妄言読書日記
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2008年11月13日(木) 『イノセント・ゲリラの祝祭』(小)

【海堂尊 宝島社】

藤原伊織の小説みたいなタイトルな、白鳥&田口シリーズ第4弾。
田口先生がついに厚労省に殴りこみ?というような内容紹介がありますけど、殴りこみというより、差し出されたというか、生贄?

前々から言ってるけど、海堂小説の大半はミステリーじゃないので、今回も帯に騙されず怒らずに・・・。

海堂劇場の第一段階が終了したという印象でした。
イノセントよりも前に出た作品全てが、その第一段階の布石。
内容は、新書の『死因不明社会』の小説版というか、続・死因不明社会というか。
新書を読んでいた人にとっては、入りやすい反面、同じ話しがもう一度延々出てくるので、しつこく感じるかもしれない。
読んでいない人は、怒涛の情報量に脱落する可能性が。
私は二回説明されて丁度よいくらいだったので、おさらいくらいの気持ちで読みましたけれど。

今までの作品で、小出しにして提起してきた医療問題を全面的に俎上に載せて、延々厚労省での医療事故調・創設検討会の会議で押し通し、それを小説として読ませるというのはなかなか力量があると思うのですが。
もちろんここにいたるまでに、キャラクターを定着させているというのも大きいとは思うけれど、検討会メンバーは田口先生と白鳥以外は初登場なので、レギュラーキャラの力はそれほど及んでいないのは明らか。
とはいえ、この本一冊だけの評価はそれほど高くはならないとは思いますけど。

『ひかりの剣』の時に、海堂先生は扇動者のようだ、と書いたのだけれど、今回そのまま扇動者のような彦根というキャラクターが登場し、それがまた『死因不明社会』で海堂先生が述べたことをそのまま、やや過激に終盤主張して、おやおやという気分。
だからと言って、彦根が海堂先生の分身だとは思いませんけど。
だいたい彦根のようなやり方では、言ってることが正しくても読者だってどうも同意しにくいことくらい、海堂先生は理解してることでしょう。
海堂先生と同じ主張をする彦根がああいうキャラなのは、先生がいつも暗に訴えている「自分の頭で考えろ」「言われたことを鵜呑みにするな」というメッセージの表れのような気がする。

今回、舞台のほとんどが霞ヶ関だったので、白鳥のパートが新鮮でした。
ここしばらく、白鳥がいなくて寂しかったし。
白鳥が孤独に闘っている様を見てちょっと目頭が熱くなってしまった・・・あれ、そんなの私だけ?
田口先生、もう少し白鳥に優しくしてあげてもいいんじゃないかな。
そんな田口先生にかかると、今話題のモンスターペイシェントも大した問題ではなくなるところが凄い。
ぼんやりしてると思ったら、本当に肝が太いなぁ。田口先生は。
せっかく厚労省に行ったのに、またも姫宮との顔合わせはなし。残念。
何気にシリーズ皆勤している兵頭って偉いなぁ。

ずっと著作を読んでいれば、海堂先生が現状の日本の医療制度が変わることなんて全く信じてなくて、希望的観測すら持ってなく、そもそも小説で変わるなんてことにも期待していなく、それでも白鳥が孤軍奮闘している様を書くのは変わらなくとも現状を知るべきだと訴えていることを読み取れる。
今回、改めて問題点が詳らかにされ、読者に認識させた先生が、次にどの段階に連れて行こうとしているのか。
彦根の呼びかけのメールのようだった今回の作品に、どう答えるべきなのだろう。
多分、そんな読者の姿を映す鏡が田口先生。
傍観者に徹した田口先生が、次からはどう動くのか期待したい。
というか、彦根や白鳥に言わせっ放しなのもなんとなく、釈然としないので、田口先生なりの回答が見たい。



蒼子 |MAILHomePage

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