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2006年10月08日(日) またTBSか

TBSが後援している格闘技「HERO’S」にプロ経験のないタレントの金子賢が参戦するという。スーパバイザー・元UWF王者の前田日明がそれを知って憤慨し、抗議の声明を出した。

プロ格闘技は、ショーであるプロレスの流れを断ち切って、“本気”の総合格闘技を目指したもの。いまは市民権を得て、テレビの有力コンテンツに成長したが、その歴史は苦渋に満ちたものだった。当コラムでは、その歴史を振り返る余裕はないが、資金面等々で運営者・主催者の苦労は絶えなかったという。

この分野における先駆者「PRIDE」は闇勢力との関係を指摘され、テレビ局が中継を取りやめた。それに代わって、「HERO’S」が発足したわけだ。プロ格闘技をひっぱてきた前田日明にしてみれば、理屈抜きの最強を目指したわけで、アマチュアで苦労をし、前座を戦い抜いて這い上がった精鋭格闘家が出場すべきだと考えるのは極めて当然のことだ。

さて、「HERO’S」はTBSが後援している団体。TBSといえば、プロボクシングで「亀田ファミリー」を仕掛けたテレビ局だ。懲りずに、プロ格闘技の分野においても、関係者の労苦に満ちた歴史を無視して、ちゃらちゃらした芸能人を参加させ、真面目に格闘家を目指す若者の夢を壊している。格闘技が好きでやってみたいというレベルと、それを職業にしてやってやろうというレベルとでは、月と鼈の開きがある。格闘技好きの芸能人がケガでもしたらどうするのか、それとも対戦相手が手加減した「練習」をカネをもらって見せるつもりか。話題づくりでスポーツ中継の視聴率を上げようというのは愚かだ。しかも、禁じ手を使った割には、金子賢では話題にならない。米国では、俳優のミッキーロークがボクシングが好きで、スパーリングを公開したことがあった。ミッキーロークほどの存在感があれば・・・というわけだが、「HERO’S」はタレントの参加が試合としてなのか、スパーリングなのか、はっきりさせるべきだ。

総合格闘技にプロテストはない。TBSは、テストがないから、だれが参戦してもいい、という理屈か。筆者には、プロ格闘技はそんなゆるいものではない、そんな簡単なものではない、という思いがある。なぜなら、筆者はすべてのプロ格闘家にリスペクトをもっているからだ。少なくとも、彼らは命を賭けている、危ない仕事をしている、なんであんなに強いんだろう・・・そういう思いを抱かせるから、プロ格闘技は人々の支持を集める。

TBSは、おかしな仕掛けで、スポーツそのもの、スポーツという素材がもつ魅力を損なおうとする。このテレビ局は、昔はこんな愚かではなかった。


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tram