| 2006年10月09日(月) |
ゾンビ・プレーオフ? |
連休中の昼間、テレビでプロ野球パリーグのプレーオフ(PO)中継をやっていた。長いレギュラーシーズンで1位になったチームが優勝ではなく、2位、3位が戦ってその勝利者が1位と戦って、その勝者がリーグ優勝だという。だれかが、新聞に書いていたけれど、敗者復活PO、いってみれば、「ゾンビプレーオフ」だな、こりゃ。
日本のプロ野球は12球団が2リーグ、つまり1リーグ6球団で構成されている。6球団で半分以内に入ればリーグ優勝のチャンスがある。6球団の半分という数字に説得力がまるでない。
プロ野球では、昔から、Aクラス、Bクラスという呼び方がある。優勝できなかったチームは、せめて、「Aクラス」入りを目指すという。Aクラスに入れば、次シーズンの開幕戦主催の権利が得られる。このことは、永らく日本プロ野球では、シーズン1位、つまり、リーグ優勝の価値しか認めなかったことを意味する。2位、3位というのは、ま、次シーズンに開幕戦主催の権利が得られる程度の価値でしかなかった。
近年、日本プロ野球は激変の時代を迎えた。電鉄系球団の撤退、読売の衰退、有力選手のアメリカ大リーグ移籍、サッカー人気の台頭・・・などがプロ野球の環境を変えた。そこで登場したのが、PO制度導入だった。プロスポーツは、長期にわたって実力を図るリーグ戦と、短期で決着を図るトーナメント戦がある。サッカーW杯の場合、◇1次リーグ(4チーム)が8グループに分かれてリーグ戦を戦い、◇上位2チーム・16チームがトーナメントで優勝を決める。つまり、リーグ戦とトーナメント戦がミックスしているわけだ。
日本プロ野球の場合、セ・パの2グループがリーグ戦を戦い、その勝者が1発勝負で決着をつける方式(日本シリーズ)となっている。リーグ戦が極めて長く、そのわりに最強の決着が意外とあっけない。レギュラーシーズンの真ん中に両リーグ間の交流戦を導入してみたものの、交流戦は、期待ほど盛り上がらなかった。
現状、パリーグが導入したPOが支持され、セリーグも導入を決めた。しかし、この制度改変によってもたらされた人気が長続きするとは思えない。いずれPOは鮮度を失い、まだやてるの・・・に変わるだろう。
PO導入でアメリカ大リーグを真似るならば、まず、球団数を増やさなければ成功しない。大雑把に言って、米国のマーケットサイズ(人口3億人)は日本のそれ(1.3億人)のほぼ2〜3倍。アメリカのプロ野球球団数はメジャー32球団、3A、2A、1A合わせるといくつかわからないほど多い。単純に大リーグが32チームなら、日本プロ野球は20チーム程度まで拡大できる。日本のメジャー球団・20チームがきっちりとフランチャイズを築けば、地区別のPOが可能となる。パリーグは日ハム=札幌、ソフトバンク=福岡、ロッテ=千葉、楽天=仙台が、フランチャイズ化に成功している。西武=所沢とオリックス=大阪が脆弱だが、努力次第でなんとかなる。パリーグには東京が空いているし、南九州、四国、山陽、山陰、北陸が空いているから、4球団増は簡単だ。一方のセリーグは、東京2、横浜1、大阪1、名古屋1、広島1で大都市圏中心で、地方圏はパリーグに取られた。つまり、マーケッティングからみると、パリーグの現状の方がセリーグより、球団設置状況のバランスがいい。しかも、4球団がフランチャイズ構築に成功している。新設4球団が地元密着の努力をしなければ見捨てられるけれど、サッカーでは、浦和(さいたま)を筆頭に、新潟、甲府、仙台が見事にフランチャイズを定着させている。首都圏・近畿圏ばかりに頼らなくとも、大都市圏の内外に球団設置及び運営のエネルギーを求めるべきなのだ。
たとえば、超大都市東京内部なら、山手、川の手(足立・荒川)の対立軸があるし、山手内部には、杉並、中野等々(旧山手)と、多摩地区(新山手)の対立軸がある。東京内部に複数の球団を設立することは可能だ。同一地域内が戦うダービーマッチが極めて盛り上がることはよく知られている。
プロスポーツは地域のものだ。高校野球は一見、甲子園一極集中に見えるけれど、原点は地域代表だ。地域の名誉を担い、地域に錦の御旗を持ち帰る・・・。地域住民同士がサポーターを組織化すれば、交流が生まれ、地域のエネルギーを生んだり、住民同士の新たなコミュニケーション機会を増やす。それを地域活性化という。地域活性化とは、建設業者を潤すハコモノ(ハード)の建設ではない。住民が精神的に潤うこと、中味(ソフト)なのだ。精神的潤いの実現を、スポーツ文化の醸成という。日本のプロ野球は新聞社の拡販機能だったり、私鉄乗車数の増大だったり、まちづくりの付加価値だったり、知名度アップだった時代が長かった。筆者はそれを否定するほどナイーブ(うぶ)ではないが、それだけでを目標化する手法は行き詰っている。
おかしなPO制度でその場をしのぐよりも、地域、地区を基盤にしたチーム増をステップにして、地区優勝同士のプレーオフを目指さした方が、プロ野球の長期的発展につながる。少なくとも、ゾンビ・プレーオフよりはましだ。
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