Sports Enthusiast_1

2007年03月19日(月) 簡単に負けてはいけない

横浜FCが川崎に0−6と大敗した。高木監督は、浦和に1−2と惜敗したものの、横浜Mに1−0と競り勝った。その直後の川崎戦は、横浜FCの実力を正確に測る意味で、重要な試合だった。

結果は惨敗だった。個の力において劣るうえ、ゲームプランがはっきりしなかった。高木監督が完全に自分のチームの実力を測り損ねた試合だった。2試合の手ごたえが奢りとなったのか。惨敗の第一の責任は高木監督にある。

高木監督は、浦和戦について、守るだけの消極的戦法だ、と批判されたのかも知れない。だから横浜M戦は一転して攻撃に打って出て先取点を上げ、幸いにして先取点を守り抜いた。けれど、あくまでも「幸い」であって、横浜ダービーは、マリノスがいつ追いついてもおかしくなかった。

高木監督は、川崎の戦力の分析を誤った。いま現在の川崎の攻撃力は、ワシントン頼りの浦和よりも、ましてや、久保、奥が抜けた横浜Mよりも、はるかに高い。にもかかわらず、高木監督は、アウエーでまともに川崎と打ち合った。浦和戦で機能した守備のブロックは影を潜め、ジュニーニョ、マギヌン、黒津らの前が大きく空いたままだった。ジュニーニョの先取点の場面では、横浜FCの厳しいはずの守備が機能せず、ゴール前ががら空き状態だった。その後の試合展開は、まるで川崎の練習のよう。守護神GK・菅野もお手上げだ。いまの横浜FCが、強豪相手に引いて守って何が悪い――高木監督に必要なのは「居直り」だった。

さて、同節、浦和と戦った甲府は、相手によってスタイルを変えないチームといわれ、マスコミ、Jリーグ周辺で概ね高い評価を得ている。だが、今シーズンの成績は3戦全敗で、しかも、いまだ無得点だ。相手は横浜M、名古屋、浦和で、大敗とはいえないが、苦しい負け方ばかりだ。「スタイルを変えない」といえば聞こえはいいが、玉砕ではないのか。相手が強ければ、それなりの戦術を練らなければいけないのではないか。フライ級のボクサーがヘビー級とまともに打ち合って勝てるわけがない。攻撃だけのサッカースタイルでいいのか。甲府の「スタイルを変えない」サッカーが評価されるJリーグだけれど、筆者は玉砕戦法をいかがわしいと思っている。玉砕サッカーが、「将来につながる」とは思えない。

筆者は、リーグ戦という長期戦においては、各チームいろいろな戦い方があっていいと思っている。スペクタクル性=エンターテインメント性は、プロサッカーに必要な要素の1つだけれど、明るく陽気に攻めあう試合もあれば、陰気で息の詰まるような試合があってもいい。後者が「つまらない」とは限らないではないか。どのような試合を好むかは、サッカーファンの趣味の領域に属し、派手な点の取り合いを好む人が多いとしても、それで満足のファンは、一過性の客だと筆者は思っている。

相手によって戦法を変え、強豪に一泡吹かせるようでなければ、Jリーグのレベルは上がらない。浦和が長期間「ホーム不敗」であることを評価する一方、ホームで下位相手の引分は負けに等しい。弱小チームが厳しい試合で引分にもちこめば、強豪チームに焦りが生じる。精神的に追い詰めなければ、戦力に勝る浦和が楽に優勝するシーズンで終わるだろう。

弱小チームといえども、たとえば、浦和ホームの試合で玉砕してほしくない。「つまらない」といわれようが、「消極的」とけなされようが、しぶとく戦った結果の引分ならば、それこそ、次につながる。

勝点0より勝点1のほうが評価が高くなければプロではない。潔い、自分のスタイルを捨てない、スペクタクル、エレガント・・・どのように表現をされようが、勝点が上げられなければ、順位は下がる。勝点が低いチームが優勝することはあり得ない。それがサッカーであり、勝負の世界である。


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