妄言読書日記
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2008年11月21日(金) 『決壊 下』(小)

【平野啓一郎 新潮社】

怒涛のように物語が進行し始める下巻。
・・・上巻をもっと端折ってたら、一冊に収まったんでは。

たぶん、以下は色々とネタバレを含みます。

次々起こる、犯罪、便乗、中傷やら偽善、全て実際に起こった事件のコラージュにしか見えなかった。
酒鬼薔薇事件から、911、拉致殺害事件、それらが満遍なく羅列されて、あの事件報道の日々を思い出させる。
それはただただ不快な気持ちで、犯行DVDのシーンはネット上に公開された殺害シーンを無理矢理見せられるような不愉快さと嫌悪感でいっぱいになる。
とかくただただ、不愉快で仕方がない終盤。
それが何に起因するのだろうと思いながら読んでいたのだけれど、この小説がただ現実をなぞっているだけで、そこに何も作者の思いも思想も考えも見えてこなかったからだと思う。
それでこの現実をどう捉えているんだろう、というのが見えてこない。
だからただ、残酷なシーンを、無残な現実を見せられただけという印象になる。

たとえば、散々いろんな作品で取り上げられた「どうして人を殺してはいけないのか」という問いにも、取り上げただけで作者自身の回答は提示されなかった。
他人の死を自分のことのように取ることのできない人間がいる、という事実のみが提示される。

読み終わった後に残るのはだからなんだったんだ、という気持ちばかり。
そんな「決して赦されない罪」の話しは毎日のように聞いている。
そこから先のことを作家の想像力で見せて欲しいのに。
崇の顛末がその先だというなら、それはお粗末過ぎるように思う。
それともそのことを考えるのは読者にゆだねているのだろうか。
だとするなら新聞で充分。

どこか作者の視点は、現実の社会を見つめるというよりは、眺めているというふうに見えた。
私的には、決壊というより崩落って感じだ。
ラストシーンはなんとなく『グラスホッパー』のことを思い出した。
別にパクッたと言う意味ではなく。

読んでいる間、ずっと舞城くんの文章が読みたくて仕方が無かった。
『スクールアタックシンドローム』でも読み返そう。



蒼子 |MAILHomePage

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