雨中の熱戦を制したのはアウエーの磐田。好調の川崎は、ホームで痛い敗戦を屈した。両チームが噛み合った好ゲームだった。悪質なファウルが少なく、それでいて激しさもあり、最後までスピードが落ちず、悪いコンディションの中、最後まで攻め続けた選手たちの闘志は賞賛に値する。
磐田が若手の才能あふれる選手の宝庫であることは、このコラムで何度も指摘してきた。そんな磐田に、若手育成を使命として、元日本代表コーチ・アテネ五輪代表監督のY氏が監督に就任したものの、世代交代に失敗し2シーズンもたずに退任した。筆者はY氏の就任当時から、当コラムにおいて、Y氏の監督手腕に疑問を呈してきたのだが、残念ながら筆者の予想通りとなってしまったわけだ。
さて、その後を受けたブラジル人監督のアジウソンがチーム建て直しに成功しつつある。アジウソン監督は現役時代、磐田でプレーした経験がある。なんと、ゴンよりも年が若い。
アジウソン監督の選手起用の特徴の1つは、ドイツ大会日本代表ボランチの福西をトップ下のようなボランチ(守備と攻撃に流動性をもった、という意味)で使って成功していることだ。いま、欧州サッカーで最も注目されるシステムは、DFラインの前の選手の数と資質。日本ではボランチと呼ばれるポジションだが、そこにどういうタイプの選手を何人置くかが監督の手腕のみせどころとなっている。
日本では4バック・2ボランチが一般的だが、欧州では1ボランチもトレンドになっている。そこに、パスが出せて、走力・運動量豊富で、ミドルシュートが打てて、DFラインの前で守れる選手を据えられれば・・・というのがチームづくりの理想となっているわけだ。それができる選手ならば、いくらの値がつくかわからない。Jリーグでは、千葉の佐藤勇、浦和の長谷部、G大阪の遠藤あたりが該当するだろうか。いやもっと守備が強くないと・・・
アジウソン監督は、その役割として、福西を適役だと判断したのかもしれない。この試合、福西は決定機に絡む数で言えば、両チーム合わせて最多。抜群にいいポジション取りをみせたものの、シュートをことごとく外して、磐田苦戦の原因となってしまった。この試合、終わってみれば、4−3の接戦で磐田が勝ったように見えるが、ゲームの支配状況、チャンスの多さ、決定機では磐田が圧倒していた。つまり、福西が決めるときに決めておけば、磐田が楽勝だった可能性が高かった。とは言っても、それは結果であって、アジウソン監督の狙い、システムは、成功していたと言っていい。
磐田のもう1つの魅力は、右サイドの太田の存在だ。彼の特徴は、最後まで落ちない走力と運動量。しかも、クロスの精度は悪くないし、ミドルも打てる。左サイドにポジションチェンジして、中に切り込んでのシュートも威力がある。彼のシュートは足の振りが鋭く、GKがタイミングを取りにくいようにも見える。右サイドは、日本代表における人材不足のポジション。4バックの右SBならば、田中(横浜)より太田のほうが力は上だと思う。この試合では、右サイドからの攻撃の基点として、川崎の左サイドを圧倒していたし、川崎の右サイドの森と比べても、太田のほうがずっとよかった。太田と森の差がこの試合の得点差だといってもいい。オシム監督は迷わず、太田を代表に呼ぶべきだ。
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