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2006年11月14日(火) 川崎大逆転負けは、関塚監督の采配ミス

前節のJリーグで最も注目されたゲームは、F東京vs川崎だった。両軍の総得点9(5−4でF東京の勝ち)という点の取り合いで、しかも、川崎に2名の退場者があった。川崎側から、不可解な判定という意味の非公式の抗議があった。試合後のプレス・コンファレンスで、川崎の関塚監督は、主審が川崎の2選手を退場したことにふれ、(主審の判定に納得できない。一生懸命やっている選手に説明がつかない――という意味で、)「選手をどう指導していったらよいかわからない」とまでコメントした。

リーグ終盤、首位争いをするチームの監督が終盤に4点差をひっくり返され負ければ、その敗因を主審の判定に求めたい気分に陥ってあたりまえだが、敗因は主審の下した判定に求められるわけではない。試合を振り返ると、敗因は関塚監督の采配ミスだったことがわかる。

1人目の退場者であるジョニ―ニョのダイビングについて言えば、主審の判定は正しい。ジョニ―ニョは優れた選手だが、相手タックルにオーバーアクションで転倒する傾向がある。主審だってビデオで選手の癖を研究している。彼が主審を欺く傾向の強い選手であることは素人にも自明のことだ。彼は日本の主審は自分が大げさに倒れれば、必ず、ファウルをもらえると思っているふしがある。日ごろの悪い行いが、最も大切な試合において、報いを受けた。

2人目の退場者であるマルコンについては、テレビ映像ではわかりにくかった。筆者がいろいろ調べた結果、F東京に与えられたFKを彼が妨害する遅延行為が警告対象になったことが判明した。遅延行為は警告の対象であり、主審の1回目の注意をマルコンは無視して2回行った。言葉の問題もあるが、ここは日本だから、マルコンに非がある。ホームチームが負けている局面で、リードしているアウエーの選手が遅延行為を2回繰り返せば、警告は当然だ。

関塚監督の選手交代はどうか。
この試合、後半開始5分経過時点で川崎が4−1の大量リード。試合は決まりと思われた。流れを変えたのは後半6分のF東京戸田の得点だった。残り40分間で得点差2ならば、負けているF東京の選手たちに期待が膨らんで当然だ。F東京は、前の試合でG大阪相手に大逆転劇を演じている。

関塚監督の読みの狂いは、戸田の得点を起点にしていた。勝負の流れが変わっていたところで、ジョニ―ニョ退場(後半8分)が起きた。ここで、関塚監督がどういう指示をピッチの選手に出したのか、選手起用は的確だったのか――が問われる。この時点で川崎は4−2とリードだった。
関塚監督は後半12分にMFマギヌンに代えてDF佐原を投入した。ピッチの選手に対して「守れ」のメッセージを出した。さらに、15分、負傷したFW我那覇に代えて同じFWの鄭を投入した。これも、前線から「守れ」だろう。

結果論としては、関塚監督の選手起用は失敗した。大量点リードで気が緩んだのか。ジョニ―ニョ退場で監督の心が乱れ、守るり方が曖昧だったのではないか。監督の気持ちの乱れが選手たちの不安を誘発し、マルコンの退場で、関塚監督は、管制塔の機能を完全に失った。監督が自軍の戦いの方向性を見失ってしまった。ずるずる引いて、F東京の猛攻撃を逆に誘引してしまった。FWを1枚残し、中盤から強いプレスが必要だった。

守ったつもりが、後半23分にF東京に3点目を取られた。これでピッチの川崎の選手全員が混乱した。そして、マルコンの遅延行為の退場につながった。このマルコンの行為には実は伏線があった。F東京が上げた戸田の2点目はセットプレーからだったのだ。F東京は大量得点で集中力を欠いた川崎の選手の不意をついて、素早いプレーを仕掛け、それが戸田の得点につながった。

F東京の3点目で関塚監督の心の中は「主審への疑念」にとりつかれ、冷静な判断を下せる状況になかったのではないか。終了間際に2名の退場者を出せば、通常の神経の持ち主なら平常心を失って当然だが、よくよく考えれば、ジョニ―ニョ、マルコンは前半にイエローを1枚もらっている選手なのだ。もちろん、4−1の後半開始早々に警告が1枚ずつ出ているからといって、レギュラー2人を引っ込めるのは無理な話だが、4−2の時点でこの試合の見通しを決めれば、2人のうちどちらかを交代させる選択肢はあった。
ジョニ―ニョの2回目の警告は、F東京の2点目の2分後であり、マルコンの2回目の警告は、F東京の3点目の1分後に出ている。川崎の選手は、大量リードしながら、F東京の猛迫に明らかに動揺をしていたと考えられる。

前述したとおり、関塚監督は、選手の動揺を鎮めるため、ピッチの選手に向けた明確なメッセージを交代選手に託していないように見えた。試合が中断する節目、節目で、ゲームキャプテンを呼んでも良かった。関塚監督が監督としての仕事を十分、果たさなかったことが、川崎の一番の敗因だった。

試合終了後、関塚監督は、プレス・コンファレンスで主審の判定で負けたかのような意味のコメントを残したが、冷静に試合を振り返ると、関塚監督の発言が正しくないことがわかってくる。川崎は、負けるべくして負けたのだ。しかも、敗因は当然、監督の采配ミスだった。関塚監督の試合終了後のコメントとしては、「自分は、サッカー監督として、修業が足りない」くらいが相応しかった。にもかかわらず、関塚監督は、Jリーグのあり方までも批判してみせた。監督失格である。


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