妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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| 2008年10月24日(金) |
『死因不明社会 Aiが拓く新しい医療』(他) |
【海堂尊 講談社ブルーバックス】
小説でもお馴染みの、Aiと現在の日本の死亡診断状況についてです。 海堂先生の悲願・Aiの導入についてより詳しく書かれているので、小説ファンは今後一層、白鳥の言ってることや、医師が言ってることが理解しやすくなる一冊。
ミステリファンとしては、解剖ってみんなやってるんじゃないの?とか、死因がわからないなんて何も始まらないじゃないか、という気分になるのだけれど、現実はかなり杜撰。
解剖率は2%で、残りは体の表面からの死亡診断がされる現実。 それは医療現場の責任ではなく、死亡診断を軽視して予算をつけない厚生労働省に大きな責任がある。 概ねそういう内容です。 生きてる人にも死んでる人にも、ろくなことはしてくれない厚生労働省。 ここは白鳥にがんばってもらうしかない。
これを改善するためには、Aiの導入を、というのだけれど、なにせかにせ予算がつかないことには何も始まらない、ということが根底にある。 死亡原因が知りたければ東京で死ぬしかない、という現状。
読みながらそういえば、解剖率や監察医制度のことはどこか別の小説でも読んだことがあったような・・・鬼籍通覧かな。
合間合間に白鳥と別宮のインタビュー形式での解説もあり、小説ファンには読みやすく、小説読んだことがない人にはアレ?となるかも。 終盤の文章は、熱が入ってきてなんとなく白鳥みたいになっていた海堂先生。
でもこれって厚生労働省や医療現場の問題なんではないのか、と思う人には、先生の最後の言葉を引用したい。
官僚の不作為も適切にとがめられなければ、彼等は責任を感じない。物事を考え抜かなければ、市民は国家に喰い殺される。防ぐ手だてはただひとつ。自分で考え、物事を調べ、よりよくするために行動すること。安穏と怠惰な眠りの中で人生を全うできる幸せな時代は終焉を告げた。 無知は罪なのである。
死亡診断に関してだけではなく、現状の全てに当てはまる言葉として首肯して受け止めたい。
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