処分をくださなければいけない。

と同時に、相撲協会は、力士のサボタージュを防止するための管理体制を敷かなければいけない。以前当コラムで書いたが、サラリーマンが長期欠勤する場合は、医師の診断書の提出が義務付けられている。相撲協会は力士が巡業を休みたいと申請してきたら、その事由を証する書類の提出をもって不参加を認可することが常識的である。それをしなかったとしたら、相撲協会に重大な管理ミスがあったことになる。

前述したとおり、寄附行為上、力士には〔相撲道に精進すること〕が義務付けられているのであるから、サイドビジネス等に熱中している力士がいるとしたら、寄附行為違反をもって、相撲協会は注意・勧告・指導・処分をしなければいけない。朝青龍のモンゴルビジネスが、〔相撲道に精進すること〕以上のものならば、協会は彼に指導をしなければいけない。朝青龍が協会の注意を無視して〔相撲道に精進しない〕のならば、寄附行為違反をもって、横綱の地位を剥奪することが法に適っている。

朝青龍が財団法人日本相撲協会の寄附行為を読んで理解しているかどうかは別として、寄附行為が財団法人の存立の基盤であり憲法にも等しいものである以上、協会、協会役員、力士等は寄附行為に基づいてその職を全うしなければいけない。しかも、財団法人は高い公益性が認められているがゆえに、税制面で優遇されている。にもかかわらず、いまの日本相撲協会を構成する者である役員、力士については、公益法人を運営する資格がないとしか言いようがない行為に走っている。

財団法人日本相撲協を所管する文部科学省にも責任がある。さらに、相撲協会の寄附行為違反を黙認するマスコミ、スポーツジャーナリズムもどうしようもない。朝青龍がいつモンゴルに帰るかと、空港に人をはりつけるだけの人的余力があるのならば、財団法人日本相撲協会の寄附行為を読み直し、文部科学大臣に感想を求めるくらいの取材をしてみたらどうだろうか。


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