プロ野球米国メジャーリーグ(MLB)でプレーする日本人選手が米国各地でキャンプインした。中で最も注目されるのは、松坂(西武⇒ボストン・レッドソックス)であることは間違いないが、ケガからの復活が期待される松井秀(読売⇒NY・ヤンキース)、そして、大阪の人気者・井川(阪神⇒NY・ヤンキース)も話題をさらっている。
こうした伸び盛りの選手と対照的なのが、38歳の桑田(読売⇒ピッツバーグ・パイレーツのマイナー)の渡米だ。桑田は読売を事実上クビになり、その経緯は定かではないが、パイレーツとマイナー契約を結んだもので、桑田、読売に多額の移籍金が入ったわけではない。
桑田の米国挑戦は、報道で知る限り、順調のようだ。感心するのは、桑田が通訳をつけず、しかも単身でMLBを目指す各国の若手と練習に励んでいる点だ。松坂に限らず、先駆者・野茂(近鉄⇒LAドジャース等)、イチロー(オリックス⇒シアトル・マリナーズ)、両松井(稼は西武⇒NYメッツ等)、井口(ダイエー⇒シカゴ・ホワイトソックス)らは、通訳付きで、しかも、いきなりのメジャーデビューだった。一方の桑田は野球選手としては高齢でありながら、厳しい下積みからスタートした。英語は独学、スペイン語もマスター中だという。
さて、MLBにおける成績は別として、米国野球生活に最もなじんだ選手といえば、長谷川(オリックス⇒アナハイム・エンゼルス等)ではないか。長谷川は米国マスコミの取材に英語で応対し、所属する地元社会(ファン)と最も緊密な関係を築いた日本人メジャーリーガーだった、といわれている。
長谷川に次いで馴染んでいるのが、田口(オリックス⇒カージナルス)ではないか。田口は報道によると、セントルイス(カージナルスのホームタウン)で人気が高く、“ソウ”の愛称で親しまれているという。筆者は、田口のユニホーム姿が日本人メージャーリーガーの中で、最もカッコいいと思っている。同義反復すれば、MLBのユニホームが一番似合っているのが田口だと思っている。
カージナルスのユニホームは赤が基調だ。赤といえば、松坂が移籍したレッドソックスも赤がチームカラーだ。テレビで知ったのだが、この両チームの練習用の帽子は共に真っ赤。でも残念なことに、松坂の赤帽姿は、小学生の運動会の赤帽姿にしか見えない一方、田口はしっかりと、MLBの赤になっているし、赤のTシャツ姿もきっちりきまっている。
ユニホームの着こなしというのは記号的な意味があり、松坂が似合わないのは、おそらく、メージャーリーガーとして実績がなく貫禄が伴わないためだと思う。松坂には、しっかりと実績を積んで、MLBのユニホームをうまく着こなしてもらいたいものだ。
ここで前出の桑田の話に戻ろう。桑田は日本のマスコミの取材に対し、「米国の練習方法は、自分の理想とするものだ」と語ったという。仮に、桑田の渡米がいまから10年前であったのならば、彼の実力からして、最低5年間、MLBの投手生活が続けられたと思うのだ。その間、桑田が英語、スペイン語に磨きをかけていたならば、彼はMLBと日本プロ野球の双方を知る、貴重な野球人になっていたと思う。そのことは、現役か否かを問わない。
もちろん、38歳のスタートだからそのことが達成できない、と断言するつもりはない。筆者は桑田に対し、米国の野球技術のみならず、米国社会、米国のスポーツ文化のあり方について、多くを学んできてほしいと思っているし、彼には、それを言語化する資質がある。桑田が日本プロ野球に指導者として復帰すれば、日本プロ野球を革新する可能性をもっている。いろいろな意味で、がんばれ、マイナーリーガー・桑田!
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