JBC(日本ボクシングコミッション)の試合役員会が、亀田父(三兄弟のトレーナー)の処罰を求める要望書をJBCに提出した。役員会が問題としたのは、3月24日に興毅がエベラルド・モラレスに判定勝ちした試合の後、試合を裁いた浦谷伸彰レフェリーに対し、興毅がダウンを奪った際にKO勝ちにしなかった措置や、興毅に対する再三のバッティングの注意について、亀田父が暴言を吐いたこと。要望書ではこうした行為を「もはや抗議ではなく、どう喝や脅迫と呼んで過言ではない」と、ライセンス停止を含む厳しい処分を求めた。
要望書を受けたJBCは、協栄ジム、亀田父から事情を聴き、協栄ジムの金平会長の謝罪でことを済ませようとしているようだ。
亀田父は昨年9月の二男・大毅の試合後、リングサイドで起こった暴力騒動に加担しようとして、JBCから厳重注意処分を受けている。筆者はそのとき当コラムで、亀田父のライセンスを剥奪せよ、と書いた。そして、亀田父は近いうちに問題を起こすことを予告しておいた。にもかかわらず、JBCは動かなかったし、いまも動こうとしない。JBCはことの重大性をまったく理解していない。
まず、ボクシングはルールに則ったスポーツであり、しかも、命にかかわる危険なものであるため、選手、関係者には厳しいモラルが求められる。選手は試合以外では、その技術を使用してはいけない。試合前後には、選手・関係者は互いにリスペクトしあう。試合中は、レフェリーの指示に従う・・・等々が最低限の規律として選手・関係者に求められている。日本ボクシング界では、これまでのところ概ねこの規律は遵守されており、ボクシング選手のリング外の暴力事件などは発生していないし、日本ランカーの試合に限らず、4回戦、6回戦においても、試合後、互いの健闘を讃えあうマナーは遵守されている。判定についてはこれまで、いろいろな騒動があったけれど、審判、ジャッジに脅迫・恫喝が及ぶということは聞いたことがない。
ボクサーがリング外で暴力事件を起こせば、法律がそれを裁く。選手・関係者が試合前後、審判・ジャッジに圧力を加えれば、コミッショナーがそれを裁く。このたびの亀田父の行為は、常識的に考えて、日本プロボクシングの審判制度への圧力・侮辱にとどまらず、破壊行為であり、社会的には、レフェリー(個人)に対する脅迫行為であるから、コミッショナー及び法律の両面で亀田父を裁かなければならない。
刑事事件は当局の管轄だから、ここでどのような判決が適当なのかコメントできない。もう1つの、コミッショナーが裁く措置について論じれば、ライセンス剥奪が適正だと思う。亀田父は過去に厳重注意を受けているわけだから、 再犯に当たるわけで、謝罪で済まされるものではない。亀田三兄弟がボクシング人気を盛り上げたからといって、亀田父の過ちが軽減できるものではない。判定結果に圧力を加えたということは、次は有利に判定せよ、と強要していることだ。審判(制度)への干渉に当たる。
当コラムで以前、書いたとおり、筆者は亀田父がテレビの朝のワイドショーで、やくみつると喧嘩をした場面も偶然見た。そのときの亀田父の言動は、十分危険性を感じさせるものだった。筆者はこのような人物がボクシングという命にかかわるスポーツに携わることの「危なさ」を感じた。その後、テレビのスポーツニュースで、亀田と対戦相手との計量や調印の場面で、エキサイトする亀田父の態度を見せられて、「亀田父の危なさ」を確信するに及んだ。
亀田父の暴言・暴行未遂・恫喝で話題にのぼったものをまとめると、ワイドショーでの“やくみつる事件”、二男の試合の後に起こした“観客暴行未遂事件”そしてこのたびの“審判恫喝事件”と続いている。その間、計量、調印等々で対戦相手選手・陣営に与えた意味不明な恫喝、メンチ切りなどを加えれば、スポーツとしてのボクシングの品位を落とすにとどまらないどころか、いずれ、刑事事件に及ぶことはだれの眼にも明らかだ。今回の事件に対する、JBCの断固たる処置を期待したい。
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